27.SSランク冒険者の条件
夏休みに入り、私とレイはやることがなく暇だったのでギルドで依頼を受けることにした。
学園に通うようになり、(主にヘレン様たちのせいで)疲れが溜まっていたため中々来れなかったのだ。
「サナさん、お久しぶりです」
「ティナさん! 今日はどの依頼を受けますか?」
「これにします」
私は掲示板から選んできたものをサナさんに渡した。
手続きが少しかかると言われたので、それまで待つことにした。
「それにしても、ティナさんはあっという間にSSランク冒険者になりましたね。懐かしいです」
「そうですね……」
私はSランクになってから、SSランクに上がるまでそんなに時間はかからなかった。
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ギルドはいつもより騒がしかった。
私はどの依頼を受けるか迷っていた時、急に肩を掴まれた。
以前のようにガラの悪い人かと思っていたが、振り向くと厳つい顔をした男の人がいた。
けれど、どこか優しい雰囲気だった。
「蒼銀の聖女で間違いないか?」
「………はい。どちら様でしょうか?」
「俺は────」
「もうっ! ダインが怖い顔をしているから、警戒されているのよ」
男性は私に名乗ろうとしたところで、後ろから綺麗な女性が現れた。
彼女はこちらに向き直り、ニッコリと微笑んできた。
「ごめんね~。あ、自己紹介はまだだったよね! こっちの怖い顔をしたのがダイン、私はカーラよ。突然声をかけてびっくりしたでしょう? 私たちはこれでもSSランクの冒険者よ」
カーラさんは冒険者カードを私に見せながら、自己紹介してきた。
SSランク冒険者がなぜ?
私は何も悪いことなどしていないはずだ。
「えっと……何の用ですか?」
「あぁ、ここでは少し言いづらいからギルドの奥へ行こう」
私はカーラさんに背中をぐいぐい押されそのままギルドの奥に続く廊下のようなところを通った。
しばらく進むと闘技場のような広いところに出た。
そこは屋敷の訓練場と造りが少し似ていたため、そういうことに使うのだろう。
「あの、ここでいったい何をするので────」
私が言い切る前にカーラさんは魔法を発動、ダインさんは剣で切り込んできた。
もちろんそれを避けたが、避けることを読んでいたかのように次々と攻撃を仕掛けてきた。
「何をするのですか!?」
二人に聞いても返事は返ってこない。
仕方なく、私はレイを呼んだ。
レイは状況がわかっていたらしく、すぐに力を貸してくれた。
魔法でカーラさんの攻撃を打ち消し、壁に立てかけてあった剣を取りダインさんの攻撃を受け止めた。
さすがにSSランク冒険者を二人相手にするのは少し厳しかった。
私は、ばれないように二種類の魔法を使ってカーラさんを拘束し、ダインさんと剣での一騎打ちになった。
ダインさんの剣技はレイを除くと今まで戦ったどの人よりも強かったと思う。
さすがに剣技だけでは勝てないと考え、私は体術も組み合わせて戦った。
ダインさんは私が体術まで使えると思っていなかったらしく、一瞬焦ったような顔をしていた。
そこを狙い、私は一気に攻め込み剣先をダインさんの首に向けた。
「……参った」
「………まさか私だけでなく、ダインも負けるなんて!」
ダインは剣を鞘にしまってから両手をあげて降参し、カーラさんは少し驚いた様子だった。
「ティナ、よくやった。おめでとう」
「? レイはなんで攻撃してきたのか知っているの?」
「……あぁ。それを説明をしてくれる人がもうすぐ来る」
私はダインさんに向けていた剣を下ろし、元あった場所に立てかけた。
すると、お父様より年上そうな男の人が拍手をしながら入ってきた。
その後ろには見覚えのある女性がいた。
「……サナさん?」
「ティナさん、騙すような真似をしてすみません。そしておめでとうございます!」
サナさんは謝った後に満面の笑みでおめでとうと言った。
何に対して? どういうこと?
私の考えを見透かしたように拍手していた男性が話しかけてきた。
「説明しなくて悪いね。ちなみに俺はここのギルドマスター。これはSSランクになるための条件の一つなんだ。それにしてもすごいねぇ……そこの二人とも結構強いほうなのに一人で勝っちゃうなんてな」
「……SSランク?」
「そうです。登録の時にSSランクになるためには条件を満たす必要があるとお話ししたじゃないですか。これが条件の一つです」
サナさんは丁寧に説明してくれた。
SSランクになるための条件はSランクの依頼をある程度受けること、十分な戦闘力を持っていること、後はSSランク冒険者二名以上にその力を認められること……つまり今起きたこと。
私は今日ですべての条件を満たし、SSランクに上がったとのことだ。
「……それにしてもすごいね。二種類の魔法使えるなんてさ」
「何のことでしょうか」
「隠したいならいいけどね」
マスターは私に顔を近づけ、他の人たちには聞こえないくらいの声の大きさで話しかけてきた。
どうやら全てお見通しだったようだが、私がこのことを隠したかったということを察し、それ以上は聞かないでくれた。
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「なんていうことがありましたよね」
「そうですね……あの時は驚きました」
「ですが今ではティナさんは有名ですよね。あ……手続きが終わりました。気を付けて行ってきてくださいね!」
今では私は結構有名になっていたりする。
そしてあの後、ダインさんとカーラさんと仲良くなり、たまに連絡を取り合ったりしている。
まだフードを被っているため、私の正体が公爵令嬢だと知るものは陛下以外いないと思う。
フードで顔は見えないかもしれないが、私はサナさんに笑顔で返した。
「行ってきます!」




