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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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78話.お猫サマの日常(2)

さて本日の2話目です。馬車で酒樽を運ぶ子供達とお猫サマです。


当然の様にお約束が・・・。


馬車は、街道をゆっくりとサラブ村へと向かう。


ロイとホリーは、御者席に座り手綱を握り馬車の幌の上にはお猫サマが気持ち良さそうに日光浴を楽しんでいた。


御者席のすぐ後ろには、紙袋いっぱいのパンの耳と水の入った水筒が置かれていた。このパンの耳は、当然お猫サマが買ったものである。


そう、お猫サマは、子供達のことを気にかけていた。だが、甘やかすと直につけあがるため、強い口調で命令していたのだ。


途中、街道で何度となくサラブ村から穀物を運ぶ馬車に出くわす。その度に御者席に座る御者に手を振るロイとホリー。手を振られた御者も笑顔で手を振って返してくれる。


そんなやり取りが何度か繰り返されそろそろ夕日に変わろうかという頃、街道からサラブ村へと進む脇道に入ると山が段々と高くなっていく。あと少しでサラブ村の砦跡にさしかかるという時に事件は起こった。


ラプラスの兵士の姿をした3人が街道に立ちはだかり馬車の行く手を遮った。


「おい、ここを通るなら通行税を払え。これはラプラスの領主様のご命令だ」


ふたりは、馬車を停めると幌の上で寝ているお猫サマに話しかけた。


「お猫サマ。兵隊さんが税を払えって」


「にゃ。税?なんにゃ」


お猫サマは、馬車の幌の上からプヨプヨと浮きながら3人の兵士の頭の上へとやって来た。


「うわっ、なんだ貴様。どうやって浮いている。まっ、まさか魔術師か!」


3人は剣に手をかけると剣を抜く素振りを見せる。


「おかしいにゃ。途中で通行税を取るなんて領主から聞いてないにゃ」


「きょ、今日決まったんだよ」


「それもおかしいにゃ。お猫サマは、朝まで領主と会っていたにゃ。通行税を取るなんて一言も言ってないにゃ」


「我らの言う事が間違っているとでもいうのか。だいたい領主と会っただと。領主様にそう会える訳がなかろう」


「でも命令が出たなら命令書を持っているはずにゃ。領主は必ず命令書を書くにゃ。ほれ、お猫サマも荷物の運搬に領主の名前の入った許可証を書いてもらったにゃ」


「そっ、そんな命令書などない。だいたいにしてお前達庶民に見せる必要はない」


「そうにゃ。ならこれを見せるにゃ」


お猫サマは、首にぶら下げた領主の館の入館証、それに領主の専属職員である身分証を兵士達に見せた。


「お前達、領主の専属職員であるお猫サマに兵士の身分証を見せるにゃ。お猫サマには、領主からその権限を与えられてるにゃ」


嘘である。そんな権限などお猫サマにはない。だが、領主の館の入館証と領主の専属職員の身分証は、兵士の姿をした山賊の心をへし折るには十分だった。


「おまえら剣を抜け。こいつらの積み荷を奪いとれ」


「「おおっ」」


山賊達は、本性を現しお猫サマ達に剣を抜いた。


「ふーん。剣を抜いたにゃ。お猫サマに剣を抜いたにゃ」


お猫サマは、宙を浮くのをやめると地面に両足をつき、両方の猫手に隠していた長く鋭い爪を出して見せた。


「警告にゃ。剣を捨てて降伏するにゃ。これが最後にゃ。剣を捨てるにゃ」


「うっ、うるさい。お前ら、目の前の獣人を殺せ」


「爪研いでやる」


突然お猫サマが突拍子もない事を言い出した。


「爪研いでやる」


そう言うとお猫サマは、道端にある大岩に向かって長く鋭い爪を伸ばすと大岩で爪を研ぎ始めた。


”キーーーーーーー”。


