表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第2章》 都市が増えました。
52/218

52話.ダンジョン討伐(2)

捕らえたダンジョンマスターを殺そうとする精霊ホワイトローズですが・・・。


少し前にさかのぼり30階層のフロアボスの部屋の前では・・・。


30階層のボス部屋は、今までのボス部屋とは違い天井も高く部屋の広さが桁違いに広い。そこを埋め尽くす様に5体の地龍が横一列に並び、少し開いた口から炎を溢れさせていた。


地龍は、龍の様な翼がなく丸々と太ったトカゲに似た姿をしていた。


最初にフロアボスの部屋に突入したのは、体に炎を纏った50体のフレアウルフ。地龍とフレアウルフでは、体の大きさが大人と子供ほどの体格差があるが、それは逆に利点でもある。


巨体な震わせながら動く地龍を翻弄しながら俊敏に動き、壁や天井までおもを使い、或いは敵である地龍の体を足場にしながら走り周る。


動きの遅い地龍は、フレアウルフ達の動きについて行けずに辺り一面に口から炎をまき散らし、その炎を浴びるびるフレアウルフ達。しかし、お互いに炎に耐性のある魔獣同士であり、それが相手を倒す決定打にはなりえない。


5体の地龍に50体のフレアウルフ食らいつく。手に足に首に食らいつき地龍の動きを鈍らせていく。


それでも地龍は、炎を纏ったフレアウルフの胴体に大きな口で噛みつき、巨大な尻尾でフレアウルフを弾き飛ばしていき、1体、また1体とフレアウルフを仕留めていく。


そこへ次の一手であるメデューサが入る。その数20体。


メデューサは、地龍との戦いを繰り広げるフレアウルフ達に向かって一斉に金切り声を上げる。その瞬間フレアウルフ達が地龍の前から飛び退いた。


その瞬間を狙い20体のメデューサが目から石化光線を放つ。


属性的に地龍というだけあり石化魔法には耐性があるが、このメデューサ達を作ったのは精霊ホワイトローズである。人工魔石の性能は、天然魔石を遥かに凌駕し地龍の体を徐々に石へと変化させていく。


それでも石化の魔法に耐性のある地龍達は、石化した体を直に元へと戻すべく魔法を発動する。


地龍は強い。だが、20体ものメデューサが石化魔法をかけ続けられては、さすがの地龍であっても石化解除の魔法が追い付かない。


徐々に地龍の体の石化面積が増えてきた頃、フロアボスの部屋に魔導オーガ兵が雪崩れ込み、地龍に向かって魔法を放ち始めた。


100人の魔導オーガ兵は、”重力魔法”により5体の地龍の動きを鈍化さる。さらに”封印の魔法”を重ね掛けすることで確実に動きを止めていく。


さらに装甲オーガ兵200体が地龍を囲むと一斉に剣を地龍の体へと突き刺していく。


どんなに力が強く鱗の固い地龍であろうが、メデューサが石化魔法により体を石化させていようがオーガの強力無比な力により成す術も無く剣が地龍の体へと押し込まれていく。


それでも地龍の大きな口に噛まれ体を砕かれる装甲オーガ兵が続出していく。


そんな戦いも数で勝るメリルが率いる魔獣達には、勝てなかった。次々と血まみれになり動かなく地龍達。




カルは、フロアボスの部屋の前で戦いが終わるのを待っていたが、フロアボスの部屋の中で何が行われているのかが気になり、少し覗いてみることにした。


「カル様。今、顔を出されると危険です」


「でも、戦いは終わったみたいだよ」


呆気ない幕切れを迎えていた。既に5体の地龍は、全身に数十本の剣が突き刺さり、体から大量の血を流し息も絶え絶えであった。


カルは、背負っていた大盾を構えると今にもこと切れそうな地龍の前に歩み出る。だが地龍は動く気配すらない。もう死を迎える寸前であった。


”チリュウ、クレ、クレ!”。


突然、カルが構えていた大盾に盾の魔人が現れると、大きな”くち”から長い舌を出して息も絶え絶えの巨大な地龍をことごとく飲み込んでいく。


「えっ、ええっ、どうやったらこんな大きな地龍を飲み込めるの」


カルが大盾の上から盾の魔人の”くち”をの置き込んだ時には、既に5体の地龍は"くち"の中であった。


”ウマウマ”。


5体の地龍が盾の魔人に飲み込まれる様を横目で見ていたメリルは、地龍のいなくなったフロアボスの部屋のさらに奥へと足を進めた。魔獣達もメリルを守る様に先行して部屋の奥へと進む。




