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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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90話.精霊の森の魔石洞窟

仕事が忙しくなってきましたので投稿時間が遅くなったり、土曜日、水曜日という投稿日が変わるかもしれませんがご了承くださいませ。


体を屈めて岩の割れ目に入ると洞窟内はほんのりと明るい。


「この洞窟の入り口付近にも魔石はあったのですが、全て冒険者達に掘りつくされてしまいました。それでも小さな魔石は残っているので魔石が放つ光により僅かですが灯りのかわりになります」


狭い洞窟内は、あちこちに杭を打ち込んだ痛々しい跡が無数にあり無理やり魔石を採掘したという状況が手に取る様に分かる。


「この洞窟の奥には、幻惑魔法をかけてありますので、この先には誰も入ることはできません」


エルフ族の族長のオースティンは、いくつもの幻惑魔法を解除しながら魔石洞窟を奥へ奥へと進んで行く。


「この先が、魔石洞窟の本当の最深部になります」


カル達は、洞窟の壁面の上部へと抜けた。そこで目にしたのは、地底に広がる広大な空洞とその壁一面に広がる無数の魔石。しかも魔石の色も様々で洞窟の壁や天井に無数の宝石を散りばめた様な光景が広がっている。


「こんな世界が地底にあるんだ」


「綺麗です」


「凄いな。これで武具を作ったら、いったいどんな武具が作れるのか」


皆が魔石に見とれている中、カルは洞窟の底に目をやると何か小さなものが動いている様に見えた。多数の魔石により灯りがある様に見えるとはいえ暗い洞窟の中である。目を凝らして見なければ、それが何であるか分からない。


「あの・・・、洞窟の中に何かいませんか」


「ほう、よくわかりましたね。あれは、地龍の幼体です。多数の魔石が生じる地には、どこからともなく地龍が生まれるというお話があるのですが、私もあの地龍を見るまではその話しを信じられませんでした」


カルが目を凝らして地龍の幼体を見ていると、動いているものがふたつある事に気が付いた。


「あれ、ふたついませんか」


「えっ、待ってください」


エルフ族の族長のオースティンも目を凝らして魔石の広がる洞窟の底を凝視する。


「ほっ、本当ですね。確かに2体の地龍です」


まだ、人族の子供程の大きさでしかない地龍ではあるが、このまま育てば数百年の時を経て5メートルを超える巨体に成長する。


「もし、この地龍が冒険者に見つかったら・・・」


「恐らく、武具の材料にされるか、王国に売り飛ばされてしまいます」


「それは避けたいですね」


「そう言っていただけると助かります。我々は、魔石をそれほど必要としていません。ですのでこの魔石洞窟は、埋めてしまっても問題ないのです」


「でも、この洞窟を埋めてしまうと地龍さんはどうなってしまうのでしょうか」


「実は、探査魔法で調べたのですがこの魔石洞窟は、他の魔石洞窟に繋がっています。地龍は、いくつもある横穴を使ってあちこちの魔石洞窟に移動しているようです」


カルは、城塞都市アグニⅡの近くにある通称”中級ダンジョン”のダンジョンマスターが最下層の守りの要として出現させた地龍を思い出していた。あの時は、全て盾の魔人に飲み込まれてしまい、その後の地龍がどうなったのかは不明であった。


既に洞窟内の魔石には興味が薄れて地龍の幼体に興味が移ってしまったカル。2体の地龍の幼体は、じゃれあっているのかお互いに白い腹を見せ合いながら楽しそうに遊んでいるいるように見えた。


