33.変化
「ねえ、レイ」
「なんだ?」
「前に精霊がヘレン様のことを『真っ黒』って言ってたんだけど、あれってどういうこと?」
「それはな────────」
レイ曰く、精霊がヘレン様のことを真っ黒と言ったのを簡単に説明すると『悪意』の塊だとか。
彼女は他の人よりも強い悪意があったらしい。
その悪意は精霊との相性も悪いため、レイは彼女に近寄っただけで吐き気がしたのもそのせいだろう。
今は少し症状が改善したとのことだ。
だが今はもうヘレン様は悪意がないから『真っ黒』ではなくなっている……って精霊が横で言っている。
つまりは悪意が形となって真っ黒に見えたということだ。
なんか怖いわね。
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「本当にすみませんでした!」
「いえ、大丈夫です! 顔をあげてください」
目の前にはミア様に何度も頭を下げているヘレン様の姿があった。
そんなヘレン様にミア様は驚くよりも困っている様子だった。
それはそうなるわよね……。
ヘレン様が落ち着いたので三人で少し話そうと思っていたのだが、ミア様は急用ができたということですぐに帰ってしまった。
そんなわけで部屋には私とヘレン様が残った。
レイは転生者同士話したいことも沢山あるだろうと今は精霊界にいる。
だが私に何かあった時にすぐに駆けつけられるように水鏡で見ているらしい。
「変わったわね」
「まぁ……そうね。猫被るのやめたからかなー。そういえばクリスティーナ様とレイヴン様ってどうやって知り合ったの? この間続編プレイしていなかったって言っていたから気になってたんだよね」
「それは────」
なぜか私とレイの出会いなどの話に傾いてしまった。
けれどヘレン様は途中で乙女ゲームの続編について色々話してくれた。
レイの他にもう一人攻略対象がいるんだとか。
しかもその人は隣国にいるらしい。
最後まで教えたら面白くないからとルカという名前だけ教えてくれた。
「これからどうするんですか?」
「一年学園に通ったらレイと旅に出ようと思っているわ」
「……あの、たまにでもいいのでこうして会いに来てくれませんか?」
「気が向いたら来ると思うわ」
今のヘレン様となら仲良く出来る気がする。
もし、お互いヒロインと悪役令嬢じゃない立場で出会っていたらまた違う関係になれたかもしれない。
そう思いながらも私は部屋を後にした。
自分の部屋までは転移で帰ったのだが私が降り立った場所の足元に何かいる。
白く、小さくてふわふわしている。
ソレは私と目が合って逃げようとしたが、逃げることはさせまいと私は魔法で結界を作り閉じ込めた。
そのふわふわの正体を覗くように見るとハムスターに似た動物だった。
目が丸く、クリっとしていて可愛かった。
リルは大きくてもふもふに包まれている感じだけど、この子は小さくて片手にすっぽり収まる感じでそこが逆に良いと言うか。
リル達とは違う良さだった。
早速お父様に相談しようと思い執務室に向かう途中でリルに会った。
これで何もなければ良かったんだけど。
リルとこのハムスターの子が仲が悪かったのよね。
なんか犬と猫を一緒に飼おうとしたけど、お互いがうまく合わなかったみたいな感じだった。
「それだと飼うのは無理かな」
「………そうですよね」
「知り合いに聞いてみるとしよう」
私はお父様にハムスターの子を渡した。
一瞬頬が緩んでいた気がするけど……うん、気のせいだ。
私ももう少しハムスター触っていたかったな。




