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15.フェンリルの子



 『グルルゥゥーーー』



 私とレイの目の前にはうなり声をあげている白い魔物がいた。

 



 簡単に話すと、私たちは今日も依頼を受けていた。

 内容は魔物討伐だったが、すぐに終わったため歩いて帰ることにした。

 道を歩いていると横の方にあった茂みからガサガサという物音がし、気になって覗いてみた。

 するとそこには白い毛を持った犬のような魔物がいたのだ。

 私たちに気が付いた白い魔物は威嚇してきて、話は冒頭に戻る。



 「レイ、この魔物はなんというの?」


 「フェンリルだな。だがまだ小さいから子供だ」


 「ていうことは親のフェンリルが周りにいるの?」


 「普通はそうだが……」



 私は子供のフェンリルがけがをしているのを見つけた。

 後ろ足の一部が赤くなりそれが血だとわかる。

 治すために近づこうとするが警戒されて、近づくこともできなかった。

 無理やり、逃げないようにして治癒魔法をかけることも可能だったが、それだと余計に警戒されてしまうのだ。



 「傷を治すだけだから、警戒しないで?」


 

 私はとりあえず、目線を合わせるためにしゃがんで傷を治すだけと伝えた。

 全身の毛が猫のように逆立っていたのがだんだん治まっていた。


 そして私の言葉を理解したように、けがをしていた足を出してきた。

 私はすぐに治癒魔法をかけ、ついでに血で汚れていた部分を水魔法で洗い流した。




 フェンリルの子供は一瞬で痛みが引いたことに驚いた様子だった。

 それを確認するようにその場でぐるぐる回ったり飛び跳ねたりしていた。

 その様子が可愛く、ふふっと声を出して笑った。


 そのことに気づいたフェンリルの子もはにかんだように口角をあげた気がした。



 『ありがとう』


 「えっ!? 今話した?」


 『うん』



 なんとフェンリルの子は念話ではなく、実際に話すことができたのだ。

 レイに聞いてみると話すことができる魔物はとても珍しいらしい。


 「名前は? 親はどうしたの?」


 

 周りにはほかに気配がなかったが一応聞いた。


 『僕はリル。住処にいたところ、人間たちに襲われたんだ。だから今仮住まいを探していたんだ』


 リルの体はその時のことを思い出して震えていた。

 今さっき人間に襲撃されて怖くないわけがないのだ。


 「仮住まいが見つかっていないんだったら、うちの屋敷に来る?」



 また襲撃される可能性があるところにいるよりは、警備もしっかりしているうちの方がいいと思って提案したのだ。


 『で、でも……』


 「安心しろ。彼女は危険ではない。精霊王であるこの俺が保証しよう」


 リルは私の言葉に戸惑っていた。

 おそらく私がここまでする理由がわからないのだろう。

 ただ単に放っておけないだけなのだが……


 だがレイの言葉を聞いたリルは精霊王がそこまで言うのならば、ということでうちに住む(仮)ことになった。

 ちなみにリル曰く魔物は精霊がまとっているらしいオーラ(?)のようなもので大体の強さやランクがわかるらしい。

 それでレイが精霊王だとわかったらしい。





 ギルドへの報告と報酬の受け取りを素早く済ませ、私たちはリルを連れて屋敷に転移した。

 転移した先はお父様の執務室だったらしく、ちょうどよかったのでリルの説明をし、住む許可をもらった。


 普通は魔物を家に住ませるなど、反対されることだがお父様はあっさりと許可してくれた。









 リルは屋敷での生活が気に入り、今ではすっかりのんびりと過ごしている。

 少しずつだが、体の方も大きくなっている。

 屋敷の使用人たちも最初は驚いた者がほとんどだったが今は嫌な顔一つせずに、リルと仲良くしている。



 ~~~~~~~~~~~~~


 「やはり触り心地がいいな」


 エドモンドは仕事の疲れを癒すためにこっそりとリルを撫でていたことは、本人たち以外は誰も知らなかった──

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