Michia②
薬学室のお仕事についてざっと説明しています。それと新キャラ追加。
あと後書きの方に妖精について解説しています。一読いただければ。本当なら一番最初に解説すべきだったなぁ・・・。
「薬学室の仕事はざっくり言うと主に二つ、だな」
ミシアは人差し指と中指の二本の指を立てて、二の数字を指で表す。
「まず一つ目は薬の開発と調薬。騎士団が討伐任務で使用する魔法薬の調薬。大体は回復薬が多いが他にも敵に見つからないようにする透明薬とか魔獣に打ち込む毒薬とか。で、二つ目は騎士団本部との連携。事件に使われた魔法薬の調査とか__って感じなんだがここまで大丈夫か?」
「・・・もう一声」
「つまり魔法薬と知識の提供」
「分かりやすい一声」
「で、君にやってもらいたいのはその依頼書とかレシピの整理、あとは研究員補佐をしてもらいたいんだ」
つまりは雑用係、といったところだろうか。確かにそれなら魔法を使わずともできそうだ。
「というわけで、コレ、宜しく」
そういってミシアが渡してきたのは高さ十五センチくらいある紙の束が二つ。それぞれの紙の束から一番上の一枚ずつを手に取った。
「これは魔法薬の依頼書で・・・、こっちは魔法薬のレシピ、かな」
「そ。研究とか騎士団の依頼優先にしちゃって中々書類整理に手を付けられなくてさ。見やすいように記録書にしてほしいんだけど、あ、文字の読み書きできる?」
「できる」
文字の読み書きは養父が(ちょっとだけ)教えてくれたし家で過ごす時間を読書に使うこともしばしばあった。
(よかった。これなら俺にもできそうだ。)
そう胸を撫で下ろしていると背後から薬学室の扉が開く音がした。
「__ただいま戻りました」
「ただいま」
部屋に入ってきたのは二人の人物で一人は白のブラウスにロージーブラウンのロングスカートのワンピースを着た丸眼鏡のおしとやかそうな女性。もう一人は、白衣を着た、おそらく身長百九十以上はあるであろう巨体であり長い吻に頭頂部には尖った二つの耳の狼の獣人族だ。
「おかえり。ベル、カルタ。どうだった?」
「滞りなく。やはり白粉の鉛中毒が原因でしたよ。はい、コレお土産です」
「わーい、ありがとー」
女性がミシアに紙袋に入った土産を渡す。
「ミシア、今日ラウルさん休みか?」
「ああ。ラウルとノエルは非番だよ。論文?」
「よく分かったな。そう。ラウルさんに論文の助言ほしいって預かってきた」
「彼の名は相変わらずの人気だな。夜勤明けだから今日は無理だと思うよ」
「まじか。じゃあ明日にすっか・・・」
獣人の男は参ったように頭をかいた後俺の存在に気づき「ん?」と首を傾げた。それを察したミシアは「新しい職員。事務員ってとこだな」と俺のことを紹介した。
「研究員ではなく、ですか」
「そう。”魔力なし”だから」
「ちょっ!?」
ミシアは俺の了解を得る動作も間髪も入れずに俺が”魔力なし”である身分を明かす。
(ひとが気にしていることを!!)
”魔力なし”に対する国民の反応は下種を観るそのもの。俺は過去のソレを思い出し背筋を強張らせる。
「へぇ、珍しいな。それで事務員か」
「事務作業を好まない我々にうってつけの人材ですね」
だが二人は魔力なしである事実を知っても軽いリアクションだった。ここ最近こんな反応ばかりだ。おかげでこっちが気を張っていても毒気を抜かれる。
「アシル、二人が出張に行ってた研究員の二人だ」
ミシアはそんな人の気も知らずに二人を俺に紹介した。
「カルタ・ヨーサです」
「ベルタール・ルロワ。ベルでいい」
そう二人は自身の名を名乗りカルタさんはぺこりと軽く会釈をし、ベルさんは鋭い爪の付いた獣毛を纏った手を差し出してきたので俺はそれに一瞬ためらいながらも「アシル・ローランです」と名乗ってから握手をした。
「ではベル。私達は室長と所長に帰還報告に参りましょうか。」
「マリアさんなら定期報告で所長室に行ってるよ」
「ならちょうどいいな。今日は俺たちも非番だからそのまま宿舎に戻るわ、じゃあな」
カルタさんは律義に再度俺たちに会釈してから去っていった。言葉遣いといい気品のある女性だ。ベルさんも友好的で人当たらい良さそうな人物だ。話すときに見える牙と鋭い爪と眼光には少しぞっとするが。慣れるまでは時間がかかりそうだ。
このお話のテーマのうちの一つ妖精について解説しようと思います。
現実世界においての妖精は『神話や伝説に登場する超自然的な存在、自然霊や神々の零落された姿』とされています。なので、西欧では神隠しや摩訶不思議な現象は妖精たちの仕業と考えられていました。日本でいう妖怪と同じ存在ですね。
妖怪と同じように妖精にも多くの種が存在します。中でもエルフやトロール、デュラハンは有名ですね。
ファンタジー作品で指される妖精といえば「虫の羽をはやした小人」ですよね。それは厳密に言うとピクシーと呼ばれる妖精にあたります。他にも家事をしてくれる妖精や人襲う妖精などいますが妖精において一点共通することがありそれは『絶対に怒らせてはいけない』というものです。善良な妖精も怒らせると家を荒らしたり最悪殺されてしまったり。アイスランドでは2012年に工事中に「エルフの岩」を誤って埋めてしまった以降数々の災難が関係者に降りかかったという事件が地元紙に報じられました。妖精とは神に近しい存在でもありますからね。
この作品での妖精の存在も大体は同じような感じですが妖精は実在し、人々と共存しています。使い魔としても使役できますが同時に絶対に怒らせてはいけない存在でもあるのでこの世界においても妖精の機嫌を損なわせることはしないよう避けています。ここらへんは作中に詳しく書ければいいなと思います。