表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
84/218

84話.それぞれの思い

ロイとホリーの馬車で城塞都市ラプラスに到着したエルフ族のエレン。


ラピリア・トレント族が生まれ、新たな妖精の誕生を迎える精霊の森。


ラピリア・トレントの苗木を植えながら城塞都市ラプラスへ向かうカル達。


それぞれが城塞都市ラプラスへと向かいます。


ロイとホリーが手綱を握る馬車が城塞都市ラプラスに到着した。


馬車は、サラブ村へ酒樽を運びその帰りに穀物袋を運ぶ。往復で2日の工程だが馬車で手綱を握っているだけなので、慣れさえすれば子供でもできる仕事である。


穀物袋は、ラプラスの都市内にある穀物倉庫前へ馬車を横付けすると荷積み屋の人達が次々と運んでくれるため、ロイとホリーが穀物袋を運ぶことはない。


精霊の森の入り口にある作業小屋に運ばれた酒樽も、朝方になると作業場に集まった荷積み屋の人達が馬車に運んでくれるので荷馬車を横付けするだけだ。




ロイとホリーは、精霊の森の入り口にある作業場の前に馬車を停めると窓から作業場の中を覗き込む。


「やっぱり領主のおにーちゃん帰ってきてないね」


ロイがそう言いながらポケットから出した鍵で作業場の扉を開けると、壁に貼り付けてある予定表を指でなぞる。


「あれ、予定ではもう帰って来てることになってるね」


「ほんとだ。でも領主の館に戻っていれば、”館”のマークを予定表に張ることになってるからまだ戻ってないみたい」


ロイとホリーは、馬車で手綱を握っている時、交代で休んでいる時などに文字の読み書きを覚える様にとカルが渡した本と紙を使って勉強をしていた。


見様見まねで覚えたという文字の読み方も本を渡すとすぐに吸収した。書く方はまだまだの様だがこれも時間が解決する話である。


「エレンさん。ここで待ってれば領主のおにーちゃんが帰ってくるよ」


「そうか。とにかくここで待たせてもらう」


「そうだ、作業場に置いてある樽は僕達が運ぶ商品だから手を振れないでね。売り先が決まっている大切な商品だから」


「そうそう、領主のおにーちゃんに怒られるよ」


「領主のおにーちゃんが帰ってくるってことは、お猫サマも帰ってくるね」


「お猫サマ、またパンを買ってくれるかな」


エレンは、ロイとホリーの楽しげな話を聞きながら作業場に積まれた酒樽を思わず凝視してしまう。エレンが喉から手が出る程欲しているあの薬が入っている酒樽だからだ。


「この酒樽にあの薬が入っているのか」


「薬?これのこと」


そう言うとロイは、背中に担いでいる鞄の中から小さなポーション瓶を10本ほど取り出して見せた。


「そっ、そんなに持っているのか。ポーション瓶ひとつで金貨10枚もする高価なものだ。その手の中にあるだけで金貨100枚の価値があるぞ」


「そうなの。領主のおにーちゃんがケガや病気になったら使えってくれたんだ」


ロイとホリーにとって目の前の酒樽は、馬車で運ぶ商品だと教えられていた。この酒樽の中身がどれ程の価値があるのかなど全く興味がないのだ。


「くれた・・・。こんな高価なものをくれたのか」


「うん。でも僕は、この薬よりお猫サマが買ってくれるパンの方が好き」


「私も」


「そっ、そうか。この薬の価値も人それぞれということか」


エレンは、無邪気に話すロイとホリーの様に気楽に生きていられたらどんなに楽しいかと考えていた。


だが、エレンは知らないのだ。ロイとホリーがほんの少し前まで路上で暮らしていたことを。食べる物すら事欠く生活を小さな子供ながらに送っていたとなど今のふたりの姿からは誰も想像できるはずもない。


