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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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81話.城塞都市を守る武具(1)

カルは、ドワーフのバレルに作成依頼をした武具をルル達に贈ります。


魔人である闇の双子が城塞都市アグニⅡを襲撃してから幾日かが過ぎた頃、双子に刺されて重症を負ったルル、リオ、オルドア、メリルは、それぞれ病院を退院して復帰のための訓練を続けていた。


ゴーレムのカルロスは、ゴーレムコアを両断されてしまいカルロスを作った剣爺が回収したままである。


副領主の不在で要塞都市の機能が麻痺をしていた様に思われたが、4人が病院に入院していた時も領主や副領主の不在などお構いなしに、城塞都市は領主の館や役所の職員により機械的に動き続けていた。


焼け落ちた領主の館の再建は、後回しにされ街の復興が最優先となり、領主の館の職員達は、借り受けた倉庫に退避した書類を広げて仕事を続けていた。


領主や副領主は、最終的な決定事項の時だけいればよいという良い見本のような状況である。


さらにカルが買い付けた大量の穀物輸送が軌道に乗ると、以前の様な不穏な空気はどこかへ消え去ってしまう。


さて、ゴーレムであるカルロスがいないため、カル達は馬車で城塞都市アグニⅡへと向かい、皆のケガの状況の確認とドワーフのバレルに製作を依頼した武具を渡すべく準備を始めていた。


さらに短剣型の魔導砲と盾を各城塞都市に少量だが配備する計画を進めていた。




「ルルさん、リオさん、退院おめでとうございます。もうケガの具合は大丈夫ですか」


「ああ、なんともない」


「いろいろご迷惑をおかけしました」


「やはりおふたりが復帰されないと城塞都市が回りませんね」


カルが少しだけ復帰したふたりの必要性を説いて持ち上げてみると。


「役所の職員達が無難に仕事を回してるから問題ないさ」


「そうです。最終決定さえすれば、職員達がちゃんと仕事をやってくれてます」


実際に城塞都市を任されているルルとリオは、そんな事はお見通しとばかりに職員達の仕事ぶりを褒め称える。


「それにカルが買い付けた穀物のおかげで城塞都市の住民の不穏な空気も消し飛んでしまった」


「はははっ、穀物が買えたのはたまたまでした」


「私も職員を派遣して穀物の買い付けを行ったのだが、全て失敗に終わった」


「まあ、その話は、後でゆっくりしましょう」


「そうだな」


カルは、腰にぶら下げた鞄から箱を取り出すと、ルルとリオの前に布にくるまれた槍と杖を差し出した。


「実は、あの双子の襲撃がある前に知り合いのドワーフの職人さんに皆さんの武具を頼んで作ってもらったんです」


「その件だが、例の双子の襲撃の時にアグニⅡの城壁と街の一部が吹き飛んだな。後であの惨状を見て驚いたぞ」


「はい、都市の住民への公式発表では、城壁と街を破壊したのは闇の双子ということになっていますが、実際は作ってもらった短剣を使用したレオさんが破壊しました」


「ああ、それはレオから聞いた。だが、あの短剣を借り受けてからリオの態度が少しおかしいのだ。目が座っているというか、剣士の極致を見たというか得体の知れない何かを悟ったような」


「そうです。以前はああではありませんでした」


「それに1日に1回は、荒地で魔法の試し撃ちをしています。住民からうるさいと毎日苦情が来ています」


ルルとリオは、あの短剣を持ってからレオの態度と行動に変化が起きた事に少し不安を覚えていた。


「うーん。そう言われると気が引けますが、いつもお世話になっているルルさんとリオさんに作った武具です」


「まさか、レオが使ったというあの短剣と同じ武具か」


「はい」


ルルが布にくるまれた槍を手に取ると布を外していく。見たこともない魔法陣と魔法回路が刻まれた槍、材質はミスリルの特品。そこに一部だけ木を使っている。


「これはすごいな」


リオも布にくるまれた杖を手に取り布をはずす。


「杖を持った瞬間、何かが体の中に入って来た気がします」


「リオさんは、僕と行った国境の砦で敵が撃ってきた魔導砲を見てますよね。この武具は、あれと同様のものです」


リオの表情が一瞬で凍り付く。今まで体験した最大の武器が国境の砦で見た巨大な魔導砲であったからだ。


「そんな。敵の砦の魔導砲は、とても巨大でした。それがこんな杖の形になったのですか」


「はい。あの砦の戦いでは、魔導砲を撃つのに数百人の魔術師が必要でした。ですが、この槍や杖は殆ど魔力は必要ありません」


「魔力が必要ない」


「はい、逆に魔力を必要以上に込めないでください。レオさんが破壊した城壁と街の様な惨状が生まれます」


「そんなに凄いのか」


「実は、あの時レオさんは短剣で魔法を数十回も放っていましたが、全て闇の双子が受けて耐えきったのです。そのため他の城壁は無事でしたが、もし城塞都市にあの魔法を放っていたら、この城塞都市は消滅していたかもしれません」


