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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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76話.裁定の木の精霊

裁定の木の精霊は、城塞都市ラプラスとその周辺の探索に出かけます。


※本文がちょと長いです。7100文字程度です。ご了承くださいませ。

精霊の森の精霊は、あれ以来何度となくコルナ山の山頂に根を張った裁定の木の精霊に話しかけた。


だが、精霊の森の精霊が何度となく話しかけても一切の返答はなく、裁定の木とは一度も話すことはできなかった。


実は、そのころ裁定の木の精霊は、妖精の姿になり城塞都市ラプラスの街に遊びに来ていた。


城塞都市の住民は、朝起きるとコルナ山の山頂に根を張った巨大な木に一礼をしてから仕事に出かける様になっていた。ラプラスの住民からすれば、得体の知れない木が突然山の上に現れ、それが自ら歩き空を飛ぶのだから神が現れたと考える方が自然である。


さて、妖精の姿になって城塞都市にやってきた裁定の木の精霊は驚いていた。妖精達が朝から普通に街の住民と朝飯を食べ行動を共にしていたからだ。


どう見ても妖精達の姿が住民達に認識されている。1000年前のこの世界には無かった光景である。


しかも街中に植えられた木に成った実を、妖精達と街の住民が仲良く分け合って食べている。それが当たり前だと言わんばかりの光景が精霊の目の前に広がっていた。


目の前を歩く人族の子供は、妖精の姿になった精霊に向かって笑顔で手を振り、ラピリアの実を渡してくれた。


思わず唖然とする精霊であった。街の屋根の上へと飛んでいき、子供から手渡された実を食べてみると、甘いがさっぱりとした果実だ。周りを見渡すと、あちこちの屋根の上で妖精達が同じ実を食べている。


「驚いた。あれから1000年の時が経ったが、まさか妖精と人族が共生する世界が生まれたのか。これでは私の出番など・・・」


だが、事はそう簡単ではない。今でも国同士の争いは続いているし、この城塞都市を庇護している魔王国と人族の王国との間でも数十年に一度は大きな戦争が行われいる。


妖精の姿になった精霊は、まずは街とその周囲の探索を行うことにした。





街中を飛んでいると、ふたりの若者がこんなことを言っているのが耳に入る。


「コルナ山に生えた巨木だけどよ。ありゃトレントのバケモンじゃねえか。足が生えて歩き回るっていやあトレントだろ」


「ははは。ちげえねえ。ありゃトレントだ」


それを聞いた精霊は憤慨した。だが、ここで暴れれると他の妖精達に迷惑がかかると考えた精霊は、あることを実行した。それは・・・。


砂漠が近くに広がる城塞都市ラプラスは、気候は温暖というよりもかなり暑い地域である。そんな地域でも冬になれば稀に雪が降る。だが、今は温暖な季節であるため雪など降らない。


だが、コルナ山の山頂の巨木をトレントだと笑った若者達の足元にはなぜか氷が張っていて、それは当然の様に発動した。


”ツルッ”。


”ドテ”。


「「痛ってえ」」


ふたりの若者は、氷に足をとられてふたり同時に転倒した。


「なんだ?こっ、氷だぞ。なんで今どき氷なんてあるんだ」


さらに次の瞬間。


”ベチャ”。


若者の顔に食べかけのラピリアの実が落ちて来た。果肉と果汁が顔にへばりつき、見るに耐えない姿になったふたりの若者は、近くを歩く街の住民達に思いっきり笑われていた。


腹を抱えて大笑いした精霊は、少し高いところまで飛ぶと街の周囲を見渡す。すると街のすぐ隣りに大きな森が見えた。コルナ山の山頂から飛んで来た時には、あまり気にならかった森だ。