「そうだ、領主のおにーちゃんを待ってるならそこの階段を上がると屋根裏部屋があるんだ。ベットもあるから寝ることもできるよ」


ロイとホリーがエレンの手を引いて屋根裏部屋へと案内する。


「ここは、作業場だから食べるものは置いてないけど、ラピリアの実は、作業場の裏にいっぱい成っているからいくらでも食べられるよ」


「そういえば、森の中にもいっぱい実が成ってるよね」


「でも精霊の森に入ると危ないって領主のおにーちゃんが言ってた」


「あっ、そうだった。でも妖精さん達と一緒に森に入れば妖精さんが守ってくれるから危なくないんだ」


エレンは、屋根裏部屋の天窓から精霊の森を覗き込む。そこから見える木々の間からは、多数の妖精達の飛ぶ姿が見え隠れしている。


「この森には妖精が沢山いるな」


「街の中にもいっぱいいるよ」


「そう、村にも畑にもね」


「街の中にも妖精がいるのか」


エレンが住む精霊の森にも妖精はいる。だが、この城塞都市ラプラスに隣接する精霊の森の様に数えきれないほどの妖精の姿など見たことがなかった。


それに城塞都市ラプラスの背後にそびえる山の山頂には、見たこともない巨木が生い茂る様は、まさに異様と言ってよい光景だ。


「あの山の上の巨大な木はなんなのだ」


「僕達も知らない。でもねあの木のことを”トレント”って言うとなぜか足元に氷が出来て転ぶんだって。だから絶対に言ってはいけないんだって」


「でも、ロイが言ったよね」


「本当だ。でも何ともないや」


ロイは、馬車に積んであったラピリアの実と少し固くなったパンの耳を作業場の屋根裏部屋に置き、馬車へと戻っていき、それを見送るエレン。


「僕達、明日の朝にここに来るけど朝になったら樽を馬車に運んでくれる人達が来るはずだから。その人以外は、ここには誰も来ないから鍵を開けたまま作業場から出ないでね」


「分かった」


ロイとホリーが馬車で帰った後、エレンは積まれた酒樽をじっと睨みつめていた。この樽の中には、精霊の森の精霊に飲ませたい薬がまさに山の様に詰まっている。


先ほどから作業場の中に漂うほのかに香る甘い匂いに鼻腔をくすぐられていたエレン。彼女はまだ、酒樽の中の薬を飲んだことがない。だが、この香りから不味い訳がないと誰でも分かる。


思わず酒樽の注ぎ口に手が出そうになるエレン。だが必死に堪え・・・られなかった。その手は、酒樽の栓に手をかけていた。





ロイとホリーとエレンが精霊の森の入り口にある作業場に到着する数日前。


ここは、セスタール湖と街道を挟んで精霊の森が広がり、その先には茫漠と砂漠が広がる地である。


精霊の森としては、先に誕生した城塞都市ラプラスに隣接する精霊の森よりも規模が大きく、近くラプラスの森やアグニⅡに隣接する森ともひとつに繋がる程の規模拡大を見せる広大な精霊の森。


このセスタール湖近くの精霊の森は、お猫サマが100年の時を進めた100年酒を飲んだ妖精が精霊へと進化したことにより生まれた森である。


カル達は、城塞都市アグニⅡからアグニⅠへと移動して精霊の森にラピリア・トレントの苗木を植え、そこからセスタール湖の精霊の森へとやってきた。


精霊の森の入り口に建てられた作業小屋の前に馬車を停め、森に苗木を植える準備を始める。


カルの大盾のダンジョンの最奥に住む精霊ホワイトローズからラピリアの苗木を渡された時、最初は何の疑問も持たずに苗木を精霊の森に植えた。だが、精霊ホワイトローズは大盾のダンジョンの最奥で魔獣を作る製造施設を稼働させている。


今までもカルに魔獣を狩る依頼を何度も行い、ダンジョンの最奥の製造施設で魔獣の改造と量産を行い、他の世界のダンジョンに魔獣を販売していた。その事を知っていたカルであれば、ラピリアの苗木を欲しいと言った時点で何をしようとしているのか見当が付いたものだが、そこまで考えが及ばなかったカルであった。


