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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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85話.カルの冒険と子供達の冒険

カル達は、ロイとホリーが連れて来たエルフに対面します。


カル達が城塞都市アグニⅡからラプラスへと戻り精霊の森の入り口にある作業場の前に荷馬車を止める。


既に昼近くになり今朝の酒樽の出荷は終わり、お猫サマのところで雇っているロイとホリーが手綱を握る馬車も酒樽を積んでサラブ村へと向かっていた。


カルが作業場の扉の鍵を開け、壁に貼ってある予定表を見てみるとロイとホリーが書いたメモが張ってあった。


”せいれいのもりをたすけてほしいというえるふのえれんさんがきています”。


ロイもホリーも字の読み書きを始めたばかりのため、カルには、ロイとホリーが書いた字が何やら魔法の呪文の様にも見えていた。


だが、誰かがこの作業場にいるというのは理解できた。でも作業場には誰も居ない。ふと作業場を見渡すと積んである酒樽が1つだけ違う場所に置いてあることに気が付く。


その酒樽をよく見ると紙が貼ってありこう書かれていた。


”酒樽の封が切られて中の酒が少ないようです”。


恐らく酒樽を馬車に運んだ荷積み屋の人が気付いて酒樽を分けて置いておいたようだ。


メリルがその酒樽を少しだけゆすってみると・・・。


”タプンタプン”。


そんな音がした。そう酒樽にお酒が隙間なく入っていると”タプンタプン”という音はしない。


「カル様。この酒樽のお酒、どこか漏れてるんでしょうか。中身のお酒が少ないようです」


カルも酒樽をゆすってみたが確かに音がする。


「まあ、酒樽は余分に運び込んであるから大丈夫なはずですけど、メモにあったエルフのエレンという人はどこにいるのかな」


ふと、何かの物音に気付いたライラが作業場の屋根裏部屋へと続く階段を上っていく。


「カルさん。屋根裏部屋って誰かいるって聞いてます?」


「いえ、誰もいないはずですよ」


「でも誰かの寝息の様な音がしますよ」


「えっ、待ってライラさん」


ライラが作業場の屋根裏部屋へと上がる階段を途中まで昇ったところで、カルが慌ててライラを制する。


カルは、大盾を構えるとライラの前へと進み出と屋根裏部屋の扉をゆっくりと開ける。さらにメリルも駆けつけると3人で屋根裏部屋の中へそっと入っていく。


すると、屋根裏部屋の床には女性用の武具と服と下着が散乱していた。さらにベットの上を見ると服も着ていない全裸の女性がひとり寝息を立てて気持ち良さそうに寝ていた。





「申し訳ありません。まさか、あの薬がこんなに美味しいお酒だとは思わず・・・その、思わず飲んでしまいました」


昨晩、ロイとホリーの馬車でこの作業小屋に連れて来られたエレンは、酒樽に手を付けない様にと言われたのにもかかわらずあまりの良い匂いに思わず酒樽の封を切りお酒を飲んでしまった。


その後は、もうお酒を飲むのを拒むこともできずに明け方まで飲んでいたというのだ。エレンは、未だ酔いがさめずほろ酔い気分であった。


「飲んだお酒の・・・その薬代は、この体をいかようにでもしていただいて構いません」


「まあ、飲んでしまったものは仕方ないです。その精霊の森を助けて欲しいという話を聞かせてもらえますか」


「はい、実は・・・」


エルフ族のエレンは、自身が住む精霊の森で起こった事件について語り始めた。




「確かにそれは酷い話です。ですが、精霊の森の精霊にこの薬を飲ませても、話はそれで終わりになるとは思えませんね」


「そうですね。結局、その国境を接するふたつの国の争いが終わらないと、何度も同じことの繰り返しですよね」


「誰かがその国境での争いをやめさせないと・・・」


カル、メリル、ライラの3人は、腕を組んで考え込んではみるものの、なかなか答えが出ず渋い顔をしていた。するといつの間にか1体の妖精が作業場に入り込んでいてその話を盗み聞いていた。


