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16.僕の恩人(リル視点)



 僕は父さんと母さんと三人で暮らしていた。

 住処は洞窟のようなところだった。

 日中は近辺を散歩して、夕方になったら中へ入って休む、そんな暮らしをずっと続けていた。

 だがその日常は一瞬にして消え去った。



 ある日突然、人間の中で冒険者と呼ばれる人たちが襲ってきたのだ。

 父さんに、魔物を狩る冒険者という存在がいると前に聞いたことがあった。

 だがその人たちは被害を出している魔物しか狩らないと言っていたのだ。



 でも実際僕たちは何もしていないが殺されようとしている。

 両親は僕を逃がすために、その場に残った。

 後で追いかけると言っていたが、会えないかもしれない。

 そんなことが頭をよぎりながらもひたすら走った。

 追手はなかったが途中まで何本もの矢が飛んできたのだ。


 数本は避けることができたが、一本の矢が足をかすった。

 初めて負った傷は酷く痛み出した。

 もう何日走ったのかわからなく、疲労感もたまりそろそろ限界が来ていた。





 茂みに隠れ、休んでいたところに突然少女と精霊が現れたのだ。

 その精霊は異様なほど、眩しい空気をまとっていた。

 僕はこんなに輝きを放っている精霊なんて見たことなどなかった。

 少女はこちらに近づこうとしたため警戒し、唸り声をあげた。



 「傷を治すだけだから、警戒しないで?」


 そう言われ、最初は疑った。

 でも彼女の目はまっすぐとしていて嘘をついているようには見えなかった。

 彼女の言葉なら少しは信用してもいいか、そう思えたからけがをしている足を出した。


 傷を治すだけでなく血で汚れた部分を魔法で洗ってくれた。

 

 (……すごい!)


 僕はお礼を言った。

 何かをしてもらったときはお礼は言うものって教わったから。


 だが、僕はやらかしてしまったことに気づく。

 普通の魔物は話さない。

 母さんに人間の前では話さないように、きつく言われていたのだ。

 狙われる可能性があるからと。

 僕は、隙をついて逃げようと様子をうかがっていた。

 


 「仮住まいが見つかっていないんだったら、うちの屋敷に来る?」


 仮住まいを探していると言ったらそう返ってきた。

 僕はやはりこの子も、住処を襲ってきた人間たちと同じだと思った。

 

 

 「安心しろ。彼女は危険ではない。精霊王であるこの俺が保証しよう」



 僕の考えを見透かしたように精霊が言い、彼は精霊王だと名乗った。

 精霊王ならば、まとっていた空気があんなに眩しいわけだ。

 結果、僕は彼女たちを信用することにした。

 



 ということで少女、いやティナのお屋敷に居候することになった。

 彼女は家族に冒険者をしているとは言ってないらしく、秘密にしてと言われた。








 僕は彼女の屋敷に居ながら、たまに散歩という名目で依頼の手伝いをしている。

 ティナは依頼で行った先々で僕の父さんと母さんの情報を集めてくれて、本当に感謝の言葉しかない。


 (父さん、母さんに会いたいなあ…)



 ──この時の僕にはすぐに再会できるなど思いもよらなかった





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