”キーーーーーーー”。


”キーーーーーーー”。


耳をつんざく様な嫌な音が山間にこだまする。兵士に化けた山賊達は、己の耳を両手で塞ぐだけで手一杯だ。


長く鋭い爪は、さらに鋭さを増し最後には大岩を両断して見せた。


「お猫サマの爪は、そこら辺の剣など比較にならない切れ味にゃ。今宵の爪は血に飢えてるにゃ」


お猫サマは、いつの間にか大岩の前から兵士に化けた山賊の前へと移動すると、山賊達が持っていた剣に自慢の爪で切りつけた。


すると山賊達が持っていた剣、いや剣身は、みじん切りとなりポロボロと地面へと転がり落ちる。


「えっ、えーーーーーーーー」


「バカにゃ。お猫サマに剣など通じると思ったにゃ」


さらにお猫サマの爪技がさく裂する。お猫サマは微動だにせずに山賊の武具、シャツ、パンツですら切り刻んで見せた。あまりの爪技に裸のまま立ち尽くす3人。


さらに・・・。


「もう一発かますにゃ。お猫サマの秘儀、剃毛にゃ」


お猫サマが振るった爪は、3人の髪の毛、眉毛、まつげ、髭、胸毛、股間、玉々、ケツ毛、すね毛と、ありとあらゆる体毛を剃り落とした。


3人の体は、ツルツルのピカピカとなり赤子の様な姿になってしまう。


「聞くにゃ。お猫サマが剃毛したら最後、二度と毛は生えてこないにゃ。一生ツルツルにゃ」


「ひっ、ひえーーーーーーー」


「娼館に行っても陰毛もない男とバカにされながら死ぬまで生きて行くにゃ」


「そっ、そんなあ」


「一物と玉々は残してあげたにゃ。それを取ったらお前達の人生終わりにゃ」


「あっ、ありがとうございます!」


何故か山賊達は、大事な一物と玉々を残してくれたお猫サマに”愛”を感じてしまい礼を言う始末。だが、3人の体にはいつの間にか紐が結ばれ、手足の自由が効かなくなっていた。


「さて、3人を馬車でひっぱりながらサラブ村へ向かうにゃ」


「「はっ、はーい」」


御者席に座るロイとホリーは、お猫サマの爪技に度肝を抜かれていた。


「ねえねえ。お猫サマってすごく強いね」


「凄いどころじゃないね。あんな強い獣人なんて初めて見た」


御者席に座るロイとホリーは、お猫サマには絶対に逆らわないと決意をした。




それから間もなくしてサラブ村に到着したお猫サマ達は、手足を紐で結ばれ馬車に繋がれて連れてこられた山賊をサラブ村を守る兵士に引き渡した。


山賊達は、全裸でしかも毛という毛を剃られてツルツルな姿を獣人達に見られ、指を指して大笑いされていた。


明日の朝、馬車から酒樽を下ろして穀物袋を載せたら、またラプラスへと戻ることになる。お猫サマは、馬車の幌から降りると相変わらずプヨプヨと宙を浮きながらいつもの様に移動していると。


「せっ、せっ、精霊神様だ!」


「ほっ、本当だ。精霊神様がご降臨さそばされたぞ!」


いきなり騒ぎたてる獣人達。何が起きたのか分からずじまいのお猫サマ。


「なっ、なんにゃ」


「これは精霊神様。こんな辺境の村にご降臨さそばされるとは」


サラブ村にいる全ての獣人が膝を付き、頭を下げて居並ぶ姿は壮観である。


「おっ、お猫サマが精霊神だとよくわかったにゃ」


「これは、お戯れを。精霊神様の匂いで分かります」


「匂いにゃ。お猫サマは匂うにゃ」


お猫サマは、自身の体の匂いを自身の鼻で何度も嗅いでみる。だが体臭らしき匂いは感じない。


「その逆でございます。精霊神様は体臭が全くありません。人であれ獣人であれどんなに体を洗っても体臭は残ります。ですが精霊神様にはそれがないのです」


「お猫サマも知らなかったにゃ。どうして精霊神に体臭がないって知ってるにゃ」


「実は若い時分に他の精霊神様にお会いしたことがございます。その時、精霊神様には体臭が全くありませんでした。それを覚えておりました。まさか生きている間に精霊神様に二度も会うことができるとは」


