13.誕生日
「お誕生日おめでとう! ティナ!」
「ティナももう11歳、早いわね」
「お父様、お母様ありがとうございます!」
今日は何の日かと言うと、私の誕生日なのだ。
今年は私の希望もあり、家族と使用人たちだけで祝うことにした。
これで11歳になった。
誕生日なのは嬉しいが………ゲーム開始まで残り四年となってしまった。
正直とても複雑な気持ちである。
(レイと契約したのはもう一年も前なんだよね……)
あれからレイとの関係はそんなに変わっていなく、そんなことを考えると、暗い気持ちになってしまった。
(いけないいけない! せっかくのお誕生日でみんなお祝いしてくれてるんだから楽しまないと!)
誕生日パーティーは夜遅くまで続いた。
パーティーにはレイが現れることなく、お開きとなった。
自室に戻り、バルコニーに出ると満天の星が広がっていた。
しばらくそのまま眺めていた。
「レイ……」
「呼んだか?」
独り言でだったはずなのに、レイはそれに答えるかのように現れた。
「……え? どうして……」
「寂しそうな顔してたから来た」
そんなこと言われたら誤解してしまいそうだった。
「きゃっ!?」
突然自分の足が地面から離れ、思わず声をあげてしまった。
自分の体はレイに抱えられて空中に浮いていたのだ。
(この体勢、お姫様抱っこじゃない!?)
私は恥ずかしくなり、下ろしてと暴れた。
「ティナ、暫くじっとしていろ」
耳元でささやかれ、ぼっと顔が一気に赤くなるのを感じながらも俯いた。
レイは私を抱えたまま上へと向かっていた。
すぐに上空で止まり下を見下ろした。
「ティナ、遅くなったが誕生日おめでとう。ここからの景色、綺麗だから見せたくてな……」
レイは平然としたような顔で言っていたが、髪の隙間から見える耳が真っ赤になっていた。
下を見ると街にある家の明かりがぽつぽつと見えてとても綺麗だった。
「ありがとう、レイ。………あ、あのね私レイのこと好きなの……」
この綺麗な景色に包まれながらだったら言えると思い、勇気を振り絞った。
「…………え?」
「だ、だから…ひ、一目惚れなのっ!!初めて会った時に!」
「……………」
返事がなかったため、私はそろっとレイの顔を覗くようにして見た。
レイは固まっていたが、すぐにこちらを見てため息をした。
私は拒絶されてしまったのかと思い、不安でいっぱいになり胸がズキンと痛んだ。
「……レ、レイ?」
「! 別に嫌なわけじゃないんだ。むしろその、嬉しいっていうか……」
私が不安そうにしていたのに気づいたのか慌てた様子で言われた。
いや、どういうこと?それを聞いて最初に思った。
「じゃあなんでため息?」
「俺、実はティナが小さい時から精霊界にある水鏡っていう道具で見てたんだ。最初は興味から見ていたんだがいつの時からかティナのこと気になって、気づいたら……」
「う、うそ……」
「あぁ、好きになっていたんだ。それを伝えたらティナの迷惑になるんじゃないかって悩んでて……だが今ティナからその…言われて俺が今まで悩んできたのは何だったんだと思っていたんだ。誤解させたみたいで悪かったな」
その言葉を聞いた瞬間先ほどの沈んだ気持ちが吹き飛び、代わりに嬉しさで胸がいっぱいになった。
「ううん、私たちってお互いのこと想っていたのに今まですれ違ってたんだね」
そう言いながら、私は微笑んだ。
「はぁー…可愛い!」
レイはより一層強く私を抱きしめた。
レイが言った言葉で赤くなりながらも、その背中に腕を回した。
「っっくしっ!」
「体が冷えたのか。では部屋に戻るか…それにしても、くしゃみまで可愛いな……」
「もう!可愛いって何回も言わな……っ!!」
頬に温かく柔らかい感触が落ちて来たのだ。
それが何なのか理解するまで時間はかからなかった。
私はすぐ頬に手を当て、真っ赤になった。
「なっ! レ……んっ」
レイと言おうとした瞬間レイは私の口の上に指をあて……
「今はまだここまでだ。この先はもう少し大きくなってからな?」
「……はぅ」
私は顔を赤くすることしかできなかった。
話していた間にいつの間にか部屋についていたようだ。
レイは優しく微笑み、大切なものを扱うようにそっと下ろしてくれた。
「それじゃあ、また明日な……」
先ほどした頬とは反対側にキスをして転移で精霊界に帰ったのだ。
(やばい……幸せすぎるよー)
枕に顔を埋め、叫びたい気持ちをぐっとこらえた。
──その日はかなり気分が上がっていたためすぐに寝ることはできず、翌日は寝不足だった
~~~~~~~~~~~~~~~
「あらあらあら~! ティナ様やるわね~。やっと二人はくっついたわ~」
シルフィードは二人の様子を風の魔法でいち早く知り呟いた。
だがそのことを陰で聞いていた人物がいたことを知るのは少し後になりそうだった。
ブックマーク、評価ありがとうございます!
9話目、娘が好きになった人ならば家柄を問うつもり(わ→は)なかった。
に直しました。ご指摘ありがとうございます!