「あの地龍の親はいるのでしょうか」


「それが、親の地龍を見たことは一度もないのです。しかも他の魔石洞窟に繋がる横穴の大きさも、あの幼体の体ほどしかないのでここには地龍の親はいないと考えています」


「親はいないけど元気に育っているんですね」


「そのようです」


「どもこんな地底で何を食べているんでしょう」


「あの地龍は、魔石を食べているようです」


「魔石ですか」


「はい、精霊の森は魔祖が濃いので魔石を生みやすいのですが、それを餌にしているようです」


今、オースティンが言ったある言葉に何か引っかかるものを感じたカルは、その言葉をもう一度思い出してみる。


”あの地龍は・・・”と言ったはず。ならば、他の地龍はどうなんだろうという疑問に直にたどり着く。


「さっき”あの地龍は、魔石を食べている”と言いましたよね。では、他の地龍は違うものを食べるのでしょうか」


「よくお気づきになりましたね。私が聞いた話では”ミスリル”を食べる地龍や、”鉄鉱石”を食べる地龍もいるそうです」


「もしかして、この魔石洞窟の魔石を地龍が全て食べてしまうんでしょうか」


「いえいえ、魔石を食べると言ってもそれほどの量は食べないようです。それに地龍が食べる魔石の量より、この精霊の森が生み出す魔祖により生まれる魔石の方が多いんですよ」


「へえ。精霊の森ってすごいんですね」


「はい。ところが冒険者の方々は、あるだけ魔石を盗ってしまうので直に無くなってしまうのです」


「そんなあ、冒険者って強欲ですね」


そんな話をするカルとオースティンの元にふたりのエルフの男が慌てた様子でやって来た。ふたりは、オースティンの耳元で何かをささやくとオースティンの表情が急に険しくなっていく。


「どうしました」


「はい、両王国の本隊が動いたようです。我々と戦った部隊の生き残りがいたようで本隊に連絡を入れたのでしょう」

。双方とも5000人程の規模のようですが、その後方に騎士隊が控えています」


「さすがにカル様が魔人使いであっても、両王国合わせて1万人の軍勢を相手にするのは無理だと思います」


オースティンの話を聞きながら魔石洞窟を出るカル達。


確かにオースティンに言われた通りカルもそれだけの数の敵と戦ったことはない。しかも今回は、精霊の森を挟んで両方から挟み撃ちにされる形になる。


この精霊の森は、山に囲まれた盆地の様な場所にあり、両王国に隣接する部分の山の標高が低くそこから攻め込まれると守る手段はない。


こういった地形での戦いは、攻め易く守り難いと城塞都市ラプラスの図書室にあった戦場での兵法の書にあったとカルは記憶していた。


しかも精霊の森には城も砦もない。あるのはエルフ族の村のみ。魔石洞窟から出た後、カルはこの先どうすればよいのか考えあぐねていた。


すると、ずっとカルの近くを妖精の姿で飛んでいた裁定の木の精霊がさらっと口走った。


「やっと僕の出番かな」


カルは、何かを忘れていた気がしていた。それを今になってやっと思い出したのだ。


「あっ、そうでした。そう言えば裁定の木の精霊さんは、こういった事を裁定するためにこの世界に来たんですよね」


「この世界にやって来たのは2度目だけど。前回の様に問答無用でっていうのはしないつもり。一応相手とも話し合いの場を持ってみるけど。国王が人の話を聞く耳を持っていてくれるといいな」


「それに、今回は協力者を頼んでおいた。まあ、その者が説得してくれたら事は簡単なんだけどね」


裁定の木は、カル達にこれから何をしようとしているのかを淡々と話始める。カル達もその話を聞きながらただ返事を返すだけである。


カル達にこれからの行動について話し終えると裁定の木の精霊は、精霊の森の上に自らの分身である裁定の木を出現させた。


城塞都市ラプラスの城壁と同程度の幹の太さを持つ巨木。それが精霊の森の空にいきなり現れて雲の様にフワフワと浮いている。それを見たエルフ族の面々は、殆どの者が気を失い次々と倒れていく。


