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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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99話.森の番人達の日常と帰路での出来事(4)

続きとなります。


「何でにゃ。何で氷の塔が落ちてこないにゃ。おかしいにゃ」


精霊の森に落とした氷の塔。あれはお猫サマがやったと自負していた。ところがこの場に落ちて来たのは氷の塔ではなく”なめくじ”である。


「おっ、おっ、お猫サマは、なめくじが大嫌いにゃ。何であんなのが空から降って来たにゃ。おかしいにゃ。おかしいにゃ」


思わず癇癪を起すお猫サマ。


精霊の森に落ちて来た氷の塔に関しては、カル達は誰もお猫サマの神力だとは考えていなかった。恐らくもっと上位の神がお猫サマに力を貸したものだと考えていた。


お猫サマは、精霊神でも下級神の下の下の下である。


そう、少し考えればお猫サマにあの様な巨大な氷の塔を作る事などできないと誰にでも分かるのだ。


だが、この場である者だけがお猫サマが召喚した”なめくじ”の本当の正体を知っていた。


それは、カルの頭の上に乗っている妖精の姿をした裁定の木の精霊である。


「まっ、まさか。あのなめくじ”神獣なめくじ精霊”なのか」


妖精の姿をしている裁定の木の精霊は、思わず額に小さな冷や汗を流していた。


「”神獣なめくじ精霊”。なんですかそれは?」


「カルは、精霊界の事は知らないと思うけど、精霊界には、神獣と呼ばれる獣がいくつかいるんだ。その中でも異色を放っているのが、目の前にいる”神獣なめくじ精霊”なんだ」