「ほお。こんな大きな都市の隣りに大きな森があるとは。これが妖精達が多くいる理由か」


そんな事を考えながら精霊は、城塞都市のすぐ隣りの森へと飛んでいく。


森に入るとまもなく池の前にやってきた。そこには、精霊の木が茂りこの森の中心地であることが分かる。


「ほお。この精霊の木の精霊が私に話しかけて来たのか。だがまだ話すには時期尚早か」


精霊は、木の枝と葉に隠れて周囲を見回すと、池の中に水龍の幼生を見つける。さらに水龍の幼生は、森の妖精達と楽しそうに戯れていた。不通であれば、水龍の幼生といえども妖精達と戯れることなどあり得ない。


「都市のすぐ隣りに精霊の森があること自体にも驚いたが、その池に水龍の幼生がいることもさらに驚きを隠せない。ここはいったいどういう場所なのだ」


この城塞都市とこの精霊の森が他と違うことにようやく気がついた精霊は、ますますこの城塞都市と精霊の森に興味をいだいた。


精霊は、池から離れると森の入り口にある作業場の近くへと飛んで来た。その作業場からは、なんともいえない匂いが漂い精霊の鼻腔をくすぐる様であった。


「これは酒か。それにしてもなんと美味そうな匂いだ」


作業場の中にはいくつもの大樽が並び、それを人族の子供が馬車の荷台に運んでいた。


精霊が作業場の片隅でその光景を覗いていると、精霊の後ろに誰かが忍び寄る気配を感じ、慌てて後ろを振り向くと・・・。


「にゃ。この妖精おかしいにゃ。なにか変にゃ」


お猫サマが妖精の姿をした精霊をじっと見つめる。


精霊は、冷や汗を流しながら全速力で作業場の裏へと飛んで逃げ出した。だが、お猫サマの俊敏な動きから逃げ出すことなどできない。さらに作業場の屋根上へと逃げ込だ精霊だがお猫サマは”ひょいと”屋根に上がり妖精を追いかけて来る。


