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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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74話.想像を絶する薬の効能(5)

改元おめでとうございます。”令和元年”最初の投稿となります。


昭和、平成、令和ですか。歳取ったな~。


精霊の森を出て作業場へと帰るとお猫サマが馬車尾の幌の上で気持ち悪そうにしている。案の定というか幌の上から吐いた模様。


お猫サマを幌の上から馬車の荷台に降ろすと顔は真っ青。ラピリア酒は酒ではあるが薬でもある。それを飲んだお猫サマはなぜか気分が悪いと言う。ただ、薬といえども摂取する量を間違えるとこうなるという教訓として覚えておこうと思ったカルであった。


”用法容量は正しくお使いください”である。


可愛そうなので、領主の館に戻りベットに寝かせることにした。


「気持ち悪いにゃ。口の中がすっぱいにゃ」


見ていて痛々しいお猫サマ。とても精霊神には見えないところが、逆に可愛いと思える。


精霊の森の作業場から馬車で出ると間もなく城塞都市ラプラスの城門に到着する。


「警備ご苦労様です」


御者席で馬を操るライラが警備隊の兵士に挨拶をする。馬車には、領主が乗る馬車と分かる札を張ってあるので兵士達も敬礼をしつつすんなりと通してくれる。


そもそも精霊の森に面する西側の門は、殆ど誰も使わないためカルが精霊の森への出入りのために使う専用門と化していた。


馬車は、専ら作業用の荷馬車なので領主が乗っているとは誰も思わない。さらにお酒の入った樽を積んでいる荷馬車など誰も見向きもしないので、領主であることを悟られない荷馬車はカルにとっては好都合であった。


領主の館に戻り、用意されたばかりの部屋にお猫サマを案内し、部屋のベットに寝かしつける。普段お猫サマは宙を浮いているため体重が無いように思えたが、カルがお猫サマをかかえて運んでみたところ普通に体重があった。とはいえ、普通の人族よりもかなり軽い。やはり精霊神だから人族や獣人とは違うのだろう。


ちなみにお猫サマは女性であった。獣人の場合、人族には以外と分からないのが性別である。これはデリケートな話なので本人が言わない場合、カルはあえて聞かないようにしていた。


ところが、具合の悪いお猫サマをかかえて運んでいる時に、服の上からふくよかな胸に触れてしまった。服装は、冒険者の様なローブ姿だったため見た目には判別できないのだ。


さて、お猫サマを寝かせた頃には、日も陰りそろそろ夕食という頃合いになった。


領主の館には、職員用の食堂があり、朝、昼、夜の食事を格安で提供している。カルは、朝と夕を食堂でとり昼は街中の行きつけの食堂でとることにしていた。


領主の館の食堂は、以前はあまり利用する人がいない閑散とした食堂であったが、あるものを置いた途端利用者が増えてしまい、食堂を切り盛りする調理師さんを追加で雇ったほどである。


それは・・・、食堂で夕食を食べると黄色いラピリア酒が1杯無料になるというサービスを始めたのだ。当初はラピリア酒の味についてし好調査を行うつもりで始めたカルだった。


ところが、あまりにも利用する人が増えたため、食堂で食事をとる人には、最初の1杯だけ無料として、2杯目以降は有料としたのだが・・・。


「ちょっとあんたたち、最初の1杯は無料だけど、いくら有料だからってそう何杯も飲まないでおくれよ。これじゃ樽を置いてもあっと言う間に樽の酒がなくなっちまうじゃないか」


食堂の責任者をしている”おばちゃん”があまりにも樽の酒が消費されるのが早いため苦言を呈していた。


「まあ、そう固いこと言うなよ。ちゃんとつまみも多めに注文してるからさ」


「まあ、こっちも注文される料理が多くて助かるんだけどね。でも、酒は街の酒場で飲んでもらった方が街が潤うんだよ。最近、街の酒場から領主の館の職員が酒を飲みに来ないって苦情が来てるんだよ」


「えっ、それはすまない。だけどこの酒はここでしか飲めないからな」


「まあ、そうだよね。飲むと疲れがとれたり病気が治る酒なんてないからね」


「そうだよ。今夜の酒で明日の仕事がはかどるんだ。大目に見てくれよ」


「俺なんか病気になるとわざわざこの酒を飲みに来る始末さ」


「ふう。ものは言いようだね。単に酒が飲みたいだけじゃないのかい。まあ、ほどほどに飲むんだよ」


酒樽の前には、長蛇の列ができており酒樽の前に置かれた箱の中には、酒代の硬貨が山の様に積まれている。


お酒が異様に好評のためか、それに相まって酒のつまみの料理も飛ぶ様に売れる。領主の館の食堂は、食堂であって酒場ではないため、ある程度の時間になると閉めてしまうのだが、職員から食堂を閉めるのが早すぎるという意見が多くなり毎晩遅くまで開く様になっていた。