初老の獣人の言葉にお猫サマも思わず関心仕切りといった表情を浮かべた。


「それに私共の村には、少ないながらもラッキーキャット族(招き猫族)の末裔がおります。同族が精霊神へと昇華された古い逸話は、獣人の間では有名でございます」


「へっ、今何といったにゃ。ラッキーキャット族(招き猫族)が生きているにゃ」


「はい。ラッキーキャット族(招き猫族)の者は前へ」


4人のラッキーキャット族(招き猫族)が、お猫サマの前へと歩み出す。


「本当にゃ。お猫サマと同じ毛色にゃ。同族が生きていたにゃ」


お猫サマと4人のラッキーキャット族(招き猫族)が泣き出し、お互いの肩を抱き合う。


「夢じゃないにゃ。本当に夢じゃないにゃ」


そんな夢の様な状況であったが直に打ち砕かれてしまう。


砦の城壁の上で夜の警備を行っていた獣人のひとりが足を滑らせて城壁の下へと転落したのだ。


「だっ、誰か城壁から転落したぞ」


皆が一声に城壁の外へと向かう。丸太でできた重い城門扉を必死に開けると、獣人が落ちた場所へと向かった。


「うっ、こりゃ酷い。頭が割れてる。出血も酷いし、首の骨も折れてるんじゃないか」


「これは助からないぞ」


「うっ、嘘だろ。エトーレ、おいエトーレ。返事をしてくれ!」


獣人の男が倒れている獣人の女の元へと走り寄ろうとするが、周りの獣人達に抑えられる。


「無理だ。もう助からん」


「誰か、誰か早く彼女を楽にしてやってくれ。これでは苦しむだけじゃ」


年老いた獣人が幾ばくも無い命の炎がきえかけている獣人を早く楽にしてやれと暗に促す。


そんなところにお猫サマがやって来た。


「あーーーー、これは酷いにゃ。助からにゃいにゃ」


そう言いながらも、どこから出したのか小さな小瓶を取り出すと、割れた頭と折れた首に赤い液体をふりかけ、口の中にも赤い液体を流し込む。


そう、お猫サマが使ったのは、赤色のラピリア酒(薬)である。ちなみに100年酒ではないのでお間違いないよう。


すると、割れた頭も折れた首もあっという間に回復していく。そして城壁から落ちた獣人が微かに声を発する。


「あっ、あれ。城壁から落ちたはずなのに・・・生きてる」


その瞬間。そこに居合わせた全ての獣人が再びお猫サマに膝をつき頭を下げた。


「「「「「「「「我らの神よ!」」」」」」」」


その声は、いつまでも砦跡に響き渡った。


実は、お猫サマの内心はひやひやものである。お猫サマは、精霊神ではあるがその中でも下級神であり、神であっても出来ることが限られている。つまり時を進めたり戻したりは出来るがそれ以外は何もできない。


お猫サマは、重症の獣人を治す治癒の術など使えなかった。だが、カルから貰ったラピリア酒(薬)を持っていたためそれを使い、重症の獣人を治したに過ぎなかった。つまり神の御業を使った訳でもなく持っている薬を使っただけである。


だが、それは傍から見れば神の御業だろうが薬を使おうがどうでも良いことである。その場に死の淵に向かって行く者を現世に甦らせることができる者がいたのだ。


それが全てであった。




次の日。


馬車は、穀物を積んでサラブ村を後にする。


「本当に何とお礼をいってよいやら」


「気にするにゃ。たまたま薬を持っていただけにゃ」


お猫サマは、さらっと自身の神の御業ではなく、薬を使ったと白状した。だが、命を救われた者からすればそんな事など些細なことであった。


「あの、本当に行ってしまうのですか」


「お猫サマは、ラプラスにいるにゃ。領主の館とこの子供達の家のどちらかにいるにゃ。いつでも会えるにゃ」


お猫サマは、そう言うと砦跡を出て行く馬車の幌の上に乗り獣人達に笑顔で手を振る。


砦跡の獣人達は、揃って馬車の幌の上に乗るお猫サマに向かっていつまでも頭を下げて見送っていた。


お猫サマの日常は、今日も平穏無事でありました。


お猫サマの秘技”剃毛”さく裂です。さらに瀕死の獣人を助けたお猫サマ。


あっ、そろそろ盾のダンジョンとか盾の魔人はどうしたと言われそうです。・・・頑張ります。


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