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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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94話.氷の塔ふたたび(2)

続きとなります。


するとその塊がゆっくりと動き出し首の様なものをもたげてお猫サマの頭の上にその頭をのぞかせた。


それを見たメリルとライラ、それにエルフのふたりは冷や汗を流しながら後ずさりを始める。


だが、かれを見たカルだけは、目がきらきらと輝いていた。


「それは・・・氷龍にゃ」


「誰だ。わしの昼寝の邪魔をするのは」


お猫サマの得意げな顔のすぐ上から図太い声が響き渡る。


思わず図太い声を上げたそれに向かって振り向くお猫サマ。


「にゃ。氷龍。お猫サマにゃ。下級の精霊神をやってるにゃ」


「ほう、精霊神か。こんなところに珍しい」


「そうにゃ。この氷の塔はお猫サマが作ったにゃ」


「なんと。お主の仕業か」


「そうにゃ」


「いやな。近くを通りかかったっところ羽を休める丁度よいものがあると思ってな。以外と広いし居心地がよいので休んでおったのだ」


「いいにゃ。いいにゃ。どうせここには誰も来ないにゃ。なんならここを住処にするにゃ」


「ははは・・・。住処か。まあ、考えてもいいぞ」


「この塔を作ったお猫サマが許可するにゃ。好きなだけ居ていいにゃ」


「ときにそこにいる人族の子供はなんだ。それに妖精・・・いや、精霊か」


「ああっ、カルにゃ。この氷の塔が立っている精霊の森が燃やされていると聞いて森を助けに来たにゃ」


「ほう、精霊の森がいきなり元気になったのは、その子供のせいか」


「カル以外にもうひとり魔法使いがいるにゃ。その魔法で森が復活したにゃ」


お猫サマは、氷龍の耳元に顔を近づけると小さな声でなにやら氷龍に話始める。


「ほお。あれが”希望の種”か」


「しっ、声が大きいにゃ」


「あの話は、どれもことごとく失敗に終わったと聞いておったが、まだ続いておったのか」


「そうにゃ。もしかしたら最後の希望になるにゃ」


「それは、よいところで出会った。それにあの子供の頭の上にいる精霊。あれはなんだ」


「あれは、裁定の木の精霊にゃ。でっかい木が宙を浮くにゃ」


「ほう、あの木の精霊か。なるほど面白い輩が集まっておるな」


カルは、相変わらず氷龍の体を両手でぺたぺたと触って喜んでいた。


「そこの少年。こっちに来い」


「えっ、僕ですか」


カルは、お猫サマと氷龍がもたげた頭が並ぶ方へと歩きだし、氷龍の顔をまじまじと見つめる。


「ほう。人族のくせに肝が座っておるな」


「カルは普通の子供と違うにゃ。3つの城塞都市の領主にゃ。それに精霊の森を4つも育てたにゃ。妖精も街や村にいっぱいにゃ」


「なんと。こんな人族の子供がか」


「そうにゃ。この氷の塔の下に広がる精霊の森で5つ目にゃ」


「にわかには信じられんな。つまりそういう事か。やはり”希望の種”と・・・」


「しっ、声が大きいにゃ。その事は内緒にゃ」


「おっとそうであった」


「そうだ。ならば儂から送り物のひとつでもするか。ほれこれをやる。お守り代りくらいにはなるであろう」


氷龍が差し出したのは、氷龍の鱗であった。1枚の鱗の大きさは手の平程もある大きなもので、それは手に持っても殆ど重さを感じない程の軽さであった。


「あっ、いいにゃ。いいにゃ。お猫サマも欲しいにゃ。お猫サマにも、お猫サマにも」


氷龍がカルに差し出した鱗を見たお猫サマは、途端に氷龍の長い首を両手でゆさゆさと揺らしはじめる。


「分かった。分かったから首を揺らすな」


お猫サマのごね得によりもう1枚の鱗がお猫サマの手元へと渡る。


「そこの少年。この先もいろいろあるだろうが、あまり無理をせずに精進するのだぞ」


「はっ、はい。何のこ事か分かりませんが」


「ははは。それでよい。さて、儂はもう少しここで昼寝を楽しむとしよう」


そう言うと氷龍は、先ほどと同じ様に氷の塊の様になり、静かな寝息を立て始めた。


カルとお猫サマは、氷龍からもらった鱗を見ながら皆のいる方へとふり返ると、皆は先ほど上って来た階段のところで頭だけを出してこちらを見ている。


