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14.街にお忍びデート




 私は朝早くに起き、エミリーに手伝ってもらいながらも着替えた。

 今日はいつも着ている部屋着用のドレスではなく、平民が着るような簡素な服に着替えた。

 そして頭には茶髪のカツラをかぶった。

 両親とエミリーには、あらかじめお忍びで出ることを伝え、屋敷を後にした。

 本来ならば、公爵令嬢がお忍びでも外に出るときは護衛が付くものだが、両親はレイ殿がいれば問題がないと思っているらしく今日は、というよりいつもいない。



 屋敷から少し離れた場所に転移し、レイが来るのを待った。


 「お待たせ、ティナ」


 そう言い、現れたレイはティナと似たような簡素の服を着ていた。

 私はレイを見て驚いたのだが、服にではなかった。



 「レイ、その髪どうしたの?」



 レイはいつもの金髪の長い髪ではなく、黒髪で短髪だったのだ。


 「金髪だと少し目立ってしまうだろう?黒髪ならばうまくまぎれることができるかと思ってな……光魔法で髪色を変えて見せている」


 平民は基本黒髪や茶髪が多く、精霊使いとなる素質のある人はまた違った色の髪が多いのだ。

 そのため、街中を歩いているとどうしても目立ってしまうのだ。


 レイのその心遣いに嬉しくなった。



 「じゃあ行こう!」


 「あぁ」



 私はレイの手を引きながら街で屋台がたくさん並んでいる場所に向かって歩いて行った。

 食べ物から小物やアクセサリーを売っている屋台があり、大変賑わっていた。



 私は食べ物の屋台から漂ってくるいい匂いにつられて近くまで見に行った。

 今日は朝ごはんも抜いて来ていたためお腹がすいていたのだ。

 

 レイはというと私が見ていた屋台と同じところに目を輝かせていた。

 精霊は基本食事を必要としないため、精霊界には食べ物というものが存在しないらしい。


 きっと彼らにとって人間界は興味深いものだらけだろう。 私は先ほど近くまで見に行った屋台のおじさんに注文をした。


 「おじさん、それ二本ください!」



 「はいよ、二本で銅貨4枚だ」



 「どうぞ!」


 「確かに受け取った。気をつけて持ちな」



 私は銅貨4枚払って、屋台のおじさんから串に刺さった肉を二本もらった。

 銅貨1枚が大体50円程度。

 そう考えれば妥当な金額だと思う。



 「はい、あげる」


 私はもらったもう一本をレイに渡した。

 

 「………いいのか?」



 レイは串の持ち手を持ちじっと観察をしていた。

 その様子に私は笑いながらももちろん、と返した。

 恐る恐るという感じで口に入れた瞬間、目を見開き残りの刺さっていた肉をあっという間に平らげてしまった。

 どうやら気に入っていただけたようだ。



 私たちは次に小物のお店へと見に行った。

 できれば日頃の感謝も含め、両親やエミリーを含めた使用人、レイにも何か買っていければいいかと思っていた。


 小物で特に目に入ったのは髪を結ぶためのひもだったのだ。

 そこに並んでいるひもの中でレイの瞳に似た色があった。

 レイの髪は長いが、結ばれていないためちょうどいいと思ったのだ。

 

 レイがこちらを見ていない隙に、私は店員のお姉さんにお会計とプレゼント用に包むのをお願いした。



 私たちはそれから皆にプレゼントを買うためにお店を回った。



 お父様には仕事でつかえるようなペンを、お母様にはお茶会にでもつけていけるような香水を、エミリーは最近手がガサガサになっていたのでハンドクリームを、ほかの使用人たちには今流行っている菓子店で売っていたクッキーや紅茶を買った。

 レイも途中で気に入ったのがあったらしく、何かを購入していた。



 プレゼント選びが終わるころには、お昼時になっていた。

 最後に寄った菓子店では軽食も用意していたためお昼はそこで食べた。






 その後もまだ見ていない屋台やお店も周り、歩き疲れたときは噴水のある広場で休憩もしたりした。

 楽しい時間はあっという間に過ぎてもう夕方に差し掛かろうとしていた。


 「ではもう帰るか」


 「そうだね」



 転移で帰ればすぐなのだが、私たちはまだこのままでいたかったため歩いて屋敷の裏門に向かうことにした。

 屋敷に着く一歩手前で私は立ち止まった。


 「レイ、今日小物が売っているお店で買ったの。よかったら、髪結ぶのに使って」


 

 「ありがとう、俺もティナに似合うかと思って買ったんだ」



 レイは私からのプレゼントを確認すると魔法を解除した。

 元の姿に戻ったレイは私が渡した紐を髪に結んだ。

 そしてポケットから正方形の小さい四角い箱を取り出しその中身を私の手首につけてくれた。


 「えっ、かわいい! ありがとう、大切にするね!」



 手首につけてくれたのは、可愛いブレスレットだった。

 私の瞳の色である紫の紐を基本とし、青と透明のビーズで作られたものだった。


 私はレイと別れた後、部屋に戻った。

 エミリーに夕食の時間だと呼ばれるまで机に頬杖をつきながらもらったプレゼントをずっと眺めていた。

 それを眺めていたら、今日のことを思い出し頬が緩むのを感じる。



 ──きっと私はその日ずっとにやけたような顔で過ごしていたと思う








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