結局のところ精霊の森の精霊の依頼で、ラピリアの苗木とトレントの苗木をかけ合わせて大量のラピリア・トレントの苗木を作り、それにゴーレム程度の命令を理解する知恵を付けたトレントを誕生させた精霊ホワイトローズであったが、カルがライラに贈った魔法杖により人と流暢に会話ができる程の知恵を備えてしまうとは考えもしなかった。


しかも走れば馬車よりも早いトレントである。このトレントがどれ程の強さを有しているかは不明だが、人族と同等の知恵を持つ魔獣の出現で精霊の森は、自らが森を守る手段を得たことになった。


だが精霊の森は、自らを守る別の手段を誕生させようとしていた。


森の最奥に小さな花畑が広がる。その花畑の中央にひときわ大きなつぼみを持つ花が茂り、今まさにつぼみが開花しようとしていた。


花びらが1枚、また1枚と広がり、その花の中からは人の子供程の大きさの妖精が姿を現した。背中には羽が生えているが今まで精霊の森に誕生した妖精達の様に優しく穏やかな顔立ちではない。どちらかといえば厳しく厳格な顔立ちをしている。


妖精達もいつもなならこのお花畑に群がり楽しく遊んでいるところだが、その生まれたばかりの妖精の姿を見た瞬間、一斉に木々の陰に隠れてしまった。


大きな花から生まれ出た妖精は、花から立ち上がると羽を広げお花畑を取り囲む様に生い茂る木々に目を向け、嘗め回すかの様に妖精達を睨みつける。


「ふん。また私から逃げるというのか妖精達。だが、私はお前達妖精の上位存在だ。お前達がこの森で得た知識と経験を全て奪ってやる」


人の子供程の大きさの妖精がそう口走ると、木々の陰に隠れた妖精達の体から小さな白い光の玉が無数に飛び出し、お花畑の中央に立つ妖精の体の中に光の玉が集まっていく。


「ほお、精霊の森のすぐ隣りに城塞都市があるのか。何、この世界に裁定の木がいるだと。それはかなり厄介だな。だが面白い世界に呼ばれたのだな、これは楽しみだ。まずは精霊共に挨拶でもしてくるか」


妖精は、自らの羽を羽ばたかせると空へと舞い上がり、城塞都市ラプラスに隣接する精霊の森へと向かった。





カル達は、新しい妖精が誕生したことなど知らずに苗木を植えていた。それが終わった頃には、既に日が傾きだしたため作業場に戻るとその日は作業場の屋根裏部屋に泊まることになった。


お猫サマは、相変わらず機嫌が悪くカルと口を聞いてはくれなかった。城塞都市アグニⅡの作業場でお起しても起きなかったお猫サマをクッションごと馬車の幌の上に紐で縛ってしまったのがその原因である。


それをなかなか許してくれないお猫サマをなだめながら何か策はないかと考えているうちにその夜は過ぎていった。




次の日の朝。


カル達は、城塞都市アグニⅡの作業場の時の様にラピリア・トレント達が作業場の前で待ち構えているかと思い、恐る恐る扉を開けてみたが、そこにはラピリア・トレントの姿もなく妖精達の姿すらなかった。


4人は、馬車に乗り込むと森の作業場から街道へと出る道を進んでいく。精霊の森と小さな池が点在する草原を抜け街道へと出ようかと言う時、目の前の草原にある光景が広がっていた。


ラピリア・トレントの群れと100体を超える妖精達が草原の一点に向かって黄色いラピリアの実を投げつけていたのだ。


投げられたラピリアの実が落ちていく先には、黒いドレスを着た双子が立ち防御壁を張りながらじりじりと背後の山へ向かって後ずさりをしていた。


ときたま妖精達が闇の双子の足元にラピリアの実を滑り込ませては双子をつまづかせる。よろけながら後ずさる闇の双子。


いくら小さな妖精といえど100体を超える大群となり精霊の加護が弱点の闇の双子に対して、精霊の加護付きのラピリアの実をこれでもかと投げつけられては手の出しようがない。


