4.精霊王
私は今、王宮に向かっている最中の馬車の中にいる。
本当はあまり行きたくなかった。
そんな私がなぜ王宮に向かっているのかというと、それは五日前に遡る。
そう、お父様に執務室に呼ばれた日だ。
扉をノックして入ると当然ながらお父様がいた。
その横には、珍しくお母様の姿もあったのだ。
お父様は顔の前で手を組み何やら真剣な顔をしていた。
そんなお父様の顔を見てたら、こっちまで緊張してしまった。
そしてお父様の口から出た言葉はというと────
「五日後、王宮に登城することになった。ティナはそのための新しいドレスを仕立てる。今日の午後採寸に来るそうだから準備しておきなさい」
「は、はい」
拒否しようと思ったが、お父様からなにやらピリピリとした空気が流れていた。
そんな中で拒否などできるはずもなかった。
それからというもの、ドレスの採寸やら仮縫いでの試着などで忙しく結局『精霊の愛し子』について調べることができないまま今日にいたってしまった。
(はあ……憂鬱だわ……)
動いていた馬車が止まった。
馬車の扉が開かれ、降りると目の前には王宮があった。
「お父様たちは国王陛下と大事な話をしてくるから庭園にでもいて待ってなさい」
「わかりましたわ」
そう言ってお父様たちは国王陛下のもとへ、私は庭園にそれぞれ向かった。
(私が来た意味なかったんじゃ……?)
そう思いながらも、庭園を散策しているとよく自分の部屋で話していた精霊が何かを感じ取ったようにうなずいた。
『ティナ、こっちきて~』
どこかへ向かうような口ぶりで話しかけてきた。
「ど、どこにいくの?」
『いいから~行ってからのお楽しみ~』
どこに向かおうとしていたかはわからなかったが、その精霊の後を追った。
どんどん人気のないほうへ向かっていた。
精霊はすぐに止まったので私もつられるように止まった。
すると急に強風が吹き、思わず目を閉じてしまった。
強風が止み、目を開けるとそこは先ほどまでいた場所とは違った。
一面に花畑があり、とても綺麗だったので見とれてしまった。
そこで声がかかる。
『ティナ~』
「なに?」
『目の前見て~』
精霊の言うとおりに前を見ると、そこには金髪の長い髪に青空のような色の瞳を持った男性がいた。
その男性は、とても美形だった。
自分の顔が熱くなるのを感じる。
心臓の音がドキドキ聞こえる。
これが一目惚れというものだろうか。
前世では入院生活が長かったため、恋愛には縁がなかった。
「ティナ」
突然名前を呼ばれ、心臓の音がより一層うるさくなるのがわかった。
「は、はい」
「会いたかった」
「は、はい!?」
急に会いたかったなどと言われてどう返せばいいのかわからなかった。
しかもそれを満面の笑みで言われた。クリスティーナは、どうしたらいいかわからず、下を向いた。
『レイ様、まず自己紹介しなよ~』
温かい目で見守るように見てきた精霊の言葉で我に返った。
「そうだったな、自己紹介が遅れてすまなかった。俺の名前はレイヴン、レイと呼んでくれ。ちなみに精霊王だ」
「私はクリスティーナ・フォルクと申しますわ。………え!? 精霊王!?」
「そうだ、よろしく頼む」
「あ、いいえ。こちらこそよろしくおねが……ってちがーう!」
危なく精霊王というところは流されるところだった。
(彼、本当に精霊王なの?)
だが彼が精霊王と言ったときに、精霊が否定しなかったということはきっとそうなのであろう。
ならば、ずっと疑問だった精霊の愛し子について聞けるかもと思った。
本を読んで間違っているかもしれない知識をつけるよりは、精霊王本人から聞いたほうが正しいと思ったからだ。
「レ、レイ様、あの……」
「様をつけなくていい、レイと呼んでくれ」
聞こうとした瞬間遮られてしまった。
「ですが……」
「レイと呼んでくれ」
「わ、わかりました」
精霊王を呼び捨てにするのは、気が引けるが本人の希望ならば仕方あるまい。
「レイ、精霊の愛し子とはいったいどういう意味ですの?」
「簡単に言えば、精霊の寵愛を受けたものだな。ちなみにティナもそうだぞ」
笑顔でそう言われた。
美形の笑顔は眩しすぎる…
「では精霊の愛し子は皆精霊を認識し、話すことは可能なのですか?」
一番気になっていたことである。
「話すことは契約していないと不可能だな。できるのはせいぜい認識することだ。あとは愛し子が精霊にお願いすることで精霊に力を借りることが出来る。ティナが特殊なんだよね」
「なるほど……」
色々と納得した。
精霊王であるレイから色々聞いたからこそ分かったが、本でどれだけ調べてもここまで詳しく知ることはできなかったと思う。
「そういえば精霊の愛し子は精霊と契約できるんですの?」
ふと疑問が浮かんだのだ。
「当り前だ。ティナは精霊と契約したいのか?」
「えぇ、少し前から興味がありましたの」
精霊のことを調べたり、実際に話したりしていたら自然と興味が出たのだ。
「だったら俺と契約するか?」
────突然そう言われた




