似たもの師弟⑦
真打登場。
今回は短め。
まさしく、土壇場でヒロインを助ける主人公の登場のようであった。
もっとも扉の向こうから登場したのはヒーローよりはヒロインという肩書の方が似合いそうな風貌の少女であるが。
「え、師匠!?」声を上げたのはノエルだけだったが、彼のみならずキーファも子爵も面食らっていた。彼女の登場は誰もが予想だにしていなかったようだ。
「やあ、ノエル。苦戦してそうだな?」
「えっ、いや・・・。なんで師匠がここに__」「おい!」
状況が呑み込めず狼狽していたノエルを遮るように子爵が荒げた声をミシアへ向ける。
「なんだこのガキは。門番は何をしている!」
ミシアの入室してきた扉を越して廊下からの魔力の気配を察知したキーファはそちらの様子を窺い見るが倒れた使用人を見るや「・・・・・・っ!」またもや面食らったように呆れ果てるように言葉を詰まらせた。
「お前、使用人を全員眠らせるとは・・・」
「だって身分証見せたって通してくれなかったから。いつも通り 」
「そういう問題じゃないだろ・・・!」
「・・・・・・」
頭を抱えるキーファに対して、いつもならだれよりも彼女の自由奔放さに振り回されているノエルが一段と静かだった。
ミシアのフリーダムに一番苦悩しているのはノエルだが、師匠である彼女の頼もしさを一番知っているのもまたノエルである。
「それで__」子爵を見やるミシア。彼女と目が合った子爵は一瞬だけたじろいだがすぐに睨み返す。
「こちらの要請には応じてもらえてない、ってところかい?」
「あ、当たり前だ!こんな不当な要請、通るわけがないだろ!」
「”不当”か。確かに見定める者として正当性は大事だが・・・まさかコレを使うことになろうとは」
ミシアが『コレ』とベルトポーチから取り出したのは丸められた一枚の書状。
ひとりでに彼女の手から離れてふわふわと浮遊した書状は巻かれていた紐が解かれ、書面を上にしてテーブルに広げられる。
「なんだコレは・・・?」と怪訝な顔で書状を覗き込んでいた三人の顔がみるみるうちに変貌していく。特に子爵は青ざめていた。
「お前、コレ・・・!何故お前のような奴が殿下の書状を持ってる!?」
三人を驚かせたのは書状の内容ではなく書状を書いた主であろう『グリール・ア・ドライグ』のサイン。その名は第三王子である公爵殿下と一字一句同じであった。
それは”黄金の蜂蜜酒”の生産及び取引を取り止めるよう求める令状。それが国の上から四番目の権限を持つ人物から行使されているということである。
「さて、応じていただけるかな?」