さらにカル達が植えたラピリア・トレントは、黄色いラピリアの実を枝に大量に実らせ、枝から実を獲るそばから新しい果実を実らせるという闇の双子にとってはまさに地獄の様な存在である。


いくら放っても尽きることのない矢の様に、妖精達はラピリア・トレントの枝から黄色いラピリアの実を獲ると闇の双子に向かって投げ続ける。


いたたまれなくなった闇の双子は、背後の山へと向かう峠道へ体中から煙を吹き出しながら走り去っていく。


その光景を見て歓喜の声を上げる妖精とラピリア・トレント達。


そんな光景を茫然と見ていたカル達に声をかける者がいた。カルが城塞都市アグニⅡに隣接する精霊の森に植えたラピリア・トレントの族長であるスマイリーである。


「これはこれは、カル様。とんだ場面をお見せしました」


「あっ、もしかしてスマイリーさんですか」


「はい。城塞都市アグニⅡの精霊の森からこちらのセスタール湖の精霊の森へとあの双子を追ってやって来ました」


「えっ、数日前に生まれたばかりなのにもうここまで移動してきたんですか」


「はい。我々の精霊の森で暴れた闇の双子を見つけた妖精達がずっとあとを追っていたのです。そして丁度よい場所に追いつめることができましたので、妖精達と我らラピリア・トレント族で撃退に成功した次第でございます」


「凄い。僕達は、あの双子を追い詰めることすらできなかったのに・・・」


「いえいえ、我らはあの闇の双子に対処するために生まれた様なものです。出来て当然でございます」


ラピリア・トレント族の族長であるスマイリーは、どこか誇らしげであった。


その光景を見たカルは、少し苦々しく思っていた。本来なら城塞都市の警備隊が対応するはずの闇の双子であったが、警備隊では手も足も出ず城塞都市や村々の警備に専念するしかなかったのだ。


かわりに闇の双子を追いかけ回していたのは、妖精達であった。あんな小さな妖精達でも闇の双子に正面から立ち向かっている。なのに自分達は何も出来なかった事に不甲斐なさを感じていた。





そんな苦々しい思いを晴らすかのように馬車を走らせ城塞都市ラプラスへと向かう街道を進むカル達。


馬車の幌の上には、未だご機嫌斜めなお猫サマがふてくされて横になっていた。そう、お猫サマは、城塞都市アグニⅡの出来事をまだ根に持っていた。


セスタール湖が見える街道の途中で馬車を停めると、お猫サマの機嫌を取ろうと話しかけたカルであったが・・・。


「お猫サマはまだまだ怒ってるにゃ」


「ごめんなさい。いくら起こしても起きないから仕方なく馬車の幌にクッションごと紐で縛りつけたりなんかして」


「そうにゃ。いくらお猫サマでも我慢の限界があるにゃ。だから今日はあの大きな湖で魚釣りをするにゃ。お猫サマの大好きな魚を釣るにゃ。お猫サマは焼いた魚をお腹いっぱい食べれば機嫌がなおるにゃ」


結局のところ大好きな魚が食べたかったと白状したのだが、お猫サマの怒りを鎮めるための落としどころをカルに提示したことで、精霊神を無碍に扱った事を無かったことにすると暗に言ってくれたのだ。


カル達は、セスタール湖の湖畔に馬車を停めた。お猫サマは、目の前の何もない空間を開くとその収納庫から釣竿を取り出すと鼻歌交じりに湖に釣り糸を垂れる。


メリルとライラは、最初は釣りに興味を示したがちっとも魚が釣れないため、そうそうに魚釣りを諦めてしまい湖畔に停めた馬車に戻ると石と木々を集めて魚を焼く窯度作りを始めた。


