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一人目・Ⅲ
私は老婦人の庭園を出た後、振り返ることもせず金色のカブトムシを探して森の中を歩いていた。
でも、探しても探して、あのカブトムシは見つからない。
私は何の確証もないのに、あのカブトムシとの距離がどんどん離れていってしまうような気がして、疲れた足を止めることができなかった。
何の道しるべもない森の中を、何の手掛かりもなく、私は歩いた。
息が切れ、汗がこぼれ、服が乱れても止まれない。
あの金色のカブトムシをつかまえなくちゃ……
森を抜けると、巨大な湖が姿をあらわした。
美しく広いその湖の底は深い。
疲れを癒やそうと、私がその湖面を覗いたその瞬間だった。
巨大な影が水面を押し上げる。
水面は大きく持ち上げられ、静かな湖は乱れて、水しぶきを上げた。
そのしぶきに私はすっかり濡れてしまった……。




