06話.盾のダンジョン第0階層
カルの持つ盾の魔人に飲み込まれた鬼人族の少女達が、どうなっていたかというと。
話は、少し前に戻ります。
ルルは、霧が立ち込めた広い場所に立っていた。どうしてこんな場所にいるのか記憶がない。
視線を動かすとリオとレオがいた。ふたりとも立ったまま視線は定まらずただ遠くを見つめていた。
私は何をしていた。
人族の子供と戦っていた。
大きな”くち”"のある大盾に飲み込まれ・・・・・・。
「飲み込まれた!」
「リオ!レオ!」
「「あ、ルルさま。おはようござ・・・・・・」」
「何を呆けている。魔人はどうした。ここはどこだ!」
辺りを見回すが濃い霧が立ち込めていて周りの様子がつかめない。
「この感じはダンジョンのようですが、頭に痛みを覚えてからの記憶が・・・・・・」
「我らは、あの盾の魔人に食われたのだ。だが気がついたらダンジョンの中ということか・・・・・・いったい」
ルルが今までに入ったことのあるダンジョンのどの層にも、こんな広いエリアなど記憶にない。ひとつの柱もなく、天井は果てしなく高く、四方を見ても壁らしきものは見えず、それでいて霧で視界は悪く、足元さえも殆ど見えない。
つまり、今までとは全く異なるダンジョンということか。
「リオ、レオ、装備はあるな。ならば、進むしかあるまい。こんな視界の悪い場所で魔獣と遭遇したら勝ち目はないぞ」
「「はい」」
ルル、リオ、レオの3人は、ダンジョンの中をゆっくりと歩きだした。稀に何かの音が響き渡る。遠くで誰かの叫び声が聞こえる。これは精神的に痛めつけられるな。こんなダンジョンは初めてだ。
不意にルルの足に何かが当たった。足元に目線を向け、霧が薄くなるのをじっと待つ。
すると、箱の様なものが見えた。形はかなり小さいが、いや、その箱の隣にも箱が見える。その隣にも。
ちょうどその時、霧が少しずつ晴れてきた。そしてこのフロアの全貌が3人の視界に初めて明かされた。
「宝箱・・・・・・、いやミミックです」
辺り一面に等間隔に並んだ宝箱が数百、いや数千という数で並んでいるのがみえる。
「これが全てミミック」
「まさか・・・・・・」
「ミミックそれ自体の戦闘力は大したことはない、けれど・・・・・・この数に襲われたら対応できんぞ」
「とにかく走れ。ミミックの集団から逃げるぞ」
「「はい」」
3人はダンジョンの果てしなくミミックが並ぶフロアを走りだした。だが、いくら走ろうともミミックのフロアを抜ける出口は見つからない。
「助けてくれ。ミミックが・・・・・・」
不意に男が叫びながら走ってきてた。だが、3人に気が付かないのか叫びながら通り過ぎて行ってしまった。
「あれは、わが部隊の兵士です。もしかするとダンジョンに飲み込まれて生きている者がいるかもしれません」
「とにかく出口を探そう。兵士達の捜索はそれからだ」
3人は、またダンジョンの果てしなくミミックが並ぶフロアを走りだした。
「助けてくれ。ミミックが・・・・・・」
不意に男が叫びながら走りすぎて行った。しかし、この声、さっきも聞いた覚えが・・・・・・。
ルルは、何かすごい違和感に襲われた。先ほど通り過ぎた兵士とまたすれ違う?同じところをグルグルと周回・・・・・・。
「先ほどの兵士だが」
「はい。同じ声の同じ兵士でした」
「つまり、同じところを延々と周回しているということか」
「そんな・・・・・・」
「まさか・・・・・・出口はないと」
「おそらくな」
3人は足を止め、この先の行動について話をすることにした。また靄が濃くなり足元があまり見えなくなった。それどころか腰から下すら見えない程の濃い霧が立ち込めてきた。
リオは、自身の足を誰かが掴んでいる感覚に襲われ、目線を自身の足へと向ける。
濃い霧でよく見えないが目を凝らすとそここには、ミミックの中から伸びた手がリオの足を掴んでいた。
「ひっ・・・・・・」
「「リオ、リオどうした」」
ルルとレオが悲鳴を上げたリオの顔を見ようと・・・・・・、だが、そこには既にリオの姿はない。
「リオがやられた」
「ルル様!」
「このミミック。ただのミミックと思わない方がいいな」
「はい」
「立ち止まるのはまずい。とにかく歩こう」
ルルは歩きだし、後ろをレオが歩いているはずなのだが、なぜかレオからの返事はない。
「レオ。レオどうした。レオ」
ルルが振り返ると、そこにはレオの姿はなかった。
「レオもやられたのか」
とにかくこの場に留まる方が危険だ。とにかく歩くしかない。
不意に誰かが足を掴んだ様な感覚に襲われたルルは、手に持つ槍で足元を切りつけた。
だが、そこには魔獣の姿もなく、誰もおらず何も残ってはいない。
相変わらず霧が立ち込めるフロアは視界が悪く、もしミミック以外の魔獣がいても見つけることはかなりの困難を伴うと思われた。
また誰かが足を掴んだ様な感覚に襲われた。しかも今度は多数の手の様なものが足を掴んでいる感覚がある。
ルルは、目を凝らして自身の足元を見つめる。すると、そこには、自身の足を掴む多数の手があった。その手は全てミミックの箱の中から伸びている。
「ええい、こんなもの」
思わず槍を振るうルルだったが、槍は微動だにしない。いくら力を込めても槍は動かない。今度は槍に目線を移すと十数本の手が槍を掴んでいた。
「ここまでか」
そう言い残した瞬間。ルルはミミックの箱の中へと消えていった。
鬼人族のルル、リオ、レオの初めての盾のダンジョンはこうして終わりを迎えた。
盾のダンジョンは、復活したばかりなので、ミミック以外の魔獣はいないという設定です。