焼き鳥1本いかがですか?
頭の中で考えていた物を形にしようと思い、稚拙ながら文章にしてみました。
私の名前は舘川梓月たてかわしづき。
幼い頃に両親を亡くし、父方の祖父母に育てられた。
父は一人息子だったので、唯一の孫である私を2人はすごく可愛がってくれた。
祖父は焼き鳥屋を営んでおり、近所でも評判の店だった。
私も小さい頃から店の手伝いをしており、祖父の焼く焼き鳥が大好きだった。
中学生の時、私はあるものに出逢った。
それはロリータファッションと呼ばれるレースやフリルがふんだんに使われたお洋服である。
始まりはある1冊の小説から。
友人に薦められるままに読んだらかなりどハマりしてしまい、そのまま実写映画版も観た。
それからというもの、私はお小遣いなどを全てロリータ服を買う為に費やしていた。
しばらくすると、ご近所中に私の噂が広がり、祖父の焼鳥屋には焼鳥目当てでは無い客も来るようになってしまった。
そこは素直に反省している。
でも、祖父母共に笑って許してくれた。
私は誰の目も気にする事なくロリータファッションに身を包み、相変わらず店の手伝いを続けていた。
そして私が高校3年生になった頃、祖父が脳梗塞で倒れてしまった。
一命は取り留めたものの、麻痺が残ってしまい焼鳥屋を続けるのは難しいと医者から言われた。
私は進路を迷っていた事もあり、祖父の焼鳥屋を継ぐ事を決心した。
祖母には「気にしないで好きな事をしなさい」って言われたけど、私は祖父の焼鳥が大好きで、そしてそれを失くしたくなくて一生懸命串打ちや焼きの練習をした。
祖父に教えて貰いながら少しずつ覚えていって、最初は上手く焼けなかった焼鳥も段々きちんと焼けるようになってきた。
ご近所の常連さん達も協力してくれて、なんとか高校卒業までには間に合った。
祖父の焼鳥に比べらたら全然だけど、それでも常連さん達が美味しいと言って食べてくれるのが励みになった。
私は高校卒業後、直ぐに店の跡を継いだ。
祖父母は喜んでくれた。
調理場には立てなくなっていた祖父に、色々と助けてもらいながらなんとかやっていた。