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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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79話.エルフと精霊の森(1)

城塞都市ラプラスとは別の場所にある精霊の森で領地争いが始まります。


とあるふたつの国の国境にまたがる森。精霊が宿るこの森は、長寿を誇るエルフ族の居住の地でもある。


近隣諸国の王や貴族達は、エルフ族が作る秘薬のおかげて長らく恩恵を受けていた。


ふたつの王国の王は、その森を安土し森の精霊とエルフ達に未来永劫の居住を許し、誰もその森に争いを持ち込まないと密約を交わし、それから数百年の歳月が流れた。


国王が代替わりをする度にその密約は、引き継がれエルフ族との交流も細々とだが続いた。だがある時、国王の代替わりと共にその密約は一方的に破棄された。


その森にある洞窟から魔石を持ち帰った多数の冒険者が現れたためだ。ふたつの王国は、その森がどちらの国のものであるかを巡り論戦を繰り広げ、挙句のの果てに国境に軍勢を派遣しいつでも戦いに挑める状況となった。


だが、ここで問題が起きた。森が余りにも険しすぎるため戦場にならないのだ。敵対する国同士であるが、目の前の餌に食らい付く事が敵わぬと見た両国は結託し、森に火を放ち毒をまいた。


森は、焼き払われ木々は枯れ果てた。


自らの生活の場である森で魔石が採掘されることを黙認したエルフ族であったが、森を焼き払われ木々が枯れる事態となり、古の密約を守る様にと特使を派遣した。だが、両国とも特使を幽閉してしまう。


激怒したエルフ族は、両国の軍隊に戦いを挑んだが、数に勝る両国の軍勢に成す術もなく怪我人だけが増え、森の縮小と共に精霊の力も衰えていく。


エルフ族の族長は、決断を迫られた。このまま森と運命を共にするのか、それとも他の場所に移住するのか。エルフ族の間でも議論が交わされたが答えは出るはずもなく時間だけが過ぎて行く。


そんな時、いつもの様にポーションと毒消しの薬を買うために、エルフ族のエレンは近隣の人族の村にある小さな商店を訪れていた。


「これはエレン様。本日は、どの様な商品をお探しで」


「ポーションと毒消しが欲しい」


「では、こちらになります。そういえばエルフ族であるエレン様なら、売られている薬よりも効能の高い薬の調合はお得意ではないかと」


「実は、エルフ族の薬でも治らないのだ。しかも森が焼き払われ毒を撒かれては、薬草も手に入らなくなってしまってな」


「さようでございますか。実は、知り合いの商人からこういった物を仕入れまして。なんでも南方の街で作られているという薬なんですが、珍しい効能が付与されたものでして・・・」


「ほお、その珍しい効能とは何だ」


「はい、”精霊の加護(小)”でございます」


「いっ、今何と言った」


「”精霊の加護(小)”でございます」


「いやまて、”精霊の加護(小)”付きの薬など聞いたことがないぞ」


「もしお疑いになるのであれば、鑑定魔法でお調べになった方がよろしいかと」


「よいのか」


「はい」


エレンは、鑑定魔法で小瓶に入っている黄色い液体を調べる。そして鑑定魔法の結果は、店主の言う通りのものであった。


「たっ、確かに”精霊の加護(小)”が付いておる」


「このような商品は滅多にお目にかかれるものではございません」


「いくらだ」


「金貨10枚になります」


「高いな」


「恐らくこの辺りでこの薬を入荷できたのは当店だけでございます」


エレンは、店主が差し出した薬入りの小瓶をまじまじと見つめると再度の鑑定魔法をかける。だが、何度鑑定魔法をかけようが薬の効能は変わらない。エレンにとって金貨10枚は大金である。だが、こんな効能が付与された薬自体が世の中に存在しないのだ。


「できれば、もう少し欲しいのだが」


「申し訳ありません。次の入荷がいつになるか皆目見当がつきません」


「この薬は、どこで手に入るのだ」


「金貨1枚で」


「はあ?」


「その情報は、かなり貴重でして」


「・・・分かった払おう」


「城塞都市ラプラスです。魔王国の遥か南方に位置する城塞都市だそうです。そこには、この薬よりもはるかに効能の高い薬もあるとか。ただ、その薬は、王族や一部の貴族にのみ売買しているとかでかなりの高額であると思われます」


