本番
『じゃあ俺、帰るわ。』
『バナナの皮落ちてるぞ。』
『捨てといてよ。』
行馬はなぜか鼻歌を歌いながら帰っていった。
『・・・。』
残された俺と三井。
何を話せばいいのかわからない。突然の接吻。何事もなかったかのように振る舞う三井。
『文化祭、終わったな。』
『楽しかったね!』
いつもの感じで元気良く返事する三井。顔は伏せたままだ。俺はそんな三井を見る。手をもじもじさせながら、目を合わせないで床の方を見ている。
なんだ。こんな三井見たことない。
恥じらっているのか?
それともこれすらも計算なのか?
ああやって・・・。
そうしているとイスの上で体育座りをして、目をうるめながら床を見ている。膝で鼻まで顔を隠しながら、ギュッと膝を抱える。
『盛り上がったよな!』
『そうだねっ!』
三井はさっきより大きい声で。
少し怒ったような声で。
違う。
そんな他愛のないセリフを言いたいんじゃない。
あの三井は計算かもしれない。
でも、男なら三井のあの姿を見たら、企みにハマりたい。そう思う。
『見違えたじゃない。』
誰かさんがそういったように、萩島が見た目を変えてくれたのだ。だから、自信は前よりある。
あの接吻は、この状況の俺の行動を引き出す為の伏線ならば。
俺がやるべきことは1つ。
『三井、あのキスだけどさーーー』
また。
柔らかい唇が触れていた。
そして。
『えへへ。付き合お?太一クン?』
先を越された。
♦︎♦︎♦︎♦︎
風呂上がり。
鏡の前に立つ。
自分の肢体を見る。同世代と比べると発育はかなりいい方だ。
いろいろ撒いた伏線を回収した。
予定通りだ。
『えへへ。付き合お?太一クン?』
その瞬間彼は私を抱き締めた。
なんて簡単な。
太一クンはカッコイイし、かわいい。
それに。
萩ちゃんのあの悔しがる表情。
とても滑稽だ。
まあ、それはそれとして。
私には、太一クンと付き合わなければならない理由があるのだ。
それを今、成し遂げた。計画通りだ。
『まあ、でも。』
私の為にイメチェンして、好かれようなんてかわいいところもあるし、悪い気はしない。
『萩ちゃんには悪いことしたけど、まあああでもしないと面白くないしね。』
萩ちゃんが太一クンを好きなのはよくわかった。
萩ちゃんのアプローチは子どもっぽい。
だったらそれを上回るアプローチをするだけで良かったのだ。
『諦め、悪そうだよなー。』
いいの、いいの。
太一クンが他の人にうつつを抜かしても、寝取られようとしても構わない。
だって寝取り返すから。