そんなお猫サマをカルとライラが制止する。


「お猫サマ。妖精をいじめちゃだめですよ」


「そうですよ。そんな小さな妖精、可哀そうですよ」


「でも、この妖精・・・なんか変にゃ」


「たまには変わった妖精もいますよ。だって精霊神であるお猫サマがいるくらいですよ」


「うーん。それもそうにゃ」


不意に妖精から興味を無くしたお猫サマは、作業場の屋根の上から飛び降りると、馬車の御者席に座る子供に向かって話始めた。


「お前達、腹が空いたら紙袋にパンの耳が入っているから食べるにゃ。こっちの水筒には水が入ってるにゃ」


「うん、ありがとう」


「帰って来るのは明後日にや。おかしなのがいたら、例の魔石筒をこれでもかっていうくらい投げつけるにゃ」


御者席に座る子供達は、お猫サマの言葉を聞きながら、出発の準備にとりかかる。


お猫サマはさらに馬に近づくと馬の耳に話しかける。


「おい、あいつらの言う事をよく聞くにゃ。もし暴れたりしたら・・・馬肉にゃ。わかったにゃ」


馬の目が急に恐怖心に駆られた様な目となった。


「うそにゃ。お猫サマは馬肉が大好きにゃ。わかったにゃ」


程なくして馬車は酒の入った樽を積んで出発した。


精霊は、あの樽に入っているお酒飲んでみたいと思った。だがそう簡単に飲ませてくれすはずもなく、ただ指をくわえて見ているしかなかった。


そんな時、近くを飛んでいた妖精が耳よりな話を教えてくれた。


「あの馬車に積んである樽のお酒、この先の村で作ってるよ。運が良いと酒造りをしているドワーフが飲ませてくれるから行ってみたら」


精霊は、それを教えてくれた妖精に礼をすると一路お酒を造っているという村へと向かった。




しばらく街道の上を飛んでいくとほろ酔い気分で飛んでいる妖精達と出くわす。本当に妖精にお酒を振舞っているドワーフがいるとは精霊も少し驚きを飛び越して引いてしまう。


程なくして先ほどの森の作業場にあった樽と同じ匂いが漂ってくる。その匂いを頼りに酒作りを行っている酒蔵を簡単に見つけることができた。


数人のドワーフと人族の男女が果実を井戸水で洗い、次々を桶の中へ入れていく。


それを潰して果汁を取ると皮や種を布でこして果汁を樽へと詰めていく。


果実の甘い香りが辺り一面に漂い、鼻腔をくすぐる。


果汁を詰めた樽は次々と酒蔵の奥へと運ばれていき、酒蔵の棚に並べられていく。


酒蔵の中へと入り込んだ精霊は、樽の中で徐々に熟成されていく酒の匂いに半分酔いながら熟成された酒の入った樽を眺めていた。


ふと、目の前にある酒とは異なる匂いを感じた精霊は、さらに酒蔵の奥へと進む。そこには、今までとは異なる匂いを発する酒が仕込まれた小さな樽を見つける。


数体の妖精達は、その小樽の前で指をくわえて見ているだけであった。小樽には妖精達が手出しできない様に注ぎ口が厳重に固定されていた。


「ほお、精霊の加護(中)が付与された酒か。これはお目にかかれない代物だな」


鑑定魔法で酒の成分を調べるととても珍しい効能が付与された酒であることが分かる。そもそも精霊でさえも酒に”精霊の加護(中)”が付与されたものなど見たことがなかった。


酒が仕込まれた小樽のさらに先から全く異質な匂いがただよって来ることに精霊は気付く。


「ここには、いったいどれだけの酒が置かれているのだ。しかもこの酒の匂いは神界で飲んだ酒にそっくりではないか」


酒蔵の奥に鍵がかけられた小部屋があり、匂いはその部屋から漏れていた。その扉には、厳重に3つの鍵がかけられており、誰も入ることができない様になっていた。


だが、そこは精霊である。扉の僅かな隙間から”ひょい”と鍵のかかった部屋の中へと簡単に入ってしまう。


目の前には、棚の上に小樽が3つだけ並べられていた。


精霊は鑑定魔法で樽の中の酒を調べてみると驚きの結果が現れた。


「精霊の加護(特)が付与された酒だと。私がこの世界に呼ばれた原因はこれか?」


裁定の木の精霊は、遥か昔に神界に呼ばれそこで神の酒を飲んだことがった。その酒の匂いも味も喉ごしも、全てが今までに飲んだことのない酒であった。


目の前に置かれた小樽からは、まさしく神界で飲んだ酒と同じ匂いがしていた。


「しかし、精霊の加護(中)の酒を数百年熟成させたところで精霊の加護(特)にはならない。いったいどうやったらこんな加護が付くのだ。まさか神の手は入ったとでも」


首をかしげで考え込む精霊。だが、結局どう考えても理由は分からずじまい。ならばと・・・。


「とりあえず少し拝借するとしよう」


どこからか取り出した小瓶を小樽の前に置くと、小瓶の中に樽に入っているはずのお酒が溜まっていく。


「あまり取ると怪しまれるから少しだけ・・・少しだけ」


精霊は、楽しそうに鼻歌を歌いながら樽の中の酒を拝借していく。お酒を小瓶に移し終えた精霊は、鍵のかかった部屋の扉の隙間から出ると、他の樽からも少しづつ酒を拝借して別の小瓶の中へと注いで行く。


お酒が溜まった小瓶は、またどこかに消えていた。手ぶらになった精霊は、酒蔵の棚に置いてある樽の前でこの酒がなぜ精霊の加護を付与されているのか、その疑問を考えて始めた。


