18.私の二つ名
私はあれからも依頼を受け続け気づいたらAランク冒険者になっていた。
実際には今日の魔物討伐の依頼が終わればSランクになる。
金銭面でも当分生活ができるだけの金額もあった。
そして今日私は魔物討伐を素早く終わらせてしまい、リルの両親について聞きまわっていた。
今まで人に聞いても全く情報が得られなかったのに、最近になって目撃情報が増えた。
この調子ならば、見つかるかもしれない。
私は気になっていたことがあった。
最近依頼を受け、行った先々できらきらした目を向けられるのだ。
最初は私の思い過ごしかと思い、そのままにしていた。気になってレイに聞いてみるとどうやら同じことを思っていたらしい。
「サナさん、最近やたら人に見られている気がするのですが……」
「あぁ! それはですね、ティナさんが二つ名持ちだからではないでしょうか?」
「二つ名、とはなんです?」
「そういえば、ティナさんには説明していなかったですね。簡単に言えばAランク以上の冒険者が持っている通り名ですね」
「ちなみにどんな二つ名なのですか?」
私に二つ名があるのは初耳だった。
サナさんが言うには、CランクからすごいスピードでAランクに上がったので有名になったとか……
あとは私はいつもフード付きのローブで顔を隠していたので覚えられていたらしい。
「ティナさんの二つ名は、『蒼銀の聖女』です!」
「蒼銀の聖女ですか……」
蒼銀はきっとフードから少し出ている髪の色から来たのだろう。
でもなぜ聖女とつくかがわからない。
「サナさん、なぜ聖女とついているかお聞きしても?」
「おそらく、ティナさんが最初に依頼を受けた村で治癒魔法をかけたからではないでしょうか?治癒魔法が使えるのはほんの一握りなので」
そういえばそんなことをした気が………
それにしても蒼銀の聖女という二つ名は恥ずかしい。
「二つ名は変えることができますか?」
「変えられないことはないのですが、ティナさんの場合広まりすぎて逆に変えることが難しいというか……」
私は行く先々で蒼銀の聖女と呼ばれるのだろうか。
そもそも聖女という柄でもなく、むしろその逆で悪役令嬢なのだ。
変えるのが難しいのならば仕方がない。
私が頑張って徐々に慣れて行けばいい話なのだから。
私はサナさんから冒険者カードを受け取るとまた来ると告げ、ギルドを出た。
「よう、蒼銀の聖女さん」
「なっ! レイまで!」
レイは先ほどまで一緒にいなかったが、知っているということは水鏡で見ていたのだろう。
にやけた顔をして現れたので少し怒ろうと思っていたところに──
「あの…蒼銀の聖女様であっていますか?」
「くくっ………いてっ」
レイが横で笑っていたので足を少し軽めに踏んだ。
話しかけてきた人は軍服をきた男性二人だった。
「……そうですが、なにか?」
「少し来ていただけませんか?」
「………わかりました」
軍服を着た男性の一人が転移魔法を発動した。
転移した先は私が見たことのある扉だったのだ。
この瞬間嫌な予感がした。
「陛下、入ります」
男はそう言い、目の前の扉を開けるとそこには見たことのある男性がいた。
国王陛下だ。
私はフードで顔が隠れていることをいいことに、嫌そうな顔をした。
「皆は下がれ」
『はっ!』
陛下は部屋にいた人すべてを下がらせた。
そしてこちらに向き直り、不気味な程の笑顔を浮かばせていた。
「こんにちは、蒼銀の聖女。いや、クリスティーナ嬢とお呼びしたほうがいい
かな?」
その言葉を聞き、私だけでなく隣にいたレイまでもが固まった。
「何のことでしょう、陛下」
「あぁ、ごまかさなくていい。すでに調べはついているからね。別に咎めたりはしないさ」
「でしたら何のお話ですか」
私は正体がばれていたようなので、フードを頭から外した。
陛下は真剣な表情で聞いてきた。
「君の契約している精霊はいったいなんだ? なぜ何種類もの魔法を使える」
「………」
私は答えに迷ったのでレイに念話で相談した。
するとレイはお父様の契約精霊に念話を送り、その精霊がお父様にこの話をした。
お父様からの返答は陛下だけになら…というものだったらしい。
「陛下、このことは内密にお願いいたします。知っているのは私の家族と屋敷の使用人だけですので」
「……わかった、約束しよう」
私は自分の契約精霊が精霊王であることを話した。
陛下はその話を聞いて、衝撃を受けたようだったがすぐに気を取り直した。
「………ではなおさら私の息子と婚約しないか?」
「断る」
私が断ろうと口を開いたとき、レイは冷ややかな表情で言い放った。
レイの瞳には怒りが含まれていた。
「……では、正式な婚約者が決まるまで公的行事でのパートナー役を頼まれてくれないか?」
「………わかった。ただし二つほど条件がある」
「申してみよ」
「一つは、俺とティナの交際を認めろ。パートナー役をやるとはいえ、ほかの場では関係ないのだから。もう一つは、ティナが15歳になったら通う学園に俺も入学させてほしい」
「……よかろう」
陛下は少し考えてから答えを出した。
私はレイとの交際が認められ、学園への入学も許可してもらった。
だから公的行事でパートナー役をやるのは我慢しよう。
レイも一緒に学園に通ってくれるのかと思うと、少し楽しみになってきた。
ヒロインにさえ関わらなければ楽しい学園ライフが待っているのだと願いたい。




