閑話.もふもふは誰にとっても癒し
「はぁ……」
私がため息をついても目の前にある書類の山は減ることはない。
最近魔物の被害が多くなっているため、私の執務室にはそう言った報告が来るのだ。
それで私はここ数日寝ていないためか集中が続かない。
確か今ティナは出かけているはずだ。
……よし、あそこに行くか。
私が向かったのは屋敷の敷地内にある場所だった。
「リル、アルフ、リリー!来たぞ!」
『エドだー!またあれしに来たの?』
「あぁ、最近疲れててな……」
私の声を聴き、勢いよくリルが走ってきた。
リルが言っているあれとは、モフることだった。
以前、疲れが溜まってリルたちをモフっていたら嘘のように体が軽くなったのだ。
それ以降ティナに見つからないように、たまに来ては癒されている。
「はぁぁぁ~~ふわふわだな」
『好きだね~。僕は父さんと母さんよりも体はまだ小さいけど、毛は一番ふわふわなんだよ!』
リルばかりをモフっていたからか、アルフとリリーが私に体をこすりつけてきた。
……もう可愛すぎる!
しばらくリル達に囲まれながら疲れを癒して仕事に取り掛かる。
────────スラスラスラ
リル達をモフってから疲れが吹き飛び、書類の山がどんどん減っていく。
癒しは大切だ。
**********
「陛下、ずいぶんと仕事がありますね」
「あぁ、全然終わらん」
陛下の目の下には隈ができており、顔色が悪い。
そして先ほどから見ていれば、仕事が全く進んでいないではないか。
一回くらいならいいか……。
「陛下、私の屋敷に来てください」
「なに? 何をするというのだ。まだ仕事は残っている」
「その仕事が進んでいないからです。このままやっていても同じでしょう」
私は転移魔法の魔道具を取り出し、陛下と共に屋敷に転移してきた。
急なことだったため陛下は少し混乱していたが、ここに立ったままでいれば使用人たちに見つかってしまうかもしれなかったので物陰に隠れた。
もちろん陛下も。
私は周りに人がいないか確認しながら目的の場所へと向かっていった。
「泥棒をしている気分なのだが……なぜフォルク公爵が自分の屋敷でこんな行動をとっているのだ?」
「陛下、私にも私なりの事情があるのですよ」
「……わかった」
陛下は静かになり、私は周りに警戒しながらリル達の元へ着いた。
そこにいた彼等に陛下は目を見開かせていた。
「なっ!フェンリルがなぜここに……しかも三匹」
「リル、アルフ、リリー。またモフらせてくれないか?」
『いいよ~。ん? 今日はもう一人いるね~』
「しゃ、喋った!?」
陛下もリルが喋れるとは思わなかったらしく、先ほどよりも驚いていた。
そんな陛下は放っておいて私はリル達をモフっていたのだが、陛下は立ったままだったので声をかけた。
「陛下、リル達にモフってみてください。疲れが引いてきますよ」
「リルとはこのフェンリルのことか?」
「はい、危険はありません」
「う、うむ…………なんと!触り心地がいい」
陛下は恐る恐る手を伸ばしたのだが、触れた瞬間顔が緩みリル達を撫でまわしていた。
気に入ったようで何よりだ。
モフった後の陛下は幸せそうな顔をしていた。
王宮に戻り、陛下はさっそく仕事に取り掛かり、仕事を次々終わらせていた。
やはりもふもふは誰にとっても癒しなのだな。
「あ、あのフォルク公爵……今度またリル達をモフらせてはくれないか?」
「え? 嫌です」
「そこを何とか!」
それからしばらくして陛下に会うと、そのことばかりお願いされていた。
すぐに断っているのだが……
陛下には、代わりになるような癒しを用意しなくてはな。
リル達は私の癒しなのだから!