「でも、大きな”なめくじ”だよね」


「そう言ったら身もふたないよ。でもね、あのなめくじの特徴が凄いんだ。まあ、見ててよ」


冒険者達の前に現れた”なめくじ”は、触覚の様な目を動かしながら辺りの様子を伺う。自分がなぜこの場所に呼ばれたのかを見極めるかの様に。


「おい、早く目の前のなめくじを退治してしまえ」


冒険者の誰かがそう言った途端。冒険者達が一斉に剣を振りかざして目の前のなめくじに突撃を行う。


だが、なめくじは微動だにしない。いや、動きが遅すぎて動いている様にすら見えないのだ。


数人の冒険者がなめくじに一斉に剣を突き立てる。剣は、ずぶずぶとなめくじの体内へと入っていく。


「ふん。体が大きくても所詮なめくじだ。こんな物は魔獣とも呼べない」


ひとりの冒険者がそんな事を言いながらなめくじに突き刺した剣を引き抜いた。すると、なぜか剣が異様に軽くなっている事に気がついた。


「おっ、やけに剣が軽いな」


冒険者は、そんな事を言いながら軽くなった剣に目線を移す。そこには、剣実が半分以上も無くなってしまった剣が残されていた。


冒険者は、思わず剣実が無くなった剣をまじまじと見つめてしまう。


ふと、顔を上げて同じ様になめくじに剣を突き刺した冒険者に目を向ける。やはりその冒険者の持っている剣の剣実も半分以上が無くなっていた。




「まっ、まさかこのなめくじは、武具を溶かすのか」


冒険者は、まさかと思い自身が装備している軽鎧を見る。するとなめくじに剣を突き刺した拍子に飛び散ったであろう粘液が付いた軽鎧に何か所もの大きな穴が開いていた。


しかも軽鎧の下に着ていた服や肌着にまで穴が広がっていた。


「こっ、こいつはまずい。みんな下がれ。なめくじに物理攻撃は通じないぞ!」


なめくじに最初に攻撃を行った冒険者達の装備は、あちこちに穴が開いて既にボロボロである。


「くそ。なめくじだと思って甘く見るな。こいつヘタな魔獣より質が悪いぞ」


「武具の熔けるのが止まらねえ。この武具はもう使い物にならねえ」


なめくじの粘液を浴びた冒険者達は、装備している武具を次々と外していく。さらに軽鎧を外した冒険者達は、その下に着込んでいた服も肌着も脱ぎ始める。


「生身の体は溶けないようだが、これじゃ攻撃できない」


「魔法攻撃だ。魔法を使え!」


魔術師の冒険者達は、一斉に呪文の詠唱を始めると次々に魔法を放つ。


その魔法によりなめくじの体に無数の攻撃痕が残るはずであった。だが、魔法は透明な氷の板の様なものに遮れてなめくじの体にまで到達できない。


しかも、その氷の板の様なものは、魔法を放った者に対して魔法を撃ち返す芸当までやってのけた。


自身が放った魔法を撃ち返され、その身で自身の放った魔法の痛みを感じた魔術師達は、次々と地面に倒れていく。


「リフレクションだと!」


「なめくじがリフレクションを使えるのか!」


「こっちも魔法防壁を張れ。その後ろから魔法攻撃だ」


魔術師達は、魔法防壁を張るとその後ろに並び魔術師達が魔法を次々と放っていく。


魔法は、なめくじのリフレクションにより魔法を放った魔術師の元へと返っていく。だが、今度は魔法防壁を張ってあるため、そう簡単に倒される事はない・・・はずであった。


魔法防壁を張った魔術師達は、リフレクションにより撃ち返された魔法を魔法防壁で受けた瞬間、何かの雷撃魔法を浴びたかの様に全身麻痺にかかると次々に地面に倒れていく。


「まっ、まじか。反射された魔法に麻痺効果が追加されてるのか」


「物理攻撃が効かねえ。魔法攻撃も反射される。しかも魔法防壁を張っても麻痺だと」


「無理だ。あのなめくじに攻撃は通じねえ」


魔術師達は、既に殆どが自身が放った魔法か、麻痺を付加された魔法を受けて倒されていた。


この時点でなめくじに攻撃を開始してからたったの2分程の出来事である。




「ねっ。あのなめくじはね。精霊界にいる神獣と呼ばれるとても珍しいなめくじなんだ」


妖精は、自慢げに自身も体験した通りの結果に満足してしまう。


「確かに凄い。剣も熔かすし魔法も反射するなんて」


カルは、その時”はて?”と疑問を持った。カルの盾も同じ様なことができる。多少は違うがそれにしてもに通い過ぎている。


「実は、昔だけど精霊界で僕もあれにちょっかいを出した事があってね。それで・・・僕でも勝てなかったんだ。悲しいけど全くと言っていいくらい歯が立たなかったよ」


「えっ、裁定の木の精霊さんがですか」


「うん。あれは神獣だからね。恐らくだけど龍でも勝てないと思う。あれは、そんな存在なんだ」


「でも、そんな神獣がなんでお猫サマのところに来たんだろう」


「まあ、神の見えざる手が働いてるんじゃないかな」


「お猫サマって実は、神様に気に入られてるの」


「ははは。僕もそう思うよ。神獣を召喚できるんだからね」


カルと裁定の木の精霊がそんな事を話している中、残った冒険者達は、徐々に下がり始める。もう手の施しようのない状況に逃げの一手という雰囲気である。


だが、この冒険者の中にも強力な魔術師が何人もいる。彼らはAランクの冒険者で広範囲せん滅魔法を得意とする者までいた。


「皆下がれ。エクスプロードを放つぞ」


その魔術師がそう言った瞬間。倒れている仲間の冒険者を担いで一斉に後方に下がり始める冒険者達。


「まさかこんな場所でこの魔法を放つ事になるとはな」


その魔術師が詠唱を始めると、残った魔術師達が一斉に魔法防壁の準備を始める。冒険者達のこういった場面での連携は実に素晴らしい。


魔術師の詠唱が終わると同時に後方に下がった他の魔術師達が複数の魔法障壁を展開する。


そうでもしなければ、このエクスプロードの魔法による爆炎でこの一帯は火の海となり、自分達でさえ命が危うくなる危険な魔法である。


魔術師の頭上にエクスプロードの魔法が完成し、小さな赤い炎の塊が放たれる。


炎の塊は、なめくじの体めがけて直進して大爆発・・・しなかった。


「なっ、何だと。まさかエクスプロードを吸収したのか。くそ、もう一度だ、もう一度エクスプロードを放つ!」


魔術師は、再度の詠唱を始めるとエクスプロードを放つ。だが、先程と同じで何も起きない。


「なっ、なぜ何も起きない。あのなめくじはいったい何なのだ!」


魔術師の叫び声が湖にこだまする。


なめくじは、もっさりと動き出すと、距離を置く冒険者めがけて口から何かの粘液を小刻みに放ち始めた。それも動きがもっさりな割に口から放つ粘液の速さは以上なほど早い。


「うわっ。なんだこの粘液は」


「粘液を吐き出す速さが異常なほど早いぞ」


「おい、剣と鎧が熔けていく」


そう。なめくじに直接攻撃を行った冒険者達がなめくじの体に付着している粘液に触れたあらゆる物を溶かしたのと同じで、なめくじの口から放たれる粘液も武具や衣服を簡単に熔かしてしまう。


