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5.契約


 「だったら俺と契約するか?」


 精霊王にそんなことを言われて耳を疑わない人はいないと思う。

 

 「い、いいんですの? そんな簡単に決めちゃって……」


 「あぁ、精霊が人間と契約する基準は相性とノリだな」


 「ノリ、ですか……」


 (ノリで契約していいものなのかと思うのは私だけじゃないはず……)


 人間からしてみれば契約する精霊によって、周りからの扱いが変わるくらい重要視されている。

 高位の精霊と契約できれば、優遇もされる。

 

 


 「ティナはやっぱり俺と契約したくないのか?」


 レイは私の身長に合わせてしゃがみ、眉を寄せ、悲しそうな顔を見せながら聞いてきた。

 そんな顔で聞かれたら、うなずくしかあるまい。


 「わ、わかりましたわ! 私なんかで良ければ是非レイと契約させてくださいまし!」


 「ボソッ………っしゃ!」


 

 なんか今聞こえた気がするがまあ気のせいだろう。

 私は精霊と契約したいと思ってはいたが、方法は詳しく知らなかったのだ。

 だから本人に聞いてみた。


 「契約すると言いましたが、どのようにすれば契約ができるのですか?」


 「お互いの同意の意思のもと、この精霊界の紙に署名すれば契約は完了だ」


 「なるほど……」



 私とレイは精霊界の紙というのに署名をした。

 署名をし終えた瞬間その紙は消えた。

 どこに消えたか聞いてみると、精霊界にある契約所という前世でいう役所のような働きをしているところらしい。


 「できましたね! ありがとうございます!」



 私は満面の笑みでお礼を言った。



 「ボソッ………い」


 レイは何か言っていたけど聞こえなかった。


 これで私は精霊使いとなり、契約精霊は精霊王となった。



 私は、精霊と契約したので精霊魔法が使えるようになったはずだ。

 だが精霊魔法というのは、簡単に使えるものではなかった。


 うまく使うのには、誰でも練習が必要となっていた。

 初心者が精霊魔法を発動させようとすると、発動自体はするが威力が小さかったり大きすぎたりとコントロールが必要になってくるのだ。

 精霊魔法の練習は屋敷に帰ったらさっそくとしようと思い、わくわくしていた。


 



 契約した精霊は、名前を呼べば自分のもとに来るらしい。

 ということで話をほかにもしたかったが時間の関係でもう元居たところに戻らなければならなかった。



 「ティナ、目を閉じて。風が止んでから目を開けてね」


 そう言われた私は言うとおりに目を閉じた。

 そよ風が吹き、止んだのを確認して目を開けると、王宮の庭園に戻っていた。



 私は、とりあえず人通りが多そうなところまで出たはいいが、道がわからなかった。

 とりあえずうろうろしてると、お父様とお母様が見えた。

 誰か探しているように、周りを見回していた。


 「お父様ー! お母様ー!」


 二人に向かって声をかけた。


 「「ティナ!」」


 

 二人は心配そうな顔を浮かべながら抱きついてきた。



 「探したんだぞ、ティナ。どこに行ってたんだ?」


 お父様の言葉を聞くからに、どうやら私を探していたらしい。

 


 「ちょっと庭園の奥の方まで行ってたのです。心配かけてごめんなさい」


 多少言葉は濁したが、嘘は言っていない。


 「そうか。陛下がティナに会ってみたいと言うから今から会って、少ししたら帰ろうか」


 「はい、お父様」



 お父様とお母様の間に入り、手をつなぎながら王宮内に入っていった。


 しばらく歩いて行くと謁見の間に行くかと思いきや、通り過ぎて結局着いたのはお父様の執務室に似たようなつくりの扉の前だった。

 どうやらここは、国王陛下の執務室らしい。


 扉をノックし、開けて入っていったお父様。

 続いてお母様と私が入る。


 (うぅ……少し緊張するよ)


 そう思いながらも国王陛下らしき人物が目の前にいた。


 「陛下、私たちの娘のクリスティーナ・フォルクです」


 父が私のことを陛下に紹介した。

 私が陛下に紹介されるということは、婚約の件だろうと予想していた。


 「ご紹介にあずかりました、クリスティーナ・フォルクと申します」

 

「この国の国王のクロムス・マルクスだ。よろしく、未来の義娘よ」



 ──ピシッ


 

 私、お父様、お母様は陛下の言葉を聞いた瞬間固まった。

 私はそんなこと聞いてないと訴えるようにお父様、お母様を見た。

 

 「ティナはまだ殿下の婚約者ではないですよ」


 「そうですよ陛下。何をおっしゃいますか」


 お父様とお母様は笑顔だけど目が全然笑ってなかった。

 この時私はこの二人を今後怒らせないようにしようと心の中で誓った。

 それほど私にとって今の二人が怖かったのだ。


 「まあまあ、冗談ではないか……」


 陛下はお父様とお母様に向けてそう言った。

 だが、冷や汗をかきまくっているうえに顔が引きつっている。

  

 「陛下、言ったではありませんか。ティナは()()()()()()()()()()だと…」


 「今はな…一応紹介しておくか……アルフォード、入りなさい」


 

 そう言った陛下は私たちが入ってきた扉とは違う扉に視線を向けた。

 陛下の声を待っていたかのように入ってきたのは、私と同じくらいの金髪碧眼の男の子だった。

 しかもその子はよくゲームの画面越しで見てきた人と重なった。


 (あ、やばい…できるだけ距離取っておきたかったのに……)


 「失礼します、父上」


 「紹介しよう、アルフォード。こちらはお前の婚約者候補のクリスティーナ・フォルク公爵令嬢だ。クリスティーナ嬢、これが私の息子で、第一王子のアルフォード・マクルスだ」


 そう、入ってきたのは攻略対象の一人でありゲームで私を断罪した人張本人だった。

 顔が引きつりそうになるのを我慢しながら自己紹介をお互いにし、その場はお開きになった。


 

 

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