カルはというと、大盾から金の糸を出すと湖の中へと伸ばしていく。金の糸が湖の中を泳ぐ魚の場所を探し金の糸で魚を捕獲していく。


「にゃ。入れ食いにゃ。この湖の魚はお猫サマのことが大好きにゃ」


湖の近くの岸辺で採った虫を餌に魚を釣るお猫サマ。既に桶の中には釣った魚が5匹ほど入っている。


得意げな顔で鼻歌交じりに魚釣りを続けるお猫サマ。ふと、カルの方を見ると大盾を湖に向けるだけで、竿もなれば釣り糸をたれる気配もない。


「ははん。カルは魚釣りを知らないにゃ。これは教えがいがありそうにゃ」


得意げな顔でカルに近づくお猫サマ。


「カルは、何をしているにゃ。それでは魚は釣れないにゃ。ここはお猫サマが釣りの極意というものを教えてあげるにゃ」


そう言ってみたもののカルの横に置いてある桶の中が少し気になったお猫サマ。そっとカルの桶の中を覗き込んでみると、そこには20匹程の魚が入っていた。


「なっ、なっ、なんにゃ。なんで釣り竿も釣り糸も釣り針もないのにお猫サマより魚を多く釣ってるにゃ。なんでにゃなんでにゃ」


魚釣りの極意を教えようと意気揚々とカルの前にやってきたお猫サマだったが、自分より魚を多く獲ったカルに思わず癇癪を起すと湖に入り暴れ始めた。


その光景を見たカルは、精霊神とはいえ以外と子供っぽいところがあるのだとかえって微笑ましくさえ思えた。それ以降は魚が釣れなくなったが、湖の岸でメリル達が起こした焚火で釣った魚を塩焼きにして皆で食べることに。


「精霊神であるお猫サマよりも魚釣りがうまいなんてけしからんにゃ。でも大好きな魚を沢山食べられたにゃ。勘弁してやるにゃ」


そう言いながら塩焼きにした魚を10匹ほど食べてしまったお猫サマ。焼き魚を食べるお猫サマは、怒った口調とは裏腹に笑顔で焼き魚を美味しそうに食べていた。


さらにカルがそっと黄色いラピリア酒を出して機嫌をとり、それに気を良くしたお猫サマは酒の肴に魚という取り合わせにも満足したようであった。


嬉しそうに酒を飲み魚を食べるお猫サマを見ていたカルは、以前から不思議に思っていたことがった。お猫サマは精霊神である。その神様でも食べたりお酒を飲んだりしているが、本当は必要ないのではないかと。


ただ、ドワーフのバレルの家でお酒を飲んだお猫サマも剣爺も酔い、その後にお猫サマは気持ち悪いと言って吐いたりもしていた。人の様で人でない。それでいて人臭い何か曖昧な存在の様に思えた。


それにお猫サマを見ていると、今までにトイレに行ったのを見た記憶がない。だが、そこはあまり触れてはいけない話なのかもしれないと自分を戒めるカルであった。


その日は、城塞都市ラプラスへの帰路は殆ど進まず、セスタール湖の湖畔で夜を迎えた。夜半になると近くの村の灯りが瞬き、精霊の森からは微かに歌声が聞こえる。


明日の朝にセスタール湖の湖畔を出発すれば、昼頃には城塞都市ラプラスへと戻れるだろう。




朝方にあったラピリア・トレントと妖精達が闇の双子を峠へと追いやった件は、城塞都市の警備隊だけではとうてい出来ない芸当である。あの双子と戦って勝てる力は、城塞都市の警備隊にはないのだ。


カルは、今朝の光景を見て気が付いたのだ。城塞都市と精霊の森を分けて考えるのではなく、城塞都市と精霊の森をひとつの都市と考え問題の解決も都市と精霊の森と一緒に考えていくべきだと。


近い将来、城塞都市と精霊の森の精霊と合同の会合を開き、城塞都市と精霊の森の未来を共に考えようと思うカルであった。


それぞれの目的とそれぞれの思いを胸に城塞都市ラプラスへと向かう面々です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