そんな中、気が付くとカル達とエルフ族の族長であるオースティンは、裁定の木の上にたたずんでいた。


「ここは・・・」


「裁定の木の上です」


「えっ、いつの間に・・・」


「これより裁定の木は、自らの行動により精霊の森を戦場と化した両王国に対して裁定を下します」


そう宣言をすると裁定の木を徐々に空高く舞い上がらせると、精霊の森、ヴァートル王国国境、ヴィシュディン王国国境が見渡せる空の高さへと向かう。


精霊の森を囲う様に連なる山々の向こう側には、ヴァートル王国とヴィシュディン王国の砦、それに両王国の軍勢が隊列を組んで精霊の森へと進軍する様子がうかがえる。


裁定の木の精霊は、いつの間にか妖精から老人の姿へと変わり手にはそれらしい木の魔法杖を持っていた。さらに白い髪の毛と白いあごひげ、さらに白いローブま着込んでいていかにも神様全とした風情を醸し出していた。


「精霊さん。その姿が本当の姿なんですか」


思わずカルが問いかけると・・・。


「雰囲気ですよ雰囲気。物事にはそれらしい姿と身なりというものがあります。これから両王国に裁定を下すんですからこちらも覚悟というものを示さないと」


意外と変にこだわる面倒な精霊だと思わず思ってしまうカルであった。


「こほん。では裁定を下します。まずは、両王国の砦を閉ざします。ほれ!」


裁定の木の精霊のなんだか軽い掛け声とともに、精霊の手から白い煙の様なものが両王国の砦へと向かう。


煙は、砦の上空に差し掛かると巨大な厚い雲となり白いものを振りまき始め、雲の厚みはさらに増しさらに広がりを見せはじめる。


少しばかり暑さを感じる気候の最中、その白い小さな粒は徐々に多く強くなり砦の周囲はあっという間に白い草原へと変えていく。


「あれは、まさか・・・雪ですか。この暖かさの中で融けない雪を降らせているんですか」


「こういった事はね。どかんと大きな攻撃魔法を放つより、自然現象を延々とやった方がじわじわと精神に響くんだ。恐らく砦の中は、極寒の地となってると思うよ」


「いや、でもこの季節に冬用の衣類などないはずです。砦の中に居る人達は皆凍えてしまいます」


「そうだね。それが目的だからね。あの砦の中にいる連中は、村や町から人々を集めて戦わせている連中だ。人の命をなんとも思っていない奴らが砦の中でぬくぬくとして”死ね”って命令するなんて我慢できない」


「でっ、でも」


「でもはなし。精霊の森を焼いて戦場にしようとした人達だ。いくら国王の命令だからって命令された部下は、何をしても許されるなんてそれは出来ない相談だ。それはカルにも理解できると思うけど」


「・・・・・・でも」


「まあ、手は打っておいたけど。使用人には、雪が降る前に砦を出るようにと心に話しかけておいた。それでも砦に残った人達の面倒までは見切れない」


カルは、何だかやりきれない気持ちで一杯であった。いくら精霊の森を焼いてエルフ族の人達に危害を加えたとはいっても、目の前で凍え死ぬ人を見過ごすのは辛い。


裁定の木の精霊が出現させた厚い雪雲は、雷を発しながら吹雪を降らせ砦を襲う。まだ、雪雲が現れてからいくばくの時も経っていないというのに既に両王国の砦は、降り積もった雪で殆ど姿が見えなくなっていた。


さらに復活した精霊の森へ向かう王国軍の隊列は進軍を止めない。それは、後方にいる騎士隊が兵士達を煽り、時には剣を向けて進軍を促しているからだ。


あの隊列が精霊の森に入ればまた森に火を放つだろう。だがそこにいる兵士は、領主命令で集められた領民。その兵士を攻撃すれば、村や町に残る家族がきっと悲しむ。


そう思と兵士を攻撃してほしくはない。だか、それでは精霊の森が再び火の海になる。


「さて、次は精霊の森へ進軍してくる連中を・・・」


「まっ・・・」


カルがそう言いかけた時、カルよりも先に声を上げた者がいた。


「お待ちください」


裁定の木の精霊とカルの言葉を遮った者。それは、エルフ族の族長であるオースティンである。


次回は、お猫サマが盛大にやらかします。


「お猫サマサマ、お猫サマサマ、お耳ぴくぴく、シッポふりふり、いつも可愛い招き猫・・・」


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