太一はまだ抱かない
カーテンを閉め切った部屋。
じとりとしているベッド。
何日経ったのだろうか。
目はとっくに乾ききっている。鏡を見る。
瞼は腫れている。
疲れた。
『お腹、、、空いたな、、、。』
今日の日付を見る。
『た、太一・・・・。』
太一は今日、抱かれている。
あの三井さんに全身を舐め回されて快楽を貪る。
『あ・・・・』
そこにいるのは私のはずなのにーー
ピンポーン。
誰だろう。時間はちょうど昼の3時。
『はい・・・・。』
『いよお!萩島っ!元気かっ!?』
『行馬・・・・何?』
『いいから開けてくれよっ!見舞いだっ!』
見舞い?ああそうか、体調不良ってことになっているんだっけ??
『はい・・・・。』
私は背中をまるめながら扉を開ける。
『よおっ。萩島!』
『・・・・。』
『おいおい、重症だなあ。おーい、来いよ。』
カツカツ。
靴の音が近づく。
『え・・・・。』
なぜ?
『こんにちは、萩島さん?』
『なんで、図書委員がここにいるのよ。』
『そんな驚くことはないだろう、毎日勉強で図書館使ってたんだから、心配してたんだとさ。』
青いウェーブがかかったロングヘアに、脂肪がほとんどついていないくらい細い手足。
顔は人形のように造形が整っている。
生唾を飲み込む。
背中にゾワッと汗が噴き出るのがわかる。
『ほら、お見舞いの果物よ。特にバナナが美味しいのよ。』
果物の束を受け取る。
『み、みんなで食べましょうか、今りんごでも剥いてあげるわ。』
ふらつくような感覚。立ち上がる。
『あら、私と行馬さんはさっきお昼を食べたからお腹いっぱいなの。お一人で召し上がってくださいな。』
『ああ・・・そう。』
『それよりね、あなたに折り入ってお話があるのよ。』
『わ、私は特にないのだけれども・・・。』
『羽生太一さん、の件でも、ご興味持って頂けないかしら?』
♦︎♦︎♦︎♦︎
『あんなに堅い男だと思ってなかったわ。』
私が胸元を強調した、Vネックのをもってしても。彼の体を服ごしになぞってみてもーーー
彼はたじろぐことなく、そりゃあもちろん反射的な生理現象は起きたけれど、獣になってくれない。それどころか地蔵のように固まる。
私が口づけをしても、彼を刺激しても、彼からの反応は得られなかった。
『三井さん、やめてくれ。まだ、君と付き合ってそんなに経ってないじゃないか。もっとお互いを知ろう。』
そう言い捨てて、キスを交わして帰っていった。
なんで、私が。こんな惨めな思いをしなくてはならないのだ。私が期待されてる役回りは、太一クンを落とすことだけなのに。
彼の心は、ここにはなかった。
どこか遠い場所へに置かれたままだった。