その妖精の存在に気が付いた3人は、もしやと思いその話を続けることにした。


「もし、僕達がその場所に行って精霊に薬を飲ませるなりライラさんの魔法で治してあげるなりすれば、精霊の森はまた復活すると思います。ですが、誰かその場の争いを止められる人はいないかな~」


「そうですよね~」


「そんな凄い力の持ち主はいないかな~」


少しあからさまな小芝居をうってみると、カルの前に小さな妖精が現れこう切り出した。


「なら僕がなんとかしてあげるよ。僕は妖精の姿をしているけど実はあの山の上に立つ裁定の木の精霊なんだ」


「「「うん。知ってた」」」


カル、メリル、ライラは声を揃えてそう裁定の木の精霊が化けていた妖精に言った。


ちなみにお猫サマはというと、相変わらず馬車の幌の上で気持ち良さそうに昼寝を楽しんでいる。




カルは、領主の館に戻ると早馬を出してもらい、事のいきさつを書いた手紙をルルへと送った。


手紙がルルの元へと届くのは早くて今日の夜遅く。手紙の返信がカルの元へ届くのは明日の夜になる。その時間を利用して旅の支度をしなくてはと考える面々であった。







同じ日、城塞都市ラプラス近くのとある村。


9才の人族の男の子であるアーティーの家では、母親がパンを焼いていた。父親は、家具職人で村にある家具工房に朝飯を食べるとすぐに出向いて家具作りを始める。


母親は、小さな畑で野菜を栽培していた。野菜は、家で食べるものと家計の足しになる程度のものを作り村の農業組合を経由して城塞都市ラプラスへと卸していた。


アーティーは、小さなベットでいつも妖精と一緒に寝ている。妖精は、寝相の悪いアーティのお腹の上に器用にのっかり大の字になりながらアーティーと共に寝息を立てていて、日が昇り始める頃に母親に起こされる毎日である。


城塞都市ラプラスやその周囲の村々に領主が黄色いラピリアの実が成る木を植え始め、その実を食べてからというもの村人にも妖精の姿が見えるようになった。


最初、妖精達の存在を怪訝に感じていた村人も、妖精達のおかげで畑の作物の収穫量がみるみる増える様子を見て、あからさまに態度が変わり妖精達を村の一員の様に扱い始めた。


今ではどの家にも妖精が家族の一員として一緒に暮らしている。


アーティーは、母親に起こされると妖精と一緒に焼き立てのパンとスープを頬張る。妖精の頬は、どんぐりをため込んだリスの様に膨らんでいた。その様を見て笑いながら朝食を食べる風景が最近の日常になっていた。


朝食を食べたアーティは、母親と一緒に小さな畑へと向かい雑草を取り、家で食べる野菜を収穫する。形のよい野菜は、母親が村の農業組合に持っていき少ないながらも生活費の足しにしている。


妖精もアーティーと一緒に畑の雑草取りや水撒きを手伝っていた。妖精は、美味しいご飯を食べさせてくれるお礼にと畑の手伝いをしているのだが、この行為が畑の作物の実りを良くしていた。


さらに数日前になるが、城塞都市の兵士達が村人達に慌てた様子で領主が植えたトレントの話を伝えに来た。すると間もなく村の畑に黄色いラピリアの実を成らせたトレントが現れた。


トレントは、木の姿をした魔獣で森に現れては人を襲うのだが、このラピリアの実を成らしたトレントは、人を襲う事もなくそれどころか人の言葉を理解し話までする。


そのトレントを見た村人は、最初は驚いたもののそれを植えたのがまたまた領主であると知るや妙に納得していた。




アーティーは、家の畑の手伝いが終わるとラピリア・トレントと別れて村の外れにできた小さな学校へと向かう。もちろんアーティーと妖精は学校に行くのも一緒だ。


最近になって村にできた小さな学校は、大人でも子供でも自由に行って文字の読み書きを教えてもらえる。しかも子供に限りお昼になるとご飯も出してくれてしかも無料とあっては村の子供達全員が通う場所になっていた。


最初、アーティーが本に書いてある文字を読み書きする様を見ていた妖精は、次第にそれを真似する様になり、最近では文字を書いて簡単なあいさつくらいは出来る様になっていた。


