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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第2章》 都市が増えました。
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59話.商人との出会い

投稿予定のお話がひとつ消えてしまいました。


サラブ村で出会った商人は、山脈の向こう側にあるラドリア王国から来たという。


名前をロイドといい、ウエスト子爵の領地で商会を営んでいるそうだが、ウエスト子爵の領地でもベルモンド商会の力は絶大で領民が作った穀物を安く買いたたかれていたらしい。さらにそれに抗議をすると買い取りを拒否される始末。倉庫には売れ残った穀物の在庫が山の様に積まれているという。


それは、カルにとっては宝の山の様な話で、すぐにでも買ってラプラスに戻りたいと思う程であった。


だが、山脈を越える道は険しく人が歩いていくのがやっとで馬車が通れる道ではないとのこと。さらに、この砦の村サラブ周辺には、殆どオークを見かけることはなくなったが、山道を行けばまだまだオークが多く出没するのでかなり危険らしい。


そんな危険をおかしてまでサラブ村に来た商人にカルは興味を持った。


商人に扱う商品の種類や、どれくらいの量までなら売買可能かなどを聞き、3つの城塞都市を十分以上に賄うことが可能だと分かると、商人のロイドに同行してウエスト子爵の領地へと行くことを決めたカルであった。


商人のロイドに話をつけてサラブ村を出て一緒にウエスト子爵領へ向かうのは、2日後となった。カル達は、それまでは、このサラブ村でのんびりと過ごすことにした。





その夜、久しぶりに剣爺と語らうことになったカル。


「カル。人に殺されそうにった気分はどうじゃ」


「うん。正直怖かった」


「そうであろうな。わしは、カルに盾を与えたが剣を与えることはせなんだ。理由は分かるか」


「うん。なんとなく」


「魔獣を相手に剣を振るうのも人を相手に剣を振るうのも、剣を使うという意味では同じじゃ。じゃが同じ種族で殺し合う。異なる種族が殺し合う。それにどんな意味があるのか少し考えてほしいのじゃ」


「剣爺は、僕が剣を持っていたら人を殺していたと思う?」


「そうじゃな。カルは、腰に爺さんが使っていた古い剣をぶら下げておるが、戦いで一度も抜いておらぬな」


「うん。僕が剣を振るったところで当たらないし」


「まあそうじゃな。じゃがな、そんななまくら剣でも当たれば人は死ぬのじゃ」


「確かに」


「カルは、盾から出した金の糸で沢山の人々から武具を奪ったが、それを根に持ちカルを殺そうとした者はおったか」


「・・・・・・」


「じゃが、もしカルが誰かを殺しておったらどうじゃったろう」


「・・・・・・」


「人を殺せば恨みを買い、誰かがその者を殺そうとする。それが人という存在じゃ。わしは、カルにそうなって欲しくはないのじゃ」


「うん。僕もそう思う」


「世の中には、勇者という者がおる。神からスキルを授けられ、強力な武具を渡され、魔王を倒せと命じられた者達じゃな。じゃが、魔王は本当に悪者なのか。世界を征服するだとか何十万人もの人々を殺したり殺せと誰かに命じたのか。本当にそうなのか考えて欲しいのじゃ」


「僕の街があるのも魔王様の国だけど連合王国と何百年も戦ってるって聞いた。ずっと負けているらしいけど」


「少なくとも今の魔王は、自ら他国に戦争をけしかけたりせなんだな」


「剣爺は、今の魔王様を知ってるの」


「大昔にほんの少し会話をしたことがあるだけじゃがな。カルも近いうちに魔王と合う機会があるやもしれん。その時に魔王という者を臆せずに見て欲しいのじゃ」


「うん。覚えておく」


「わしは、まだ神として若かった頃に創造神様にかみついたのじゃ。人に魔王を殺せと武器を渡すのはおかしいとな。すると、物事を知らぬ若造がと罵られ創造神様に笑われたのじゃ。結果、盾に封印した精霊が世に出てこれぬように見張りを言い渡され、わしも短剣に封印されてしもうた。最初は、創造神様を呪ったのじゃ。じゃが、この役割にも何か理由があるのでないかと考えはじめての、それからというもの”その時”を待つことにしたのじゃ」


「神って凄い力を持っているって聞いていたから楽なんだと思ってたけど、いろいろ大変なんだね」


「そういうことじゃな。少し話が長くなったのじゃ。この剣については、また語らうのじゃ、ではわしは寝る」


久しぶりに現れた剣爺であったが、カルと少し重い話をしたと思ったらすぐに寝てしまった。だが、剣爺がカルに剣を授けなかったことに理由があったことを初めて知ったカルは、自身に与えられた役割というものがあり、それは、勇者という存在とは全く違う別の何かではないかと、少しづつではあるが考えるようになっていた。


