とまどい
文化祭が終わりなんとなく、同好会も集まらなくなった。文化祭以降、俺は玲奈と恋人関係になった。
『なあ、羽生、どうやって三井落としたんだよ?』
ろくに話をしたことのないクラスメイトが話しかけてくる始末だ。
『いや、別に、、、』
そう理由はよくわかっていない。
強いて言えば行馬と三井が俺に青春を味合わせる的な、適当なノリで偶然が重なり三井と付き合う事になったのだ。
『ねえねえ、玲奈ちゃん、羽生クンと付き合ってるんだってー?』
『えー誰に聞いたのー?もうやだなあ。』
玲奈と目が合う。
ウィンクされる。
心拍数が上がるのがわかる。
『おやおや、太一クン愛しの三井ちゃんのウインクでボルテージ上がっちゃってる?』
『き、行馬!』
『顔紅くしちゃってからにー。ヒッヒッヒ。』
行馬は腕を組みニヤニヤ見下す。
バナナを食いながら。
『う、うるせえ。』
『怒るなよー。しかし時の人だな。ミスコンの三井を射止めるなんてな。』
そう玲奈は今年もミスコンを連覇した。
だからか、冷やかしがすごいのだ。
玲奈は慣れてると言わんばかりでするすると際どい質問もかわす。
『えー、それは、ひ・み・つ。』
『えーなんでよお。』
女子はキャキャと、三井を囲む。
『はあ、疲れるな、クラスっつうのは。』
立ち上がる。
『また、ネグラか?』
『ああ、疲れちまったよ。』
『三井ちゃんは連れてかねえのか?』
『バーカ。』
手を振りながら背を向けて教室を出ていった。
廊下を歩く。
『寒っ・・・。』
すっかり雪の季節だ。
早く保健室でぬくぬくしたい。
『はあ・・・。』
しかし冷えるな。手に吐息をかける。
廊下を曲がり、階段を降りるとーー
『は、萩島?』
『太一、またサボり?』
萩島が立っていた。
ポニーテールは変わらないが、スカートもいつもより短く、少し胸元のリボンもだらしなく解けかかっている。唇が潤んでいる。
『ああ、具合悪くてね。』
『三井さんと、、その、、恋人になったの?』
『ああ、そうだよ。』
ニッと笑ってみせる。
『その・・・楽しい??』
『うーん、まあ、新鮮だよな。はじめての彼女だし。楽しいってのはまだわからないかな。』
『そうなんだ。』
『受験生だからな。デートも一緒に帰るくらいかな。』
『そうなんだ。』
萩島は困ったように笑っている。
なぜだろうか。
『その、、三井さんのこと、、好き?』
・・・。
『そうだな。三井は俺の憧れだったからな。好きだよ。自慢の彼女だ。』
恥ずかしさを隠すためにニカッと笑ってみせる。
『そ、そうならよかった。じ、じゃあね。』
『あ、ああ。』
萩島が走り去る。
萩島が泣いているように見えた。
何か伝えた方がいいのだろうか?
『萩島!』
萩島は俺の呼びかけで足を止める。
こちらは見ない。背中越しに叫ぶ。
『またさ、受験落ち着いたら行馬と3人で駅前のバーガーショップ行こうぜ!!俺らはずっとずっと幼なじみだからな!』
『・・・。』
一瞬全身が強ばるような動きを見せて、
萩島は走り去っていった。
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『そうだな。三井は俺の憧れだったからな。好きだよ。自慢の彼女だ。』
なんでそんなに楽しそうに笑うの。
『萩島!』
期待しちゃうような呼びかけ。
『またさ、受験落ち着いたら行馬と3人で駅前のバーガーショップ行こうぜ!!俺らはずっとずっと幼なじみだからな!』
もう。
もう、無理だよ。
女子トイレにかけこむ。
個室に入る。
もう幼なじみなんてやだよ。
『・・・ひっ、ひっ・・・。』
止まらない涙。声を殺しながら泣く。ダラダラと流れる涙。
『・・んで、なんで、、ワタシじゃないの・・・。』
寝取ってやろうと思った。
でも。
ありし日の思い出が蘇る。
『いやだ・・・いやだよぉ。いやだよ、太一。』
また、拒まれたら・・・
ワタシは。
それに、あんな幸せそうな太一。
『う・・・うわあ・・うわあぁぁぁぁ!!』
あんな幸せな太一の顔、見たことなかったから。
あんな幸せそうな太一に、見捨てられたら。
ワタシの体を餌にして、それでも拒まれたら、
ワタシは、ワタシは、、、
ワタシは生きていられるのだろうか。
その時、太一はどんな顔をするのだろうか。




