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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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80話.エルフと精霊の森(2)

さて、薬を求めて村を旅立ったエレンですが・・・。


※最近恒例の2話目を投稿します。とはいえ、毎回2話投稿する訳ではないのであしからずです。


エルフ族のエレンは、人族の村の商店で買った薬のこと。精霊の森の精霊にその薬を飲ませた後に起きた出来事を包み隠さず族長に話した。


その薬があれば精霊は、今まで以上の力を得られると確信したこと。そのためにはあの薬が必要であることを。


「そうか行くのか」


「族長様。魔王国の遥か南方に位置するという城塞都市ラプラスにて作られし薬を探してまいります」


「なるべく早く戻ります。それまではご自重されますように」


「分かった」


エルフ族のエレンは、城塞都市ラプラスへと旅立った。エルフの村と森の近くにある人族の村にしか行ったことがないエルフの少女は、初めて世界を見ることになる。







12日後、エルフ族のエレンは、馬車を乗り継ぎラドリア王国のリガの街に到着した。


リガの街は、カルが穀物を買いラピリア酒を売るロイズ商会が店を構える街であり、このリガの街から見える山脈の向こう側に魔王国と城塞都市ラプラスがある。


つまり城塞都市ラプラス迄はあと少しの距離まで来たのだ。だが、ここからが問題であった。


城塞都市ラプラスへ最短で向かうには、穀物畑が連なる平原を馬車で半日ほど進み、その先にある山脈を2日ほどかけて山越えをする必要がある。さらにサラブ村から馬車で1日程行くと城塞都市ラプラスである。


問題は、山脈まで行く乗り合い馬車などはないため馬車を借りるか徒歩で行くしかない。


もうひとつの方法は、リガの街から迂回してポラリスの街に向かい、そこから峠越えをする方法だ。


ポラリスの街までは乗り合い馬車があり、リガの街から2日程で到着できる。ただ、その先は乗り合い馬車はなく馬車を借りても2日、徒歩なら4~5日はかかるという距離である。


先ほど街であの薬を売っているというロイズ商会へ行き、薬を売ってもらえるか聞いたが、個人への小売りはしていないと言われてしまう。何度か頼んでみたが邪険に扱われるだけであった。


そしてもうひとつの問題というか最大の問題がエレンを襲っていた。


路銀がないのだ。袋の中に残っているのは、金貨22枚と銀貨14枚、それに銅貨が9枚と鉄貨が4枚。


どうして路銀が無いのかというと、エレンはエルフの村と精霊の森の近くにある人族の村にしか行ったことがなかった。旅の途中に見た街や村の珍しい物や食べ物に目移りしてしまい、あらゆる物を食べまくったのだ。


しかも宿屋の主に勧められるままに、宿代の高い部屋に泊まり散財を繰り返した。世間知らずの娘に世間はたかりまくったのだ。


恐らく、残りの金で城塞都市ラプラス迄はたどり着ける。だがそこまでだ。恐らくその時に薬を買う金は残ってはいない。


エレンは途方に暮れていた。自分の世間知らずと身勝手さに呆れていた。道端に座り込み、これからどうすかを考え込むエレン。目の前には、倉庫が並び馬車や荷積みを行う労働者がひっきりなしに往来する。


日は既に落ちかけており、もうすぐ夜を迎えようという時間である。




そんなエレンの前をふたりの子供が通りかかる。ふたりは、道端に座り込むエルフ族の少女を初めてみた。ローブを着込んではいるが長い耳は特徴的で丹精で美形な顔立ちは、初めて見るものであった。