「さてと、このお酒がどうやって出来たのか調べて・・・」


精霊は、ふと背後に違和感を覚えた。しかもこの違和感は、さっきも経験したような・・・、振り向くとそこには、したり顔のお猫サマがいた。


「ここでにゃにをしてるにゃ。さては、お酒を盗み飲みするつもりにゃ」


精霊は、慌てて逃げようと身をひるがえした。だがその瞬間、お猫サマの猫手から伸びた長い爪に挟まれて身動きできなくなってしまった。


「ええい離せ。離さないと魔法を放つぞ!」


「にゃ、この妖精何か言ってるにゃ。でもお猫サマにはさっぱり分からないにゃ」


お猫サマは、捕まえた妖精を口にくわえるとカルの元へと走り出した。


「ええい離せ。・・・仕方ない。ここは弱めの魔法で脅かせてやる」


精霊は、得意の氷魔法をお猫サマに向かって放った。だが、いくら魔法を放っても氷魔法が発動しない。


「あれ、どうなってる。魔法が発動しない」


精霊は、もう一度氷魔法をお猫サマに向かって放った。だが何度やっても魔法は発動しなかった。


「なんでだ。どうして・・・」


精霊は、お猫サマに対して鑑定魔法を放つ。すると・・・。






精霊神(下級神)。


時を司る神。


精霊神になる以前は、"ラッキーキャット族(招き猫族)"。


自身に都合の良いことばかり起きる恵まれた種族。だが、それが災いして種族は全て狩られてしまった悲しい過去を持つ。


それを憂いた上級精霊神が下級神へと昇華させた。ところが下級神となったところ”やらかす”神となってしまう。だが、”やらかす”こと自体もラッキーキャット族の成せる技である。






「ほう。魔法が発動しない理由はこれか。仕方ない、少し様子見とするか」


精霊は、お猫サマの口にくわえられ、なすがままの状態でカルの元へとやって来た。


「カル、カル。この妖精が酒樽の前で酒を盗み飲みしようとしてたにゃ」


お猫サマが得意げに口にくわえた妖精をカルに差し出す。


「ラピリア酒なら、ここにくれば飲ませてあげるのに。もしかしてここには初めて来た妖精さんかな」


カルは、目の前に置いた器にラピリア酒をなみなみと注いでいく。それを生唾を飲み込みながら待つ大勢の妖精達。


「皆さんのおかげで畑の実りが良くなっていますから、遠慮せずに飲んでくださいね」


ライラが優しい口調で妖精達にラピリア酒を振舞う。


妖精達は、一斉にお酒を飲みだすと途端に顔が赤くなりほろ酔い気分になり、床で寝入るもの。宙を飛びながらフラフラと寝入るもの。そんな妖精達で部屋中が溢れかえる。


お猫サマから解放された精霊も器に注がれたラピリア酒を勢いよく飲み始める。


「これは美味。なんという芳醇な香り、ふくよかな味わい。こんな酒を作りそれを妖精達に分け隔てなく振舞うとは・・・」


精霊は、器に注がれた酒を飲む妖精達を笑顔で見る人族と精霊神の顔をのぞき込む。


「わしがこの世界に再び呼び戻された理由は分からんが、こやつらと何かをさせるつもりなのか・・・」


精霊は、首をかしげながら考えてみるものの、先ほどと同じ様に答えは出ずしまいだ。


「まあ、そのうち何か分かるであろう。どうせ私がこの地に来たのも裏で神々が糸をひいているに違いない。どうせ神々のすることなど大したことではないさ」


あっさりと考えを切り替えた精霊は、カル達と行動を共にすることにした。行動を共にと言ってもただ付いていくだけで”実は私は裁定者です”と白状する気はさらさらない。それはこの者達といればお酒が飲めるからという至極安易な発想からであった。




