閑話.癒しも程々にしてください
先日娘がまた何かを拾ってきた。
それはふわふわしていて私の新しい癒しになるかと思ったのだが、リルとの仲が良いとは言えなかったのだ。
おそらくだが、魔物の中で最強の部類に入るフェンリルであるリルに本能的に危険を感じているのだろう。
そのためこの屋敷に居たままだと、ハムスターにとってストレスになってしまう。
そこである人物が頭に浮かんだ。
あの人なら……と。
「知り合いに聞いてみるとしよう」
まあ一応知り合いだ。
どちらかといえば上司にあたるけど……。
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「また疲れているみたいですね」
「エドモンドか……もしややっとリル達をモフらせてくれる気になったのか!?」
「それはないです」
陛下は目をキラキラと輝かせていたのだが、私がその考えを否定したら落ち込んでしまった。
だがそんな陛下にとって嬉しい知らせを話そうと咳払いをして──────
「陛下は以前癒しが欲しいと言っていましたよね?」
「そうだが……リル達をモフらせてはくれないのだろう? 期待をさせないでくれ…………」
さらに落ち込んでしまった。
罪悪感が……。
「なんかすみません……ですが今日は良い知らせがあります。先日この子がティナの部屋にいたらしいんですけど、リルと一緒には住めなくてですね。リルではないですけどこの子も結構いい毛並みなのでモフりたいのでしたら……」
私はそう言いながらハムスターを撫でた。
つい頬が緩んでしまう。
それを見た陛下がまた目を輝かせる。
視線で早く寄こせって言ってるように感じたので、ハムスターを落とさないようにゆっくりと渡した。
「見た目通りふわふわだな! クリスティーナ嬢はもふもふとの遭遇率が高くないか?」
「リル達の場合は親子だったからたまたまですけどね」
「いちなみにこの子の名前は何というのだ?」
「まだ無いので陛下が付けてあげたらどうですか」
陛下はしばらく考え込むようにしていたが、いい名前にひらめいたのか自信があるようにして────────
「ハムちゃんなんて言うのはどうだ?」
「あ……いいと思います」
もしかして陛下ってネーミングセンス無かったり……。
ハムって絶対ハムスターから取ってるよね。
まあ、名付けられたハムは気に入ってるみたいだしいいか。
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ハムちゃんが陛下の元へ行って数日たった。
宰相たちから陛下が以前にも増して、仕事を終わらせるスピードが速くなり何かしたのかと言われた。
そこは適当にごまかして私は陛下の執務室へと向かった。
「失礼します」
「エドワードか。ハムちゃんなら元気だぞ」
「陛下、そのハムちゃんは今どこに?」
陛下はいてもハムちゃんの姿が見えなかった。
周りを見渡してもやはりいない。
「ここにいるぞ」
陛下はそういって自身の胸ポケットの入り口を広げた。
そこから顔をぴょこっと出したのはハムちゃんだったのだが、けれどどこか疲れたような表情をしていた。
私は疑問に思ったのだが、その答えはすぐにわかることになった。
「今日も可愛いな~」
陛下はハムちゃんの頭を撫でたり頬ずりしたりしていた。
ある程度ならばいいのだが、陛下の場合やりすぎて逆にハムちゃんにストレスや疲れを与えてしまっているのだろう。
その証拠にハムちゃんの背中の一部分が他のところと比べると毛が薄く見える。
私は急いで陛下とハムちゃんを引き離した。
「な、何をするのだ!」
「モフるのは悪いとは言いませんけどやりすぎです。ハムちゃんの毛が少し薄くなっていますし、疲れが顔に出ています」
「それはいかんな。仕方がない……しばらくは我慢するとしよう」
これでしばらくハムちゃんも休めるだろう。
陛下、これに懲りたら癒しも程々にしてくださいね。
あとで陛下から聞いたがハムちゃんの毛は元に戻り、モフるのも以前より控えたとのことだ。
ハムちゃんは陛下の胸元のポケットに入って寝ているらしく、それだけでも目の保養になっているとか。
一日を寝て過ごしているため、運動をさせなければならないと陛下が張り切っていたのはまた別のお話。