学校に通う子供達の殆どが妖精と共に暮らしているため、机の上には本と紙とペンと妖精というおかしな組み合わせが普通の光景となっていた。


学校での勉強は、午前中で終わりお昼ご飯を妖精達を交えて皆で食べると、子供達は一斉に外へと遊びに行ってしまう。


その後の学校は、もう少し年長の子供達に仕事に役立つ技能を教えたり、家事をしている主婦達が集まり雑談を交えての勉強が始まる。


夕方になると仕事を終えた男達が学校に集まり、勉強と称して大人達の交流を始めるのだ。




さて、学校から出てきたアーティーはというと、歳が同じ村長の家の三男坊であるバイロン。アーティーの向かいに住む次女のジェナ。アーティーの家から少し離れた家に住んでいる長女のパメラと一緒に遊んでいた。


村長の家の三男坊であるバイロンは、アーティーと同い年でいつも何をして遊ぶかを決める役目だ。だが、悪く言えば命令調で人の話を聞かないちょっと困ったちゃんである。


アーティーの向かいに住む次女のジェナは、アーティーより1歳年下だがいつも積極的でバイロンと対立することが多い。


アーティーの家から少し離れた家に住んでいる長女のパメラは、アーティーより1歳年上だが、大人しくていつも皆について歩いていた。


4人は、村はずれの小高い丘の上へとやって来た。目の前には広大なセスタール湖が広がる。


皆、馬車に乗り家族で行ったことのある湖ではあるが、子供の感覚では馬車に乗るとすぐに湖に到着した印象しかなく、目の前に広がる広大すぎる湖までの距離がいまひとつはっきりしなかった。


4人は、そんなセスタール湖を眺めてはいつか自分の足であそこまで行ってみたいと思いを馳せていた。



そんな時、バイロンがこんな事を言い出した。


「セスタール湖まで馬車で行けばすぐだけど、僕達の足で行ったら遠いのかな」


「バイロンは、足が遅いから無理だよ」


バイロンの父親は、村長をやっていて他の家よりも裕福であった。そのためかバイロンの体格も少しぽっちゃりしていて力は強いが走ったり歩いたりするのは、他の誰よりも遅かった。


「そんなことないよ。僕だってあそこくらいなら歩いて行けるさ」


「どうだか」


「なんだよ。僕の足はそんなに遅くないぞ」


「そんなに言うなら湖まで競争しようか」


ジェナは、バイロンより1歳年下ではあるが村の同い年の中で1番足が速いと評判である。


「いいよ。でも僕が勝ったらなんでも言う事を聞くんだぞ」


「いいわよ。あんたなんかに負けないから」


そういうとバイロンとジェナは、丘を走って降りるとセスタール湖への街道まで走しはじめた。


「また始めたね」


「いつもふたりは競争するよね」


「でも湖まで馬車でもかなりあるのに、僕達の足でなんか行けるのかな」


「そうだよね。でも少し歩いたら疲れたから帰るって言い出すんじゃない」


「そうだよね。いつもの事だもんね」


アーティーとパメラは、いつもの様にふたりの後を追いながらセスタール湖へと向かった。




バイロンとジェナは、最初のうちは走ったり早歩きをして抜きつ抜かれつを繰り返していたが、歩き始めて1時間もするとだんだんと歩く速さも遅くなり、いつしか普通にあるくよりも遅くなっていた。


