対抗心
『ふー。』
怒涛の初日が終わり、馴染みの保健室に入る。
『疲れたなあ。』
ベッドに横になる。そのベッドは俺の特等席らしく、誰かさんが缶コーヒーを用意してくれていたようだ。
『はあ、あったまる。』
保健室から見える中庭の紅葉は鮮やかで、俺の心に彩りを与えてくれる。
なあ、あんたもそう思うだろ?
こんな甘酸っぱい青春より、こうした時間が1番贅沢なんだって。甘酸っぱい青春は心をズタズタに切り裂くもので、1番いいのは安寧なんだ。
『しかし、まあ楽しいがね。』
そうだから、結末を迎えたくないしハッピーエンドもバッドエンドも要らない。この感情の潮流に浸っていたいのだ。あんたもわかるだろ??
『人の心は、、水物だな。』
クスリと笑い、出ていった。
『は!やばい寝てしまった!!』
あたりを見る。ちょうど下校時間だ。
ガラッ。
『またここにいたの?』
『ああ萩島か。ごめん、明日のミーティングあるんだったよな。』
『うん。』
足先で床に何か書くような仕草。視線は床に。手は後ろで組んでいる。
『あのね、アタシね・・・。』
『萩島。メイド服似合うな。』
『・・・っ!あ、当たり前でしょ!似合わないなら着ないわよ!バッカじゃない!』
萩島はスペックがいいのだ。
顔もスタイルも、この幼なじみ属性も。
いいのだ。
幼なじみとして。
顔を真っ赤にして頭から汗を飛ばすように焦る萩島。
『きゃっ!!』
萩島が転ぶ。
またバナナの皮だ。
『なんで、こんなところにバナナの皮があるのよっ!!』
バナナの皮を蹴り飛ばすも、さらに滑って転ぶ萩島。
『バカだなあ、もう。』
萩島の頭をクシャッと撫でて手を差し出す。
『ミーティング行こうぜ、萩島。』
萩島は手を差し出し、起きあがった。
『おっと。』
萩島はまたバナナで滑りそうになる。
肩を抱き抱える。
『大丈夫か?』
『へ、はあっ、ほいっ!だ、大丈夫よ・・・。』
萩島の吐息がわかるくらいの距離になる。
萩島の瞳に俺が写って見える。
顔が熱くなる感覚がはっきりとわかる。
『い、いつまで肩掴んでんのよっ?!』
『わ、悪い。』
心拍数があがるのがわかる。
『み、ミーティング行こうか。』
『う、うん。』
そこからミーティングをするファミレスまで俺らは言葉を交わすことなく、目も合わせずに向かうことになった。
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『い、いつまで肩掴んでんのよっ?!』
『わ、悪い。』
心拍数があがるのがわかる。
『み、ミーティング行こうか。』
『う、うん。』
保健室から漏れ出る声。男女が抱き合っているように見える。
流れるショートボブが夕陽に照らされて、艶やかに輝く。
『ふーん。萩ちゃん、そういうことしちゃうんだ。』