「その様な情報を金貨1枚で話てもよいのか」


「大丈夫でございます。この薬は、知り合いのロイズ商会より入手いたしました。現在、この薬を扱っているのは、その商会だけでございます。この薬の売買は知り合いの商会や近隣の宿屋のみに限定されており、小売りはしておりません」


「つまり、その商会に行っても私の様な個人には売ってはもらえないと」


「左様です。では、こちらはサービスといたしましょう」


商人は、大きな紙を取り出すとすらすらと国の位置と国境、各都市の位置と馬車の乗り継ぎができる都市や村の場所を書き記していく。


「この地からですと城塞都市ラプラスまで馬車を乗り継いで10日から15日はかかると」


「そんなにかかるのか」


「馬車を使わす徒歩ですと歩き詰めで優に2ヵ月以上はかかります。病に伏せっている方のご病状は分かりかねますが、なるべく早くラプラスへ行かれた方がよいかと」


「ということは路銀もかなり必要となるな」


「はい。往復の路銀やら宿代やら食事代、それに薬の購入代金も考えますと金貨100枚でも少ないかと。そうでした忘れておりました。他国に入るためには入国税、都市にはいるためには都市税が必要となります」


エレンは、腰にぶら下げた袋を取り出すと、商人に袋の中に入っている魔石を見せる。


「これを金に換えられぬか」


「ほお、魔石ですか。鑑定をいたしますゆえしばらくお待ちください」


「当商店をいつもご利用いただいておりますゆえ、色をお付けして金貨133枚とさせていただきます」


「かなりあるな」


「はい。ですがこの金額でも路銀と商品の買い付けを行うとなればぎりぎりかと」


「宿代や食事の代金を削るしかあるまい」


「我々商人は、商業組合の手形を利用しますゆえ、代金の支払いは後払いです。ゆえに取引の場に現金は持ち込みません。ですが商人でない方が品物を売買される場合は、かならず現金取引となります」


商人は、さらに旅路の注意事項などをつらつらと続ける。


「それに主要な街道は安全でございますが、山道などは山賊が出ますし、街中ではスリや置き引きも出ますので荷物は肌身離さずお持ちください。できれば財布などは紐で体に括り付けた方がよろしいかと」


商人の話が終わるのかと思いきや、商人は思い出したかのように話を付け加える。


「ただ、あまりお金に執着されますと背中からばっさりやられる事もございます。金で買える命もございます。ですので、そうならないように移動中も宿屋に泊まる時も寝ている時も絶対に人を信用してはなりません。ご忠告迄に」


「わっ、分かった肝に銘じておく。しかし商人とは大変なのだな」


「はい。そのためこの様な価格になっております」


エレンは、小瓶に入った薬を受け取ると精霊の森へと向かった。


森は、木々が枯れ枝に葉がまばらで森と言える艇を成しえない状態である。


いつ死んでもおかしくないその森がはたして小瓶ひとつの薬でどうにかなるなどど甘い気持ちは持ち合わせてはいなかったが、最後の望みとばかりに精霊の元へと向かうエレンであった。





精霊の森に入るとエレンは、精霊の木の精霊に小瓶に入った薬を差し出した。


小瓶の蓋を開けて黄色い液体を口に流し込む精霊。すると体が淡い光に包まれると精霊の足元の生えている草木がみるみるうちに色づき生い茂る。


「すごいのこの薬、とても効くの。体の中の悪いものが全て洗い流されるようなの」


精霊の木の周囲の木々の葉が勢いを増し、青々とした葉を次々と芽吹き始めた。


「この世界のどこかにいる精霊の力を感じるの。もの凄い力の持ち主なの。その精霊に合ってみたいの」


精霊の木の周囲の森の木々が一斉にうなりをあげて成長し始める。


今までにみたことない精霊の森の成長に思わず身震いをするエレン。


「まさか、たった小瓶ひとつでこれほどとは」


「これがあと数本もあれば火を放たれた森も毒を撒かれて枯れた森も元通りにできるの。いえ、それ以上に森を大きくできるの」


「なっ、ならば、私がその薬を探してまいります。話によるとこの薬以上の効能を持つ薬があると聞き及んでおります」


「それはすごいの。お願いしてよいの」


「はい。必ずや薬を持ってまいります」


エレンは、精霊に一礼をすると旅の支度のため精霊の森を出て村へと戻る。旅の決意を胸に秘めながら。


近隣の人族の村にある商店で黄色のラピリア酒(薬)の小瓶を買ったエレン。


その薬を買い求めるためラプラスへと旅立つ決意をします。


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