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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第3章》精霊と妖精の城塞都市。
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72話.想像を絶する薬の効能(3)

カルが取り違えたラピリア酒は、精霊の森の精霊が飲んでしまい大変なことが起きます。


精霊の木の精霊が言うには・・・。


「近くの村でお酒を造っているドワーフ族がラピリアの実で美味しいお酒を造っているって言うの。そのお酒を妖精達が何度も飲ませてもらったって言うの」


間違いなくドワーフのバレルの家だ。しかもお酒をもらったのではなく、勝手にお酒を拝借している妖精達のことだ。


「そのドワーフの家でお酒作りが行われる時にカルの姿を見たっていう妖精がいっぱいいるの」


「あーーーーー、そうですね。それは多分僕です」


「そうなの。そのお酒を少し飲んでみたいの。いえ、ほんのひとくち飲んでみたいの。ほんのひとくちでいいの」


精霊の木の精霊の目が潤んでいて目に涙まで浮かべている。


「普通は、こんなお願いなんてしないの。本当にしないの。本当に本当なの」


「わっ、分かりました。では、ここではあれですから、精霊の木の前でどうですか。妖精達もごいっしょに」


「本当なの!嬉しいの」


カルは、作業場に保管した大樽と小樽を腰にぶら下げた鞄の中へ放り込んだ。だが、この時、お猫サマにより100年の時が進められた小樽と赤いラピリア酒の入った小樽を取り違えて鞄の中に放り込んでいた。


それが悲劇の始まりというかこの世界の理を少しだけ変える出来事が起こる始まりであった。




精霊の森へと入り精霊の木の前にある池に精霊と妖精達が並ぶ姿は壮観である。


さらにドリアードやトレント、それに今まで見た事のない魔獣までいる。この森の管理者である精霊との約束でカルとその仲間達を森に住む魔獣達は襲わないという約束が取り交わされていた。だが、魔獣が目の前にいると怖いと思ってしまうのも本音である。


さて、作業場から持って来たいくつかの器には大樽に入った黄色のラピリア酒(薬)をふるまう。妖精達も魔獣達も美味しそうにお酒を飲んで楽しんでいる。


「では、私も飲むの」


「お待ちください。精霊の木の精霊さんには、この特別なお酒をご用意いたしました。このラピリア酒は、普通の黄色いラピリアの実ではなく、赤色のラピリアの実を使ったお酒です。このお酒は、妖精達も飲んだことはないはずです」


「何が違うの」


「はい。黄色いラピリア酒には精霊の加護(小)が付与されておりますが、赤色のラピリア酒は、精霊の加護(中)が付与されています。精霊の加護が付与されているお酒は、この世界に前例がないと聞いています」


「それはすごいの」


「はい。実は、もうひとつ特別なお酒があります。そのお酒には精霊の加護(特)が付与されておりまして・・・」


カルは、話しながら小樽から赤色のラピリア酒(薬)を小さな器になみなみと注ぎ、精霊にその器を差し出す。


「3体の妖精にふるまったところ、精霊の木の精霊に進化してしまいました」


「ブッーーーーーーーーーーーー」。


小さな器になみなみと注がれたラピリア酒を口に含んだ精霊は、思わずお酒を口から勢いよく池に向かって噴き出してしまった。



「そっ、その妖精から精霊に進化した者達は・・・どうなったの」。


青い顔をした精霊は、恐る恐るカルに妖精から進化したという精霊達のことを聞いてみた。


「はい。各城塞都市の近くに精霊の森を作り、今は精霊の森の管理者としてがんばっています」


「・・・そっ、そうなの。妖精からいきなり精霊になったの。それは凄いお酒なの」


「ええ、こちらのお酒はそれではありませんので安心してください」


カルは、そういうともう一度、小さな器にお酒をなみなみと注いで精霊に差し出した。


「どうぞ」


「はいなの」


精霊の木の精霊は、カルが差し出した小さな器のお酒を口の中に流し込み、心地よい喉音を鳴らしていく。


「美味しいの。凄く美味しいの。こんなお酒は初めてなの」


精霊の木の精霊は、器に注がれたお酒を一気に飲み干した。精霊の顔は、ほんのり赤くなり目が少しうつろになっていた。


精霊の木の精霊は、空になった器をカルの前に差し出した。


「もう一杯欲しいの」


「はい。どうぞ」


カルが小樽から器になみなみとついだ酒を精霊に手渡す。


その酒を一気に飲み干す精霊。


酔いが回ったのか先ほどよりも目がとろんとし始めた精霊は、なんだかお腹の辺りに違和感を覚えた。


「何かしら・・・何かお腹に違和感があるの」


そう言った精霊は次の瞬間、とんでもない声を発し始めた。


「あっ、あっ、いけないの。いけないの。辛いの。苦しいの。嫌。こんなに皆が見ている目の前では嫌なの」


いきなり皆の前で悶え苦しみだす精霊。


「あっ、凄い。凄・・・あーーーーーー。はぁはぁはぁ。凄い絶頂感。いや、また、また来るの。タマラナイ」


思わず目の前でもだえ苦しむ精霊が発する言葉に顔を赤らめるカル。


精霊は、数百年の歳月を生きているが姿は、人族の少女の姿と同じ。いくら服を着ているとはいえ、そんな姿をしている者が己の腹と秘部をさすりながらもだえ苦しむ姿は、さすがにイケナイものだと判断したライラは、思わずカルの目を手の平で隠して見えない様にした。