少女といっても長寿を誇るエルフ族である。既に100歳を越えてはいたが、見た目は人族の10歳台にしかみえない。


「おねーちゃん。大丈夫?」


「お腹減ってるの?」


ふたりの子供は、紙袋に入った少し固くなったパンの耳を差し出した。


「これ食べなよ。固くなったけど美味しいよ」


エレンは、紙袋に入ったパンの耳を差し出す子供の顔を見て思わず目から涙をこぼしていた。


「すまん。わしはこんな子供にまで施しを受けなければならない姿に見えるのか」


パンの耳を食べながら目から涙を流すエレン。その姿がなぜか気になったふたりの子供は、エレンに事情を聞くことにした。




「ふーん。おねーちゃん遠いところから来たんだね」


「それでおねーちゃんは、ラプラスに行きたいの?」


「ああ、だがラプラスまで行っも金がないのだ。薬を買う金をどう工面すればよいのか・・・」


「だったら僕達の馬車に乗っていく?」


「そうだよ。明日、馬車に穀物を積んだらラプラスに戻るんだ。明日の夕方くらいにラプラスにつくよ」


「今、なんと言った。ラプラスに行くのか。しかも馬車で」


「そうだよ」


「だが、ここからだとあの山脈を超える必要がある。どんなに早くても4日はかかると・・・」


「おねーちゃん口は固い?もし僕達の言う事を信じてくれるなら連れて行ってあげるよラプラスに」


エレンの前にふたりの天使が舞い降りた。


だが、どうやって山脈の向こうにあるという城塞都市ラプラスまで馬車で1日で行けるというのか。


「どーするおねーちゃん」


「わっ、分かった信じる。だがいくら払えばいい」


「おねーちゃん。剣と弓を持ってるよね。腕はいいの」


「ああ。村ではかなりの腕前だ」


「なら、僕達の馬車の護衛ってことで大人達に話を通すね。あっ、もうすぐ5時だ。早くしないとゲートが閉まっちゃう」


ふたりの子供は、そうい言うといきなりエレンの目に布で目隠しをした。


「なっ、何を」


「これから少し歩くけど、僕達がいいって言うまで目隠しを外しちゃだめだよ」


「そっ、そうか分かった」


エレンは、ふたりの子供に手を引かれて歩き始める。どこかの建物の中を歩いているようだが穀物の匂いと少しカビ臭い匂いが漂う。


「おうガキども早く戻らないとゲートが閉まるぞ」


「「はーい」」


「おっ、その・・・女はなんだ」


「僕達の馬車の護衛です。さっき雇ったんです」


「なら、冒険者所証を見せ・・・」


「あっ、5時だ。ゲートがしまっちゃうよ」


「分かった。分かった。はやく通れ」


「「ありがとう」」


またふたりの子供に手を引かれて歩き出すエレン。


「もう目隠しを外してもいいよ」


手を引いていたふたりの子供に言われた通りにエレンは目隠しを外す。そしてエレンが見たものは・・・。


山間にそびえる砦と目の前に広がる谷であった。木々が生い茂り所々に岩肌が見え隠れする。


夕刻の日は既に谷の陰で遮られ、既に夜といえるほどの暗さを醸し出していた。


「えっ、こっ、ここはどこだ。さっきまでリガの街にいたはず・・・」


「ようこそ城塞都市ラプラスのサラブ村へ」


ふたりの子供がエレンにそう言った。


背後から男達、女達の大勢の声が聞こえる。


振り向くと大勢の獣人達が、穀物袋を馬車に載せ替えると馬車を砦の広場へと移動させていく。


「ゲートが閉じたぞ。みんな掃除をしたら今日の仕事は終わりだ」


「「「「「お疲れ様」」」」」


「さあ、水浴びでもして夕飯にしようぜ」


「今日の城壁の夜当番はどこの班だ」


「3班だってよ」


さらに別の獣人は歩きながら仲間の獣人にこんな事を言っていた。


「もうすぐ教会ができるな」


「ああっ、俺達の精霊神様の教会だ」


砦の広場には、小さいながらも建築途中の教会があった。まだ、途中ではあったが数人の獣人達が忙しく働いていた。


程なくして城壁のあちこちに松明が掲げられ、鎧と剣と弓を装備した兵士姿の者達が城壁の警備を始める。


馬車が砦に入ると丸太で作られた城門が閉じられ重厚な音が砦に響き渡る。


「そういえば、最近オークの姿を見ねえな」


「見てるだろう。お前の夕飯に並んでるよ」


「あっ、そうだった」


笑い声やいろんな会話が聞こえてくる。だが、ここは明らかにリガの街ではない。


「おねーちゃん。おねーちゃんは僕達の護衛の冒険者さん。そうだよね」


「あっ、ああ」


「ここで見たことは絶対に他で言ってはダメだよ」


「わっ、分かった」


「じゃあ、夕ご飯食べに行こう。ここのご飯美味しいよ」


ふたりの子供に手を引かれてエレンは、砦の食堂へと向かった。


城塞都市ラプラス迄は、馬車であと1日の距離である。


エルフ族のエレンが、城塞都市ラプラスのサラブ村までやってきました。


果たして話は、そう簡単に進むのでしょうか・・・。


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