「おいおい、そんな物を渡して大丈夫なのか」


「ですので、城塞都市が危ないという場合にのみ使用して欲しいんです。こんな武具を作っておきながら言う言葉ではないのですが、戦争に使って欲しくはありません。この城塞都市を守るためだけに使って欲しいんです」


「そうか。カルの思いは理解した」


「実は、その武具に刻印されている魔法陣も魔法回路もこの世界のものではありません。僕の盾に住んでる”書の魔人”さんが教えてくれたものです。つまりその魔法陣も魔法回路も精霊界のものです」


「なっ、なんだと!」


「本当ですか!」


「ですので幾つかご注意があります。先ほども言いましたがむやみやたらと魔力を込めないでください。絶対に分解しないでください。複製しようと分解すると壊れる様にできています。人に譲渡しないでください。例え両親や兄弟であってもです」


「・・・わかった」


「分かりました」


「あとひとつだけ。先ほどのレオさんの話ですが、もしかすると魔法陣や魔法回路が精霊界のものというのと関係があるかもしれませんが、武具を使う者の精神に何かが作用する可能性は捨てきれません」


「そうであろうな。普通に考えればそれが順当であろうな」


「レオの態度が少し変わってしまったのも精霊界の魔法陣に影響を受けているということですか」


「僕もこの武具を試してみましたが、僕は魔力が無いので魔法は発動しませんでした。それにこの武具を持っても何も感じません」


「カルは、逆の意味ですごいな」


「ルルさんもリオさんもお時間がある時に荒地で試し撃ちをしてみてください。あっ、住民が苦情を言うかもしれませんのでお気をつけて」


「はははっ、そうだな。住民に配慮しないとな」


「それとおふたりにこれを」


カルは、腰の鞄から化粧箱をふたつ取り出すと、化粧箱から鼻に心地よい木の香りが漂ってくる。その化粧箱を開けると装飾が施された短剣がひとつ入っていた。


「これは?」


「これは、レオさんが使った例の短剣の性能を半分に抑えたものです。ご実家にお持ちください」


「「えっ」」


「城塞都市を3つも奪って見せたんです。ご実家に大手を振って帰省されるのもよい頃合いかと思いまして。ケガも負いましたし、その時に手ぶらというのもあれですからお土産にと思いまして」


「これを土産に持っていけと・・・」


「ミスリルの特品製です。金貨に換算しても万枚程度の価値があると思います」


「「あっ、いや・・・本当に」」


「基本的に飾り物と思ってください。下手に使うと騒動の種になりますから」


「カル、お前ってやつは・・・」


ルルが無い胸にカルの顔を埋めさせる。その後、なぜかリオもカルの顔を放漫な胸の谷間に埋めてくれた。ふたりの間に何か火花の様なものが飛び散った様に見えたのは気のせいだったか。


「そういえば、城壁の外にひと晩で森ができたのだが、あれは何だ」


「そうでした。ラプラスやアグニⅠの城壁の外にも精霊の森が出来ています。作業場までは誰でも入れますが、その先は精霊と妖精達の領域なのでなるべく入らない様にしてください。森の中にはドリアードやトレントもいますから」


思わず怪訝な表情を浮かべるルルとリオ。


「カル。お前は・・・人族だな」


「はい。そうですよ」


「人の力では、あれだけの巨大な森をひと晩では作れはしないのだ。それは理解しているな」


「えっ、ええ。実は、何人かの精霊と知り合いになりまして、その結果です」


「・・・やはり、カルは既に人外の者となったようだ」


「実は、ラプラスの裏山のコルナ山には、ラプラスの城壁ほどの幹を持つ巨木が根を張ってます。きっと見たら驚きますよ」


ルルとリオは、なぜか床にうつ伏せで倒れ込んでいた。


「たまにコルナ山から下りて根を足の様にして歩いたり空を飛んだりもします」


ルルとリオは、床にうつ伏せで倒れたまま痙攣していたが、しばらくするとルルとレオが顔を上げてこんな事を言いだした。


「この城塞都市でも砂漠を巨大な木が歩いている姿を目撃した者が大勢いるのだ。最初は、都市伝説だと皆笑っていたのだが、目撃する者が続出してな。あれもカルの仕業だったか・・・言われれば納得だ」


「もうカル様は、私達とは遠い存在になってしまったようです。もしかしてカル様は精霊ですか」


「そっ、そんな訳ないですよ。ただの人族です」


椅子に座ったルルとリオは、茶をすすりながら遠くを見る目でカルを見つめていた。


カルは、ルル達が実家に持っていくための武具まで用意していました。当然の様にこの武具でも問題が起こります。


それはまた別のお話で。


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