「カルさん見ちゃダメです。絶対に見てはいけません」


だが、カルの耳には精霊のもだえ苦しむ淫靡な声だけが聞こえてくる。それが余計に想像力をかき立たせてしまい、思わずカルの男が反応してしまう。


「あっ、ダメ、もう我慢・・・できない。いっ、いっ、いくーーーーーーーーーーー」


精霊は、今までで最も大きな声を発した。その途端、精霊のお腹の中から白く光り輝く玉の様なものが現れ空高く舞い上がる。


その光り輝く玉は、精霊の森の上空を縦横無尽に放射上に飛び始めた。


右に行ったと思えば左に、左に行ったと思えば右に。光は、昼間だというのに光の軌跡を残しながら延々と飛び続け、光の軌跡だけで精霊の森の上空を輝く光の雲を作るほどであった。


やがて城塞都市ラプラスの背後にそびえるコルナ山の山頂へと到達すると、その山頂に降り立つ。


”ずん”。


光輝く玉が降り立った山頂には、突然大きな木が現れた。


コルナ山の山頂に現れた木は、みるみるうちに成長していく。その成長していく様は、あまりにも不自然であった。先ほどまでは、コルナ山の山頂に”大きな木”が出現した程度だったのだ。


それが今では城塞都市ラプラスを囲う城壁程もある幹の太さにまで成長していた。


だが、コルナ山の山頂に出現した巨木は、巨大ではあった。だが、雲をも超える程の高さは持ちえなかった。かわりに城塞都市ラプラス程もある幹の太さを持っていた。


まさに堂々たる貫禄のある巨大な木である。


誰もがコルナ山の山頂に出現した巨木を片津を飲んで見守る。


思わずライラが言葉を発した。


「あれは、御伽噺に出て来る世界樹ですか?」


だが、ライラの言葉に精霊の木の精霊が反論する。


「あれは伝承にある世界樹ではないの。伝承にある世界樹はもっともっともっと高いの。あんなずんぐりむっくりな木じゃないの。あれは恐らく”裁定の木”なの」


「裁定の木?」


「そう裁定の木。あの木に宿る精霊”裁定者”は、この世界で起こる大きな争いを見つけると紛争地に赴き裁定するの。でも伝承のはこうあるの。”裁定者は、当事者のどちらにも味方しない。当事者を裁定し断罪するのみと”。ただ、稀にどちらかに肩入れをする場合もあるの。実際のところよく分からないの」


「つまり戦争が起こると、どうにかして戦争の当事者同士に罰を加えるとか。まるで喧嘩両成敗だね」


「伝承に詳しいことは残っていないの。でも裁定の木がこの世界に生まれたのは1000年以上も前らしいの」


「ひえーーーー。1000年、凄い昔なんですね」


「あれは、私とカルの子供なの。ふたりではぐ組んだ愛の結晶なの。初めてのふたりの共同作業なの。頑張って生んだの」


精霊の木の精霊は、なぜか顔を少し逸らしながら目線はカルに向けて頬を赤らめた。


「ちょっとカルさん。私というものがありながらあんな子供と・・・子供と・・・子供をどうやって作ったんですか」


ライラは、カルの両方の頬を両手でこれでもかというほどひっぱった。


「そんな。僕は何もしてませんよ。だってライラさんとはいつも一緒じゃないですか」


「あっ、それもそうね」


「でしょ。だったら子供ができるのはライラさんやメリルさんの方が先ですよ」


「えっ、えーーーー。カルさんは、私と子作りが・・・その、したいの」


「えっ、そんな事言ってないですよ」


「・・・じゃあ、私と子作りするのは嫌なの」


「そうも言ってません」


「どっち。どっちなの!」


ライラは、今までに見せた事がないほど積極的にカルに言いよる。返答に困ったカルは、どうしていいのか分からず困り果ててしまい、そんな時・・・。


”ずん”。


裁定の木は、コルナ山の山頂におろした巨大な根を自らが引き抜くと、軟体動物の様に根をくねらせ足の様に動かすとおもむろに歩き出した。まるで海にいるタコの様に・・・。


裁定の木が生まれてしまいました。でも100年酒を飲んだ妖精や精霊により効能がまちまちです。


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