ただ、カルに難しい話は分からない。それは、自身が成長したら分かるのだとそう信じてカルもまた眠りについた。





2日後、カルは、商人のロイドとその護衛の2人の冒険者と共にウエスト子爵領へと向かった。


最近のカルはというとゴーレムであるカルロスの肩に乗り城塞都市の間を行き交い、国境の砦への往復も砂漠を越えるのもカルロスの肩に乗っての移動であった。また、ラプラス近隣の村々への視察の時には馬車で移動となるため殆ど歩くことはなく、こうやって山道を歩くのは久ぶりであった。


ラプラスに来る前は、山の中腹にある森の中に立つ家に住んでいたため、歩くことが普通であった。だが、ラプラスに来てからというもの歩くことが極端に減っていたため、山道を登るとすぐに息を切らしてしまい、カルは、自身が情けなくて仕方なかった。


山道を歩いていると、幾度となくオークに遭遇し戦うことになったが、ロイドの護衛をしている冒険者は、Bランクの剣士とCランクの魔術師でかなりの腕を持っており、最初は戦いを眺めていたカルとカルロスだった。だが、戦いに要する時間が思った以上にかかるため魔獣との戦いに黙って参戦することにした。


カルもカルロスも金の糸でオークを拘束し、金の糸で心臓をプスッとひと刺ししてしまえばあっという間にオークを倒せてしまう。ただ、大盾から出す金の糸は、カルとカルロスしか見えないため目の前でオークが勝手に倒れてこと切れていく光景を不思議に思うふたりの冒険者と商人のロイドであった。


夜になると森の中で野宿することになったが、いつの間にか現れたメリルとライラを見て驚かれてしまった。


魔王国とラドリア王国の国境を超える山を越えるには、歩いて2日かかるらしい。森の中で野宿をしている時に夜空の星を眺めながらカルは考えていた。


もし穀物を買い付けたとしてそれをどうやってラプラスに運ぶのか。いろいろ考えてみたがなかなか良い案が浮かばない。


大盾の中に運び込めば運べないことはない。だが、それだとカルが毎回運ぶことになるし穀物の出し入れだけでもかなりの時間を要してしまい現実的ではない。


試しに剣爺に聞いてみたがそういった便利な能力やアイテムはないと素っ気なく断られてしまった。


まあ、そんな能力やアイテムがあったら既に使っているはずだよね。それではと精霊ホワイトローズさんに聞いてみた。いつも面倒事ばかり頼んでいる気がするけど・・・。


「あるの。そういった資材の運搬向きのシステムがあるの。ゲート空間移送システムなの。でも、高純度のミスリルが大量に必要なの。カルの鞄の中にいっぱい入ってるの。それがあれば作れるの」


「どれくらいあれば作れますか」


「小袋で10個程なの」


小袋で10個であれば鞄の中に入っているし、穀物の買い付けに使ったとしてまだまだ余裕がある。


カルは、ミスリルの特品が入った小袋を精霊ホワイトローズに渡してく。だが、ミスリルの特品が入った小袋を渡された精霊ホワイトローズの口角が妙に上がっていることにカルは気付くことはなかった。


山道を歩いて3日目の朝、ようやく麓の村が見えて来た。山の向こうには何処までも広がる大穀倉地帯が広がっていた。いつかラプラスにもこんな穀倉地帯を作ってみたいと思いをはせるカルであった。


山の麓の村に馬車を預けてあるというので村からは馬車で移動。商人のロイドさんが営むロイズ商会があるリガという街へは夕方頃に到着するというので馬車に揺られながらのんびりと過ごした。






ラドリア王国のウエスト子爵領。


ここは、魔王国の城塞都市とは街道で繋がっていないため子爵領の街とは全く交流がない。


早速、ロイズ商会で穀物の買い付けといきたいところだが事はそう簡単にはいかない。


カルが手元に持っているのは、ミスリル鉱石と少量の金貨のみ。このミスリル鉱石を金貨に変えそれを元手に穀物を買い付けを行う。


つまり、ミスリルが売れない限り穀物を買うことはできない。


ベルモンド商会は、手広く商売を行っていた関係でミスリルを市場に出す必要もなく、領地を統べるバルフト伯爵へ献上したことで名声と利権を手に入れていた。その時、ベルモンド商会により極少量のみが市場に出され、高値で取引されたらしい。