「喉か湧いたね」


「この辺りにラピリアの木はないのかな」


「村にはあちこちあるのに、街道の脇にはないんだね」


4人は、喉の渇きを覚えながらもセスタール湖へ向かう街道を歩き続けた。


さっきまでいた村はずれの丘も既に見えなくなり、近くには人が住んでいそうな村も家も見えない。


「ねえ、そろそろ帰ろうよ」


「そうだよ。日が傾いてきたよ」


「湖だって全然近くならないよ」


目の前に広がるセスタール湖は、広大すぎてあまり遠近感を感じない。だが、村から馬車で半日近くかかる湖である。子供の足で歩いたところで到着するはずもない。


だがバイロンとジェナは、競争をやめなかった。いつもならすぐに飽きてしまうふたりだが今日に限っては歩くことを止めないのだ。


そして3時間も歩いた頃、4人の疲れも溜まり足が棒の様になり痛み出していた。


「ねえ。もうやめようよ。湖が全然近くならないよ」


「そうだよ。やっぱり馬車じゃなきゃ無理だよ」


「あんた達弱虫ね。私はまだまだ大丈夫よ」


「ぼっ、僕だって大丈夫だよ」


アーティーとパメラの足は既に痛くて歩くのもやっとの状態なのにふたりはむきになって歩くのをやめない。


そんな時、4人の前に1体のスライムが現れた。スライムは、魔獣としては最弱であるがそれは対処方法を知っている大人に限っての話である。


スライムに関して何の知識も対処方法も知らない子供達は、スライムにとって格好の餌である。現に村でも親が目を離したすきに小さい子供がスライムの餌食になった話は、どこにでも転がっていた。


「スライムだ」


「みんなスライムだよ」


「ぼっ、僕がやっつける」


そう言い出したバイロンは、道端の大きな石を持ち上げるとスライムに向かって投げようとした。だが、スライムの動きは俊敏で気が付けば、バイロンの目の前にまで迫っていた。


「わーーーー。スライムが来た!」


思わずスライムの俊敏な動きに動揺して持ち上げた大きな石を地面に落としてしまうバイロン。だが、落とした石はうまい具合にスライムの上へと落ちていた。


驚いて尻もちを付くバイロンだが、アーティーの掛け声と共に地面に付いた手を引かれて思わず走り出す。


「早く逃げよう」


「「「うん」」」


4人は、力の限りセスタール湖とは反対の今来た道を走って戻り始めた。一生懸命に走った4人だったが後ろを見て驚いた。


さっきバイロンが石を落としたスライムが4人を追って飛び跳ねて来たのだ。


「スライムが追って来てる!」


動揺した4人は、必死になって走る。だが、走るそばからバイロンとジェナは、石につまづき足を滑らせて転んでしまう。


転んだふたりの手を引くアーティーとパメラ。膝を擦りむいて血を流しているバイロンとジェナの足取りはどんどん遅くなっていく。


日は陰り辺りはだんだんと暗くなっていく。だが、スライムは4人を追って飛び跳ねて来る。


喉も乾き、膝を擦りむいたふたりとその手を引くふたり。徐々に近づいてくるスライムの姿に恐怖を感じながら必死で走る4人。


そんな4人の前にさらなる脅威が現れた。街道の真ん中にトレントが現れたのだ。


街道の横には木々が生い茂り、その奥には精霊の森が広がる。子供達は、親から言われていたのだ。


「精霊の森には絶対入ってはいけないよ。それに街道だからって安全じゃないんだよ。稀に魔獣が森から出て来ることがあるから子供達だけで村から出てはいけないよ」


その言葉を今になって思い出し後悔した4人。目の前のトレントは、根を足の様に器用に動かしながら4人に迫って来る。そして後ろからはスライムが迫る。


4人は、街道の真ん中にうずくまると恐怖のあまり思わず目をつぶる。


だが、トレントは、街道の中央にうずくまる4人の子供達に目もくれずに、子供達を追いかけて来たスライムにめがけて根を振り下ろした。


”プチ”。


そんな音が響いたと同時にスライムは、体液を街道にまき散らした。


子供達は、恐る恐るスライムを踏み潰したトレントを見上げる。


アーティーは、このトレントに見覚えがあった。最近、家の畑で雑草取りや土の肥やし作りを手伝ってくれるトレントに枝ぶりから何からそっくりなのだ。


「もしかしていつも畑を手伝ってくれるトレントさん」


アーティーの言葉に無言で枝を振るラピリア・トレント。


「僕達を助けてくれたの」


その言葉にも無言で枝を振る。


「あっ、ありがとう」


本来ならラピリア・トレントは人と話が出来るのだが、このトレントはなぜか言葉を発しなかった。そんなトレントの前で思わず腰を抜かして立てなくなった4人。その4人を器用に太い枝に乗せるとラピリア・トレントは、ゆっくりと村へ歩き出した。


