ミスキャスティングから始まる泥沼生活
『太一、またサボりか?』
クラスメイトが話しかけてくる。
『いや、具合悪いから昨日は寝てたんだよ。』
『えー?誰と寝てたんだ??』
『1人でだよ!』
年頃だから下ネタは、仕方あるまい。
今日はなんとなく、クラスに顔を出してみた。
ほとんどのクラスメイトは、未確認生物を見るかのような顔で俺を見る。
クラスメイトで話しかけてくるのは、茶髪でちょいロン毛の、この鯨井行馬くらいだ。
行馬とは出身が一緒で幼なじみだ。俺の事情や性格もよくわかっているから接しやすい。まあ、簡単に言えば俺はぼっちに近いのだ。
『たあああいち!!』
『おや、太一クン。かわいい嫁さんがやってきたよ。』
『誰が嫁だ!!』
長い赤髪にポニーテール。体型はすらっとしているが、胸元もすらっとしている。顔は目が大きく少しつり目だ。
『ダメだよ?授業さぼっちゃ?』
萩島玲。
コイツも幼なじみだ。
『関係ねえだろ?それに大学も決まってるし、なんとかなるっつーの!!』
『学業は学生の本分なんだよ?勉強しないと頭パッパラパーになるよ??』
萩島はもっともらしいことを話す。
口先だけは。
『静かにしろー!テストを返却する!!』
担任が入ってきた。
中間テストが返される日で教室がどよめいている。
『鯨井!』
『はーい。まあ、こんなもんだわな。』
80点平均か。
『えー、羽生!』
『はい。』
なんと簡単なテスト。
『おい、太一どうなんだ?』
『ほれ。』
『おー、やっぱすげえな!オール100点!授業出てないのにやるなあっ!!』
行馬は肩をバンバン叩いてくる。
『痛え!』
担任が次々と生徒を呼ぶ。
『えー、山田。えー鮫島。えー洞島・・・。』
『せんせえー!』
『あ、そうだったな。悪い悪い。えー、佐藤ーー』
これが、うちのクラスの日常。
そして本日のメインイベントが来た。
『えー萩島ー。』
『・・・。』
クラスが萩島を目で追う。
萩島は右足を出したら右手を出し、左足を出したら左手を出す。壊れかけのオートマタといった感じだ。表情もかちんこちんだ。
『がんばれよ。』
担任の意味の無い慰め。
『あー。』
『いやあああああああああああ!!!』
返却された答案用紙が宙を舞う。
『あーーー』
綺麗な0点。
萩島は絶叫しながら泣き喚いている。
『うわ、いやあ。いやいやいやいやいやいや!
びえーーーーーん!!!ふえっ、ふえっ!』
こうなると授業にならない。
クラス全員で萩島を慰める時間になった。
『なあ、三井も萩島慰めるの手伝ってよ。』
行馬がそう言う。
『んー?どったの?』
『萩島がさ、そのいつものやつ。』
『お、おい、行馬。三井さんは・・・。』
ミスキャスティング。
『萩ちゃん、大丈夫だって!テストは0点、運動は100点!脳筋オンナなんだから、それで生きていこう!適材適所!水を得た魚!豚に真珠!』
『三井さん・・・最後のはちょっとあんまりいい意味じゃあ・・・。』
『ぷぎゃあぁぁぁぁおっ!!!』
萩島の泣き声は獣化した。
三井玲奈。ショートボブに、目を見張るほどの胸元。足、腰はすらっとしているナイスバディ。
目はぱっちりの美少女。我が校のミスコンで2年連続1位。頭も悪く無いし、人もいいのだが。
『あれ、豚に真珠。ああ!ふさわしくないって意味か!!つまり、萩ちゃんには運動!!学力は不要!バカでもともと!!』
悪気はないのだ。ただ思ったことをそのまま話すというよく言えば素直な女性。
しかし萩島は泡をふいて倒れていた。