「粘液が固くなっていく。身動きができない」


「かっ、体が動かない」


「この粘液を顔に付けるな。息が出来なくなって窒息死するぞ!」


もう、この時点で冒険者達は、パニック状態である。物理攻撃が効かず。魔法攻撃も効かない。なめくじが放つ粘液で武具が熔け出し、その粘液は時間が経つと固まり身動きすらできなくなる。


龍とは異なるが明らかに龍と同等、いやそれ以上の生物である事がこの惨状に居合わせた冒険者達は、その身で体験する羽目となる。


気が付けば、その場にいる殆どの冒険者達がなめくじが飛ばした粘液で身動き出来なくなっていた。




カルは、なめくじと冒険者との戦いの最中に湖畔に打ち上げられた水龍に近づき、水龍のケガの状態を何度も確認する。


「子供を残して自らが囮になるなんていけない事です。僕は、あなたにそれが言いたかったんです」


水龍は、大きな口を開けて何か言いたそうではあった。だが魔法攻撃を何度も受けたせいで瀕死の状態である。もういつ死んでもおかしくない。


「あなたには、親として水龍の幼体が大きくなるまで世話をしてもらいます。僕が住んでる城塞都市のすぐそばに大きな湖があります。そこで子育てをしてください」


カルは、そう言うと腰にぶら下げた鞄から小さな瓶を出し、瀕死の水龍の大きな口をこじ開けてその瓶の中の液体を流し込む。


すると、傷ついた水龍の体はあっという間に治りしかも徐々に体が小さくなっていく。


そうカルが使った瓶の中に入っていた薬は、赤いラピリア酒(薬)であり、お猫サマが100年の時を進めたあのお酒(薬)である。


気が付けば、水龍の体は幼体くらいの小ささになっていた。


カルは、小さくなった水龍を抱きかかえると馬車へと歩き始める。




「まて、その水龍をどこに連れて行く」


カルを呼び止める冒険者の姿があった。その冒険者から感じるオーラは、他の冒険者とは明らかに違っていた。


「セスタール湖!そこで水龍の親子には、静かに暮らしてもらう」


「俺たちがその水龍を狩らなくても、誰かが必ず狩るぞ」


「いや。僕の領地では絶対に狩らせない」


「僕の領地だと。お前の様なガキが何を偉そうに。まさかお前がその城塞都市の領主の子供か」


「いや。僕は、魔王国・城塞都市ラプラス領主。カル・ヒューイ。覚えていて欲しい」


「その歳で城塞都市ラプラスとやらの領主か。親がバカ貴族なら子供もバカだな」


「どうとでも言って構わない。僕は、城塞都市ラプラスでお前達を待っている。もし、僕と戦いたいのならセスタール湖で相手をしてやる」


「ほう。お前の領地内であれば、俺を殺しても誰も文句は言わないってことか。面白い。実に面白いよ。ならば、お前の話に乗ってやる」


その冒険者は、剣を腰の鞘に戻すと、笑みを浮かべながらカルとの話を続ける。


「お前の領地で殺し合いをしよう。どちらかが死ぬまでだ」


「僕は死にたくない」


「忘れるな。俺の名前は、Aランク冒険者バランだ」


「僕は、カル・ヒューイ。Fランクの神官だ。とても弱いぞ!」


「なっ、Fランクだと。FランクがAランクに喧嘩を売るのか!」


「そうだ。この無謀な漢気をほめてみろ」


「・・・お前バカだろ」


「お前もな」


「とにかく、俺の名前を忘れるな」


「いや、直に忘れる」


「おぼえとけ!」


「嫌だ」


「だから何が言いたいんだ!」


「忘れた方が人間幸せになれることもあるんだよ」


「いや、俺はお前と死闘がしたいんだ」


「Aランクの冒険者のくせに、Fランクの神官と戦うのか。とんでもないやつだな」


「なっなんだと!」


バランは、鞘に戻した剣に今一度手をかけた。だが、カルの横にいる巨大ななめくじの蝕しの様な目がバランの動きをじっと見つめている。これではAランク冒険者のバランもうかつに剣を抜けない。