精霊は、酒を飲み少しほろ酔い気分になりながら何気なく作業場の机の上を見た。そこには、作成途中のいくつかの盾と短剣が置かれていた。


問題は、その盾に刻印されていた魔法陣だ。盾に刻印された魔法陣は精霊界で使用されているものであり、この世界にはないものばかりだ。


それを見た精霊は、思わず盾の前に飛んでいくと盾にはりつき刻印をまじまじと見つめた。


「なっ、なぜ精霊界の魔法陣がこの世界の盾に刻印されているのだ。そっ、それにこの短剣の魔法陣も精霊界のもの、なぜだ!」


精霊は、はっとして自身の背中を見る目線に気が付いた。


「やっぱりあやしいにゃ。この盾の魔法陣が気になるにゃ。この魔法陣の意味を知ってるにゃ。これが分かるのは精霊のみにゃ」


精霊は、額から大きな汗を流しならもそっぽを向いて口笛を吹き始めた。


「やっぱりあやしいにゃ。この妖精・・・精霊にゃ」


だが、その場にいた者達は、まぜかお猫サマの言葉を全て無視した。


そう大人には”大人の事情”というものがあるのだ。分かって欲しいお猫サマ!






その夜、カルについて来た精霊は、領主の館に入るとカル達と夕食を共にした。


「まさかこの人族の少年がこの城塞都市の領主だとは思ってもみなかった。これは、いろいろ都合がよいな」


精霊は、裁定者として世界の情勢を覗き見ることはできる。だが、それだけで裁定の判断材料にしようと思うことを辞める決意をした。そう、1000年前は、裁定を下す判断材料を安易に決めすぎだったと今更ながら後悔したのだ。


その判断材料をこの領主である少年から得ようと精霊は考えていた。




その日の深夜。


皆が寝静まった頃、カルの部屋を訪れる者がいた。


「お休みのところ申し訳ありません。食堂に見慣れない者達が集まっておりまして。その中に領主様の専属職員の方もおられたのでもしやと」


カルは、夜勤で警備を行っているふたりの兵士と共に領主の館の食堂へと向かった。


食堂の扉をそっと開けて中を覗き込むと思わぬ光景が広がっていた。


「お前さんの言いたいことは分かるのじゃ。じゃが裁定の木が現れた今となっては、お前さんの魔人達では歯が立たんのじゃ。300年前の大戦の時、裁定者はいなかった。それが分からん訳ではあるまい」


「でもなの。神々のやりように我慢ができないの。それは分かって欲しいの」


青年の姿になった剣爺がカルの大盾のダンジョンに住む精霊ホワイトローズと言い合っている。


「何度か話しかけたの。でも裁定者は返答してくれなかったの。悲しいの」


精霊の森の精霊は、少し悲しげな表情で器に注いだ酒をつらつらと飲んでいる。


カルについてきた精霊は、いつの間にか剣爺や精霊の木の精霊達の輪の中に入りお酒を飲んでいた。しかも食堂のどこかに保管してあったナッツの詰め合わせを持ち出し、リスの様に両方の頬にいっぱい詰め込んでもしゃもしゃと食べていた。


”ジィーーーーーー”。


その姿を見つめるお猫サマ。


「やっぱり怪しいにゃ。この妖精からは、精霊の匂いがプンプンするにゃ」


思わす額から冷や汗を流す精霊。


「まさかこの妖精。裁定者が化けてるんじゃないかにゃ」


お猫サマが言った何気ない言葉。皆がナッツを頬張る妖精に目線が釘付けとなる。だが、誰もその事に対して何も言及しない。


実は、皆もうすうす気が付いていた。この妖精が裁定者ではないかと。だが、それを言えずにいたのだ。もし裁定者が目の前の妖精だったとして、いったい何を言えばよいのだ。


「あなたは、何のをしにこの世界に来たのですか」


などとは、口が裂けてもいえない。そもそも精霊の木の精霊に誤った酒を飲ませたために呼ばれましたなんて誰が言えようか。


ただ、その場の空気を読めないお猫サマだけがその妖精が裁定の木の精霊だと口にした。思わず皆の額から冷や汗が流れ落ちる。


”頼む。頼むからそれ以上言わないでくれ。お願いだお猫サマ!”


皆の願いは、その一言に尽きるのであった。


いつの間にか神様と精霊の輪の中に入ってしまった精霊”裁定者”これからどうなるのか。


※お猫サマは、いつでもマイペースです。


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