28.夏休みでも……
「本日はお招きいただきありがとうございます、王妃様」
「よく来ましたね。セリカ、クリスティーナ」
私とお母様は王妃様主催のお茶会に招待されていた。
それで今、王宮にある庭園に来ている。
王妃様への挨拶を済ませて、他の令嬢たちの元へ向かった。
そこにいた令嬢たちは皆ある方向をじっと見ていた。
「皆さま、どうしましたか?」
「クリスティーナ様! あの、あちらを見てくださいまし……」
代表して、一人の令嬢が王宮の方を指さした。
そこには、一人の女性とその周りに四人の男の人がいた。
「あれは……ヘレン様たちですね」
「えぇ、それにあの服装を見てください」
ヘレン様が着ていたのは豪華なドレスだった。
平民があんなドレスを買えるわけがない、と令嬢たちはそれぞれ口に出していた。
確かにそうなのよね。
となると殿下に買ってもらったと思う方が自然だった。
『ティナ~』
「あら、どうしたの?」
傍にいた精霊が話しかけてきたので、他の人には聞こえないくらいの大きさで返事をした。
精霊は何やら心配そうな顔をして────
『あそこにいるヘレンっていう女の子~真っ黒なの~』
「それどういうこと? 詳しく話して」
『あのね~』
「クリスティーナ嬢! なぜお前がここにいるのだ!」
私たちがいることに気がついた殿下は、こちらに近づいてきながらそう叫んでいた。
それまで令嬢たちの話し声で賑やかだったのが一気に静まり返り、こちらに注目していた。
肝心な時にいつもいるよね。
殿下は私の前まで来ようとしたが、ある人物が殿下を止めるように間に入ってきた。
「アルフォード、この状況が見えないのですか? 私がクリスティーナを招いたのです。それをあなたにとやかく言われる覚えはありません。最近のあなたの行動は目に余ります。そこの平民の娘を王宮に連れてくるなど、第一王子としての自覚はあるのですか!」
「いくら母上といえども、言っていいことと悪いことがあります!」
王妃様は怪訝な表情で、殿下に言い放った。
殿下の後ろでヘレン様はすでに涙目になっており、傍にいた三人が慰めていた。
…………いつも通りね。
平民を王宮に連れてくるなど、本来あってはならないことだから王妃様の方が正しい。
しかも王妃様の口ぶりから考えると、最近の殿下の行動は知っているらしかった。
さすが、というべきだろう。
殿下はヘレン様に会ってから変わってしまった。
人の話に耳を傾けず、私に会うと今みたいに怒鳴り散らし、王妃様がおっしゃったように王子としての自覚がない。
恋をすると人は変わるとはこのことなのだろうか。
それにしても変わりすぎだ。
殿下たちは王妃様の命で王宮内へと入って行った。
「ごめんなさいね、クリスティーナ。アルフォードが失礼な態度で……」
「いえ、王妃様。気にしないでください」
王妃様はそう言った後、何やら考え事をしたような顔をしていた。
今回のことで何か思うことがあったのだろう。
夏休みでもヘレン様たちに会うなんてすごい偶然だ。
……こんな偶然いらないのに。
お茶会は何事もなかったように再開された。
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「────なんてことがあったのです、陛下」
「……そうか。仕方があるまい、あれを付けるか。アルフォード、それから最近一緒にいる四人と……念のためクリスティーナ嬢にも頼む」
私は息子であるアルフォードと、最近一緒にいる四人に監視を付けた。
報告によると、クリスティーナ嬢は濡れ衣を着せられそうになったことは多々あったため、監視というよりは証人に近い意味でつけるよう命じた。
アルフォードがこの調子では次期国王は第二王子になる可能性も考えなければならないな。
やることが多すぎて疲れも溜まる。
フォルク公爵が来るのは、一週間後か……アルフォードに関してまた何か言われそうだ。
クリスティーナ嬢とレイ殿はもちろんだが、フォルク公爵は別の意味で敵に回したくない。
私は右側に積まれた書類に一つずつ目を通し、サインをしながらそんなことを考えていた。