よく見ると村はずれの丘の上にいた時には、いたはずの妖精達がラピリア・トレントの枝の上にいて子供達に枝に成っている黄色いラピリアの実を獲って差し出してくれていた。


「もしかして、僕達が湖に行こうとしたらからトレントさんを呼びに行ったの」


妖精は、コクコクを頷きながら紙切れを子供達の前に出して見せた。


”こどもだけでみずうみにいってはだめだよ”。


思わず紙切れに書いてある文字を読んで驚く4人。妖精は、アーティー達と村の学校に行き文字の読み書きを覚えていたが、ここまで文字を理解していたことを4人は知らなかったのだ。


驚いた顔を見せる4人とは裏腹に、ラピリアの実を美味しそうに食べる妖精達。


辺りは先ほどよりも暗くなり、空には星が見えるほどの夕闇となっていた。


そんな子供達が不安がっていると思ったのか妖精達は、口笛を吹き始める。すると妖精の頭の上に小さくほのかに光る玉が現れた。光る小さな玉は、妖精によってまちまちな色でキラキラと輝きその美しさで子供達の不安を取り除くことが出来た様である。


そんな妖精達が吹く口笛に答えるかの様に精霊の森かからも口笛が聞こえて来ると、精霊の森のあちこちから七色の無数の小さな光が現れる。


その光景は、精霊の森の中に夜空の星が瞬いているかの様である。


ラピリア・トレントは、子供達を太い枝に乗せたまま暗い街道を走り続けた。街道の脇に広がる精霊の森では、七色の無数の光が瞬いていた。


子供達が3時間かけて歩いた街道を、枝に4人の子供と妖精を乗せたラピリア・トレントは、僅か1時間で村の入り口へとたどり着いた。


村の入り口では、手に魔法ランタンを持った親達が子供の帰りを待ちわびている。


暗い夜道からいきなり七色の灯りを灯したラピリア・トレントの姿を見た親達は、一瞬同様したが枝に子供達を乗せている姿を見て安堵した表情を浮かべた。


「あんた達、こんな暗くなるまでどこに行っていたの!」


親達は、怒りながら子供達をラピリア・トレントの枝から下すと抱きしめる。


「「「「ごめんなさい」」」」


「ぼっ、僕がセスタール湖まで行くって言ったんです」


「えっ、セスタール湖まで!」


バイロンは、自分がそう言い出したことを直に白状した。


「だって、村外れの丘から見たらすぐそこに見えたんだもん」


「バカだね。セスタール湖まで馬車で何時間かかると思ってんだい」


「だから・・・ごめんなさいって」


子供達を探しに出てくれた村人達が皆安堵の表情を浮かべて家へと帰っていく。


「僕達を迎えに来てくれたの」


子供達がラピリア・トレントを指さす。


「えっ、まさか子供達をずっと見守ってくれていたのかい」


ラピリア・トレントは、何も言わなかったが少しだけ頷いた様に見える。


「「「「あっ、ありがとうございます」」」」


親達は、子供共々ラピリア・トレントに頭を下げた。だが、ラピリア・トレントは何も言わずに妖精と七色の光を灯しながら村の畑へと帰っていった。


それ以来、村人達はこのラピリア・トレントを子供の守り神として丁重に扱うようになる。


その夜もアーティーと共に夕ご飯を食べ、一緒に寝るいつもの妖精の姿があった。




次の日の昼すぎ。


早くも早馬が城塞都市ラプラスへと戻り、カルの元に副領主であるルルからの手紙を手渡した。


カルがその手紙を開けてみると・・・。


「行ってこい。行って思いっきり暴れてこい!」


”漢気あふれる”ルルの手紙である。


カルは、明日の昼前には城塞都市ラプラスを出てエルフが住んでいるという精霊の森へと向かうことにした。


カル達とは対照的に村に住む子供達の小さな冒険の話を書いてみました。これから旅に出るカル達とかなり違いますね。


ラピリア・トレントは、カルが城塞都市ラプラスの精霊の森に植える前に既に来ていました。えらく足が速いトレントです。


※深夜から書いていましたが、歯科や買い物などがあり書く時間がなくて進みが悪いです。今日の夜と明日でもう2話ほど書きたいのですが、書けるかな。


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