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一人目・回想

その日、私はお母さまにお花を見せたかった。


ハーブティーにするために摘んだクリトリアの花があまりにキレイだったし、たくさん採れたからお母さまに見てもらいたかったのだ。


蒼い花束を手に部屋に行ったが、お母さまはいらっしゃらなかった。


どこに行ったのだろう?


考えていると、かすかにだけど中庭の方でお母さまの声が聞こえたような気がした。


私はすぐに中庭に向かうことにした。普段はお母さま以外立ち入ることを許されない中庭の一角は、生垣で内を見ることはできない秘密の場所だ。


私だって特別な時にしか入ったことがない。勝手に入れば怒られてしまうかもしれない。

でも、今は特別。こんなにキレイな花が咲いたのだから。


お母さまの庭園に忍び込み、息をひそめて歩いた。いきなり現れてお母さまを驚かせよう。


そんなことを考えていると、私はお母さまの姿を見つけて咄嗟に身を隠す。


お母さまは私の知らない若い男性と一緒だった。


お母さまの服ははだけ、男性と体を重ね、聞いたことのないような声を漏らしていた。


私はお母さまと見知らぬ男性から目を離せず、自分の体が熱くなるのを感じた。


私はその場に花を置いて逃げ出した。夢中で握りしめていた花束をその場所に置いて。


私は自分の部屋に鍵を閉めて閉じもった。そして庭園でのお母さまの姿にうなされた。


頭の中にこびりついたお母さまと見知らぬ男の姿はどうやっても離れていってくれない。


どうしてあんなものを見てしまったのだろう?

どうして見続けてしまったのだろう?


好奇心があの場に足を留まらせた。

私は誰にも見つからなかった。

それが私の判断を鈍らせたのだ。


せめて誰かと一緒にあれを目撃していたとしたら、この胸の内を吐き出すことができただろう。


もし、あの時お母さまに見つかっていたら、私は叱責され、お仕置きをしてもらえただろう。


だけど、私は誰にも見つからず逃げ出してしまった。


誰にも咎めてもらえず、誰にも賛同してもらえない。


私の心は荒れ狂う海に浮かぶ船のように乱れていた。


友人との会話の時も、学校の授業の時も、食事の時も、午後のティータイム時でさえ、私の意識は完全にとらわれていた。


あの庭園での出来事は私の中に行き場のない、形の不安定な気持ちを生み出したのだ。

しかし、それはある時から姿を変えはじめる。


あの人との出会いによって。


私の中のあの光景はいつの頃からかお母さまと見知らぬ男ではなく、私とあの人の姿に変わっていった。


私はそれまでとは全く違う気持ちを抱くようになった。


荒れ狂う海に漂う一隻の船だった私を、救いあげたのは嵐に負けることのない力強いあの人だった。


それは私だけの秘密。秘密にしなくてはいけない、そう思った……

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