カルとお猫サマが歩いて戻って来ると、皆が慌てた様に話しかける。


「あれっ、龍ですよ」


「この世界で最強の生き物です」


「あんな恐ろしいものがこの塔の上にいるとは」


だが、カルとお猫サマはきょとんとした顔でまったく恐怖を感じてなどいない。


「氷龍は、怖くありませんでしたよ」


「そうにゃ。龍族と精霊神は、互助関係にあるにゃ。だから食べられたりしないにゃ」


「そっ、そうなんですか」


「そうにゃ。昼寝に丁度よいと言っていたにゃ。だから家にしてもいいと言っておいたにゃ」


「まさか、精霊の森に氷龍が・・・」


「もしかしたら精霊の森を守ってくれるかもしれないにゃ」


思わず天に祈りを捧げるふたりのエルフ。


「あの。おふたりが手に持っているものは・・・」


「これは、氷龍さんがくれた鱗です。軽くて氷みたいに冷たくて透き通っていて綺麗ですよね」


カルの言った言葉に思わずカルの顔をまじまじと見つめる面々。


「あの。カルさんは、氷龍の鱗の価値をご存知ないのでしょうか」


「えっ、この鱗って価値があるんですか。そういえば、氷龍さんがお守り代りだってくれたんですよ」


皆が思わず鱗を凝視してしまう。


「そうです。その鱗には、どんな攻撃も通じませんし、魔除けとしても絶大な効果を発揮します。その鱗には値段が付けられないと言われる程の価値があります」


「そうなの?」


「そもそも氷龍は、遥か高い山の上や極地の様な極寒の地にしか生息していません。だから滅多に出会うことがないのです」


「へえ、すごいものをもらったんですね」


そんな話をしている隣りでは、お猫サマが指の爪を伸ばして鱗に穴を開けていた。本来なら龍の鱗に穴を開けられる剣すら存在しないのであるが、それを自らの爪で氷龍の鱗に穴を開けてしまうお猫サマ。


「この穴に紐を通すにゃ」


お猫サマは、紐を通した氷龍の鱗を自らの首にかけて見せた。


「どうにゃ。これでお猫サマも氷龍の鱗に守られるにゃ。もうやらかす神ではないにゃ」


皆の目線がお猫サマの首にぶら下がる氷龍の鱗に集まる。


「ほれ、カルの鱗にも紐を通すにゃ」


「あっ、はいお願いします」


お猫サマは、簡単に氷龍の鱗に小さな穴を開けるとどこからか持ち出した紐を通してカルの首にかける。


「これでカルも氷龍の加護持ちにゃ」


「ありがとうございます」


「いいなー」


「私も逃げずにあそこに居ればよかった」


「いやいや。氷龍に会えただけでも凄い事です」




時たま吹く風にひらひらと舞う氷龍の鱗。その鱗の持ち主は、氷の塔の上で今でものんびりと昼寝を楽しんでいる。


カルが領主を務める城塞都市ラプラスの隣りに広がる精霊の森とは、また違った世界が広がる国境の精霊の森であった。



カル達が、塔の中にある魔法陣に乗るとふたたび魔法陣が光り出し、元の塔の下層へと戻っていた。


氷の塔の通路を出るとさっきまであったはずの通路への入り口は消えていた。


この氷の塔への入り口は、何か理由がないと現れないのではとそう思ったカルであった。




氷の塔から離れて霧が立ち込める精霊の森の中を歩いていく面々。すると木々の陰から2体の地龍の幼体がこちらを見ているのが見える。


「あっ、地龍の幼体です。生きていたようです」


「このまま大きくなって欲しいですね」


「はい。氷の塔の上には氷龍。精霊の森には地龍。龍に守られた精霊の森。それに復活した精霊と戻って来てくれた妖精達。それにこの森を復活していただいた皆さんに感謝いたします」


エルフ族の族長であるオースティンがカル達に向かって深々と頭を下げる。


「僕の街にも精霊の森があります。この場所は遠かったですが同じ精霊の森です。そこを守ることができて本当によかったです」




これ以降、精霊の森の周辺では、空を飛ぶ龍の姿が頻繁に目撃される様になる。


大国の軍隊が戦っても勝てない龍が住む森は、周辺国に絶対に入ってはならない禁忌の森として広まっていく。


最初、精霊の森を助けたいという思いから始まったこの旅は、精霊の森を復活させ、巨大な氷の塔を出現させ、氷龍の住処を作り幕を閉じることになった。


氷龍からお守りとして鱗をもらったカル。駄々をこねて鱗をもらったお猫サマ。


神様なのに子供の様なお猫サマが以外とキュートです。


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