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おとうさんとの思い出

『いいか、羽生の家督を継ぐものは清廉潔白。品行方正。スキャンダラスにならないよう最新の注意を図らねばならぬのだ。わかるか?太一。』


『はい、お父様。』


『火遊びもほどほどに。許嫁もおるのだからな。』



『はい、お父様。』



『ふむ。東京でも学業に励むのだ。これまで通り。』



中学までは、家に帰るとずっと勉強か、習い事だった。ろくに遊んだ記憶はない。それでも行馬や萩島という親友を得ることができたのは奇跡であった。


羽生家は、荻羽生村の有力者で閉鎖的な村社会を牛耳っていたのだ。

父の言うことを聞かないと折檻が待っている。


一度だけ。反抗した。




『父様!勉強しとうございません!今日はせめて、駄菓子屋に遊びに行きたいです!』


行馬や萩島が毎日のように行っている駄菓子屋にどうしても行きたかった。


『そうか、太一。ちょっと来なさい。』



『いやだっ!いやだっ!』



庭先の蔵まで引きずりまわされる。

蔵に放り込まれた。そこは、勉強机と、歩けないようにする為に拘束具が付いていた。


『父様!父様!』


ろうそくと机だけの空間。


父の気が済むまで延々と勉強を強いられる空間。

寝たら頭上からは、水がぶっかけられる。


今で言えば虐待だろう。しかし閉鎖的な村社会なのだ。かつ、村の有力者。ほぼ治外法権を保っていたようなものだ。





父は品行方正であれと言う割には、屋敷の使用人に次々と手をつけては、身篭らせていた。

実際に、青髪のウェーブのかかったある女使用人を組み敷いている現場を見たことがある。

例の蔵で、泣きながら許しを乞う使用人に、笑いながら嬲る外道だった。



そんな父を見て、


『女遊びがしたい。』


そう思うようになった。




その使用人を孕ませて、村八分にし、『あやつは、淫魔だ。』と罵る。

村人は父に逆らえないので、使用人を村八分にした。


自分も父に逆らえない身だ。



『ぼっちゃま、どうかお父上に取り次いでくださいまし。』


使用人に言われて非常に困った。

だから。




『うるさい、悪魔を孕みやがって。』


そうして、少し大きくなった使用人の腹を蹴りとばした。


『やめてくださいましっ!』


使用人はお腹だけは守る。



くそっ。

名家の当主はやり放題か。

元使用人はそのうち逃げるように村からいなくなった。


そんな鬱屈とした中でも、唯一のときめきを感じる時があった。


父の主治医につきそう看護師だ。

金色の流れるような髪と大きな瞳。そして誰もが羨む胸元とヒップだけがしっかり出ている女性。


『あら、太一さんこんにちは。』


『あ、その、こんにちは、、』


洗練された感じの女性。村の診療所の看護師だ。


あんな女性と恋をして、自分無しでは生きていけないくらい夢中にさせたい。全てを支配したい。

中学生の妄想が捗るくらいの女性。


そんな自分の様子を父は見ていた。


ある夜、また父が女性を痛ぶる姿を覗き見た。




『あ・・・・。』


青髪の使用人の時とは違う。

あの診療所の看護師だ。



『やめろ・・・。』


人と人という関係でない。



人と餌を欲しがる犬(看護師)。

餌の為ならどんな要求でも従う犬(看護師)。




『やめてくれ・・・。』


父は気がついていたのだろう。


おもむろに襖をあけて、俺を部屋に入れた。





犬(看護師)は特に気にせず、ご主人の仕込んだ芸を行う。





『なあ、太一よ。』


『・・・。』



『品行方正、清廉潔白というのはこういうものだ。品行方正か、清廉潔白かは周りが決めるものだ。だから、周りがお前のことをそう思えばいいのだ。例え、お前がこの前見た青髪の使用人、あんな形でも好き勝手出来るのだ。』


犬(看護師)に餌を与える父。





『いいか、そう思われることだ。そうすればこのような享楽の日々がお前にも訪れる。』





犬(看護師)の鳴き声が耳をつんざく。




それ以来、俺は品行方正、清廉潔白に思われるべく、そして次期当主になるべく自分を作り上げてきた。



それは今まさに、試練の時だ。

誰かさんが俺無しでは生きていけないくらいの敬服、賞賛を得るべく今まさに試練と対峙せねばならない。

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