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せめて一晩の夢だけでも見させて

『久々に帰省しようと思うんだ。』


『あ、そう。勝手にすれば?』



いつもの保健室。

昼休み。


涼子はバナナを食べていて、俺は菓子パンを食べていた。


『つれないね。』



『別にどうってことないんだもの。』



『保健室で1人だぞ・・・。』


『いつもそうじゃない。』



『・・・・。』


涼子は力強くで抑えようとしても拒まないし、

引いてみたら、引きに乗ってこない。


何をしても俺と一定の距離を取っているのだ。




征服なんて、どうすれば。

大抵は萩島のように引けば引きに乗ってくるし、三井も同様だ。


たぶん無理やり性行為に持ち込めるが、心まで抱くことが叶わない。




『なあ、もし俺がお前を襲って子どもができたらどうするんだ?』



『さあ?産むんじゃないかしら。』



ビビらない。胆力がすごい。

『太一、ビビりさんなのね。』


『え・・・。』


気がつくと、手先が震えており額からは汗が滴り落ちている。


んー?と言いながら、俺の顔を覗きこむ涼子。

『あっはっはっ、退屈しないわね、太一。』


『・・・。』


揶揄われているのだろうか。

手を口元にあてて声をあげて笑う涼子は、とても可愛い。しかし、怖い。底が見えない。何を考えているのだ。白い肌。病的なまでに白い肌。俺はなんでこんな女に囚われているのだろうか。


この女が懇願して俺を求める姿が見たい。

そう、萩島も三井も隙が多い。それに、自らの汚れを隠そうとする。


『全く、こんな男を抱きたいと思う、三井と萩島が信じられないわー。』


高笑いが続く。


こんなに、こんなに振り回されて、彼女に従順になっている俺は羽生の恥さらしなのだ。


なのに、どうしてこんなに涼子をキレイだと思うのだろうか。こんなに、涼子を喜ばせたいと思うのだろうか。



羽生の名前がなければーーーー

俺はーーーー



♦︎♦︎♦︎♦︎

『そう、太一が帰省するの。』



ニヤリと微笑む行馬。


『どうするんだ?』


『追いかけるわ。』


『それがいいと思うよ。村に、あるだろ?使われてない診療所跡が。』



『ええ。』


『太一を襲うならそこに呼び出す感じかな??』


『呼び出しに応じるかしら。』


『ああ。呼び出しには応じるさ。そこから抱けるかは萩島次第だな。』



『・・・。』











決行は3日後の夕方。

萩羽生村は特急と在来線さらに最寄り駅からバスで1時間だ。片道6時間の旅程。ようやくバスに乗り込み、村が見えてきた。




萩羽生村。バス停から歩いて林道を抜けたところにある。山々に囲まれた陸の孤島だ。

ここで、私と太一と行馬は育った。



今回は実家に明日の朝に着くことを伝えている。

今日は、廃墟になった診療所のベッドで。

太一の腕の中で寝るんだ。生まれたままの姿で。







廃墟に近づく。

村民がうろつかない夜になるのを待った。

すっかりカラダが冷えてしまった。



『太一に温めて・・・もらわないと。』




錆びついた扉を開く。

目的の場所は奥にある診察室。




『太一・・・・・?』



月明かりが影を照らす。




『萩島、久しぶりだな。』


月明かりと重なった太一の表情はよく見えない。


『太一、、その、、この前は・・・。』


『ああ構わないよ。それより今日は寒いから。』


太一はベッドに座る。


隣を指さす。


『うん・・・。』


手先が震えている。今日、私は太一の慰みものになるんだ。嬉しい反面、なんだろう。なぜ、震えて・・・・。



隣に座る。

『ひゃっ・・・・。』


太一が私の手に触れる。



『こんなに震えて・・・。』


両手で私の右手を包む。全身に血液が急速に巡るのがわかる。



『た、太一。』


『なあ、萩島。本当は怖いんじゃないのか?』


『え・・・。』


『まだお前は抱かない。でも、今日は一緒のベッドで寝よう。』



毛布をかけて、私を寝かす。後ろからそっと抱きしめながら。




心臓が痛くなる。

血流が早い。



だってだってだってだってだってだってだって!



太一が抱きしめてくれてる。

私はたどりつけないと思っていた場所に。

立つことが出来ているのだ。


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