「くそ。覚えておけ!」


「だからすぐに忘れるんだって」


「ああっ、面倒くさいやつだな」


カルは、おバカな問答を繰り返す事でわざと挑発を行った。このまま挑発に乗って来たら金の糸で身ぐるみはがして盾のダンジョンに放り込めたのだ。


だが、さすがというべきかAランクの冒険者ともなるとそう簡単に挑発されない。




カル達は、馬車を走らせると湖を後にする。湖畔には、なめくじ精霊の粘液が固まり身動きが取れなくなった冒険者達の屍?が死屍累々と転がっていた。


「頼む。だれかこの粘液を取ってくれ。固くて身動きできないんだ」


「俺も頼む。それにこの粘液のせいで武具も服も熔けちまった」


「あー。裸でどうやって街まで帰ろうかな」


「こんな事になるなら、水龍狩りに参加しなけりゃよかった。とんだ大赤字だ」


湖畔に転がされた冒険者達の嘆き声が延々と続く湖の湖畔であった。


この話は、世の中にはあまり広がる事はなかった。なぜならば、なめくじに負けた冒険者と笑われるだけであるから。


自身の恥じを晒す冒険などいるはずもない。だからこの水龍狩りに参加した冒険者は、口が堅くこの話を誰にも話す事はなかった。


カルは、馬車に積んだ水を張った樽の中から顔を出す2体の水龍の幼体を見てニンマリとしていた。


カルは、水龍を飼い猫の様に可愛い存在として認識していた。


そんな折、カルがふと樽の中の水龍から目線を上げるとそこには、いつもならあまり姿を出さない者が顔を見せていた。


それは、精霊ホワイトローズである。精霊ホワイトローズは、カルが持つ大盾の中にあるダンジョンの管理者であり、魔獣を生産するプラントを持つ精霊である。


精霊ホワイトローズは、水を張った樽の中の水龍をじっと見つめながらこう切り出した。


「カル。水龍が欲しいの」


「えっ、水龍ですか」


「そうなの。中級ダンジョンの最下層で捕まえた地龍は、他のダンジョンから引き合いが多いいの。だから商品をもっと拡充したいの」


「でも、もしこの水龍を渡したらどうなるの」


「解体して遺伝子操作をするの」


「解体?つまり殺すってこと」


「そうなの」


「それはダメだよ。いくら精霊ホワイトローズさんの頼みでも聞けない」


「どうしてもなの」


「どうしても」


「ならこうするの」


精霊ホワイトローズは、針の様なものを取り出すと水龍の幼体にプスリと刺してしまう。


”ピーーーー”。


針を刺された水龍は、痛みのあまり水を張った樽から飛び出してカルの胸へと逃げ込んで来た。


「えっ、何をしたの」


「水龍の血液を採取したの。この血液から遺伝子を調べて水龍を作るの」


「あまり無茶な事はしないでよ。水龍が怖がってる」


「次は、あの氷龍の血液が欲しいの」


「えっ、えーーーーーー。それは無理だよ」


「カルならできるの。待ってるの。いつまでも待ってるの」


精霊ホワイトローズは、そう言い残すとカルの前から姿を消していく。


カルは、考えてしまった。もし、水龍の幼体を盾のダンジョンの安全地帯に置いても、精霊ホワイトローズが何をするか分からないと。


ならば、カルの目が届くこの場所に水龍の幼体を置いておく方が安全ではないかと。


いまいち味方なのかそうでないのか分からない存在である。




お猫サマは、馬車の幌の上で膝を抱えてブルブルと震えていた。


「当分は、踊りも歌も封印にゃ。大嫌いななめくじがまた降ってきたら生きていけにゃいにゃ」


1度でも召喚された召喚獣は、死ぬまで召喚者と共に生きていく運命である。それは、神であっても例外ではない。


体長4mの神獣なめくじ精霊がパートナーに”なってしまった”お猫サマ。ある意味最強のパートナーを手に入れたのだが・・・嫌いなものは嫌いなのだ。頑張れお猫サマ。


ちなみに神獣なめくじ精霊はというと、とてつもなく小さくなりお猫サマの背中の毛にくっついていた。なめくじもお猫サマから離れる気は毛頭ないようである。

水龍の親子を助けたカル。そしてなめくじを手に入れたお猫サマ。


Aランクの冒険者バランが追ってくるなか、カル達は、城塞都市ラプラスへと戻ります。


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