ロイズ商会の商談室でロイドにミスリルの特品を見せ、品物がミスリルの特品であると鑑定魔法で確認してもらう。


「少し前にベルモンド商会から市場に極少量だけ出回ったというミスリルの特品がこれですか。私達では手の出ない品物でしたがそれが目の前にあるとは驚きです」


ミスリルの特品を見るロイドの目が今までとは全く異なり、キラキラと輝いていた。まるで子供が宝物を掘り出した様な目であった。


「城塞都市ラプラスには、お金がないのでミスリルが売れない限り穀物を買うことができません」


「扱ったことのない商品ですのでウエスト子爵のところに持ち込んでみます」


ロイドは、少し考えるとある提案をしてきた。


「少しだけミスリルをお借りしてもよいですか。これからウエスト子爵の屋敷に行って話をつけようと思います」


「ウエスト子爵とは、お知り合いなんですか」


「はい。穀物の売買でいろいろ面識がありまして」


ロイドは、取り急ぎ馬車に乗るとウエスト子爵の屋敷へと向かった。カル達は、ロイズ商会の者に案内された宿屋に泊まることになり、明日改めて商談に望むことになった。






ウエスト子爵の屋敷では。


「珍しいなロイド。お前が緊急で会いたいなどと」


「はい。子爵様に見せたいものがございます」


ロイドは、子爵の執務室に通され椅子に座ることも忘れて話を切り出した。


子爵の机の上に置かれた小さな包みには、鈍く銀色に光る小石ほどの金属が数粒ころがっていた。


「これは?」


「以前、ルーデンベルグ伯爵が国王様に献上したというあれです」


「まさかミスリルの特品か。それも純度98%の!」


「いえ、純度99.9%です。ルーデンベルグ伯爵が国王様に献上した純度98%のミスリルには、混ぜ物がしてあります」


「なぜ、混ぜ物がしてあると?」


「そのミスリルの特品を採掘した者がそう申しております」


「まさか、その者がこの街に来ているのか」


「はい。穀物を買い付けたいと商談に来ております」


「その者の身分は?」


「城塞都市ラプラス領主。カル・ヒューズと申しております。ちなみに城塞都市アグニⅠとアグニⅡの領主でもあるそうです」


「ほお。歳は?」


「14歳の人族です」


「14歳で3つの城塞都市の領主か、凄いな」


「私が、山を越えて販路の新規開拓に向かった先の村で出会いました。村人は、皆が気さくに”領主様”と呼んでいました」


「どれくらいのミスリルを持っていると言っていた」


「これくらいの小個袋に20袋程です」


「市場価格に換算するとどれくらいになる」


「金貨換算で100万枚以上かと」


「100万枚!」


「以前、ベルモンド商会が市場に出した時にありえない程の価格に高騰しました」


「それで、そのカルという領主は、どれくらいの量までミスリルを出してもよいと」


「穀物を売ってくれるならいくらでもと申しております」


「分かった。だが、全てのミスリルは買い取れん。私が破産してしまう」


思わずロイドが笑みをこぼした。


「なっ、何が可笑しい」


「いえ、その者を殺してミスリルを奪い取れと言わなかったのでほっとしました。かの者は、こちへ向かう山道でオークを剣も抜かずに倒して見せました。護衛の冒険者がどんな攻撃をしたのかさえ分からないと言って驚いていました。それに14歳で3つの城塞都市の領主です。城塞都市の領主は、鬼人族が治めるものと言われています」


「それを奪ってみせたのだな。14歳の人族の子供が」


「はい」


「穀物は、今期分が良いと言っていたか」


「いえ、古くてもよいと。とにかく量を求めているようです」


「ならば、倉庫に眠っている古い穀物を全て放出して構わん。価格も半値でよい。カルという城塞都市の領主殿に恩を売っておけ。それだけの量を欲しているのなら来年度以降も期待できそうだな」


「はい。では、明日の商談にて話を進めます」






次の日。


ロイズ商会との商談は順調に進み、初めての穀物の買い付けが終わるとロイドの案内で穀物を保管してある倉庫へと案内された。


「この倉庫の中に3年前に収穫された穀物が収められています。穀物袋の数にして8000袋です。この倉庫が1番棟で5番棟まで全て穀物で埋まっています」


「凄い数ですね」


「これを消費できるお客様を見つけることができたのは、まさに奇跡です。でも、これだけの量をどうやってラプラスへ運ぶのですか。恐らくですがベルモンド商会は、ポラリスの街を通過させてはくれないでしょう」


「実は、今は言えませんが秘策があります。ひとつお願いなのですが大きな倉庫を借りることはできますか。少し大きめの事務所が付いている物件がよいのですが」


「倉庫ですか。ここに近い方がよいですね」


「はい」


数日後、カルが借りた倉庫に大量の穀物袋が搬入されていく。だが、数日語には搬入した穀物袋が全て無くなっていた。翌日も、その翌日も。馬車で運び出された形跡もないのに・・・。


この倉庫に穀物袋を搬入した荷運び屋は、不思議に思っていた。この倉庫の中でいったい何が行われているのかと。


カルは、3つの城塞都市とその庇護下の村々に配布する穀物を買い入れることができました。


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