こんな光景をカルやライラが見ながら夕食を食べていると、渋い顔をしたお猫サマが食堂に入ってきた。


お猫サマは、まだ領主の館の食堂を使ったことがなかったが、誰かに聞いてやって来たようだ。


「お猫サマ。体調の方は大丈夫ですか」


カルは、まだ渋い顔をしているお猫サマに駆け寄るとお猫サマに話しかける。


「なんとか大丈夫にゃ。非常時に使える万能薬を飲んだにゃ。でもなんでお猫サマだけあのお酒が合わなかったにゃ。城壁の上で飲んだときは、はなんともなかったにゃ」


「まあ、そんなこともありますよ。それより食事どうされます」


「たべるにゃ」


「ならこっちです」


カルは、お猫サマに食堂の使い方。料金の支払い方を案内する。お猫サマは、精霊神であるがゆえお金を持っていない。お金の使い方については、ライラの体の中にいた時に、ずっと見ていたので理解していたらしい。


お猫サマは、ライラ同様カル専属の職員として身分証と領主の館の入館証を発行された。当面必要となるお金の出処もカルである。


ちなみにお猫サマは、気分がまだ良くないとかで塩焼きした川魚を3匹ほど注文した。


城塞都市ラプラスは、大きな湖であるセスタール湖が近いためか、魚を食べる習慣がある。煮たり焼いたりして食べるのだが、お猫サマは酒の肴として用意された焼いた川魚を頭から骨ごと食べていた。


もうバリバリと威勢の良い音を発しながら頬がリスの様に膨らみ、勢いよく骨ごと飲み込む。


それを見ていた職員達は、お猫サマの魚の食べっぷりに度肝を抜かれていた。いくら魚好きな者が多いラプラスの人達でも魚を骨ごと食べる人はいないのだ。


並べられた3匹の魚は、あっという間に無くなるとお猫サマはこう言った。


「今日は、気分が悪いから魚3匹しか食べられないにゃ」


「「「「「おおっ」」」」」


お猫サマの食べっぷりを見ていた職員達は、思わず驚きの声を上げずにはいられなかった。




夕食を食べ終えたカル達は、各自の部屋に戻ると寝るまでの時間をのんびりと過ごす。


そんな時・・・。


「カルよ。カルよ」


カルを呼ぶ声がする。いつも聞きなれた声・・・かと思いきやなぜか声が若く感じられる。カルは振り向くとテーブルの上に置いた短剣を見た。そこには剣爺・・・ではなく青年の姿をした小人が立っていた。


剣爺から渡された短剣には、剣爺と剣爺の世話をしているという小人が住んでいる。ただ、小人さんはあまり出て来ることはないので、専ら剣爺と話をする機会が多くなる。


「どちらさまでしょうか」


「わしじゃ、剣爺じゃ」


「えーと、剣爺は長い髭の生えた老人の姿をしているはずです」


「そうじゃよ。じゃがわしは若返ったのじゃ」


「えっ、神様って若返るん・・・そうか神様ですもんね」


「違うのじゃ。神でも若返るにはそれ相応の力が必要なんじゃ。じゃがな、どうも皆で飲んだあの酒のせいで若返ったようじゃ」


「えっ、あのお酒って若返るんですか」


「どうもその様じゃ。いや、わしも神としてはそれなりに歳を取ったつもりでいたが、まさか若返るとは驚きじゃ」


「ちょっと待ってください。あの時、お酒を一緒に飲んだお猫サマは、気分が悪くなって吐いたと言ってました。ということは、ドワーフのバレルさんはどうなったんでしょう」


「それは分からん。じゃが、わしもあの後の様子は見ておったのじゃ。裁定の木じゃな。あれが出て来るとは驚いたのじゃ。精霊があの酒を飲むと裁定の木が生まれるとは・・・」


「そうなんです。しかも城塞都市ラプラスほどもある幹の大きさで自力で歩いたり空を飛んだりしてました」


「それが驚きじゃ。わしの知るかぎり裁定の木は、歩くことはあったが空を飛ぶことはなかったのじゃ」


「・・・やっぱり歩くんだ。でも、あれだと巨大なトレントですよね」


「そうじゃな。じゃがカルよ、それだけは絶対にあやつの前で言うでないぞ」


「えっ、裁定の木の前でですか」


「いや、裁定の木には精霊がおるのじゃ。そやつは、自身の分身である裁定の木が巨大トレントであると言われるのを嫌っておる。それをあやつの前でいうと三日三晩荒れ狂うのじゃ」


その話を聞いてカルは思った。実は、裁定の木の精霊というのは、人格者ではなく自分勝手な振舞いをする危ない精霊なのではと。


剣爺まで若返ってしまいました。もう誰にも止められない100年酒です。


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