誰もいなくなったフロアボスの部屋の床には、無数の魔石が残されていた。その魔石は、全て精霊ホワイトローズが盾のダンジョンの最奥で作った人工魔石であり、天然の魔石やダンジョンの魔獣が落とす魔石とは、明らかに大きさも質も異なるものであった。


カルはというと、フロアに落ちている魔石を一生懸命に拾っていた。実に緊張感の欠片もない行動である。


地龍に倒された数十体の装甲オーガ兵とフレアウルフが残した魔石を一心不乱に拾い集めるカル。その横で周囲の警戒にあたるゴーレムのカルロス。


以前、このダンジョンに入った時に倒した魔獣からドロップした魔石は、もっと小さく鈍い輝きを見せていた。さがカルの目の前に転がる魔石は、それよりもはるかに大きく輝きも数段高いものであった。


思わず拾った魔石の輝きに見入るカルであったが、気が付けばフロアボスの部屋には、カルとゴーレムのカルロス以外誰もいない。メリル率いる魔獣の軍勢は、メリルと共にフロアボスの部屋の奥へと移動を終えていた。


いつもなら精霊治癒魔法が使えるライラが同行しているのだが今日に限っては、アグニⅡの領主の館が焼けたため宿屋に宿泊しており、まだすやすやと眠りについていた。


フロアボスの部屋に落ちていた魔石を広い集めていたカルは、誰もいなくなったフロアボスの部屋の中央でカルロスとふたりだけとなり、慌てて走り出すと魔獣の軍勢の先頭に立つメリルを追いかけた。




カルとメリルの目の前には、10mはあろうかという高さの壁とその壁とほぼ同じ高さの両開きの扉がそびえ立っていた。


その巨大な扉には、大きな魔法陣が描かれており誰もこの扉の中へは通さないという強い意思が感じられた。


「ほう、扉に障壁の魔法陣か。それも3重とは厳重ですね。これはやっかいです」


メリルは、扉に描かれた魔法陣を見て眉を歪めた。


「そう?この程度の障壁なんて”楽ちん”よ」


そう言ってのけたのは、カルの盾の上に書箱を作って住み始めた魔導書の魔人である。


「お願いできますか?」


「いいわよ。でも高くつくわよ」


書の魔人は、大盾の上に魔導書を広げると小人の姿で広げた魔導書の上に乗り、巨大な扉に描かれた魔法陣

に向かって文字を追記していく。


すると、扉に描かれた魔法陣の文字が次々と光り出しては消えていく。


ひとつめの障壁の魔法陣が消え、程なくしてふたつめの魔法陣も消える。


最後の魔法陣は、先ほどのふたつよりも複雑な形をしていたが、それも文字は次々と光るとあっけなく消えていく。


「どう、書の魔人である私にかかれば、こんな魔法陣なんて”ちょろい”わけよ」


カルが構える大盾の上に広げた魔導書の上で、腕を組んで仁王立ちをする小人姿の書の魔人。


「さすがです。では、ダンジョンマスターを拘束しにまりましょう」


巨大な両開きの扉を開け放ち次の部屋へと入っていく魔獣の軍勢。


開け放った扉の先にあった部屋は、先ほどの部屋とは異なり調度品が並び、部屋の奥には王が座る様な椅子、その椅子の周囲だけ絨毯が敷き詰められていた。


魔獣の軍勢が整列し、ダンジョンマスターが来るのを静かに待つこと数分。


部屋の奥にある小さな扉が開け放たれるとひとりの小柄な女性が現れ、部屋の奥にある椅子の前へと歩み出た。


「私が、このダンジョンのダンジョ・・・」


少しの時間を置きメリルの顔を睨みつけながらダンジョンマスターが話を始めた途端、メリルが胸の谷間から”封印の魔石”を取り出すとダンジョンマスターへ向かって発動させる。


その瞬間、ダンジョンマスターは、大きな水晶の柱の様な魔石の柱に閉じ込められてしまう。


「誰があなたの口上なんて聞くものですか。そんなものは、他所でやってください」


そんな捨て台詞を残すとメリルは、ダンジョンマスターが封じ込まれた魔石の柱ごと転移魔石でダンジョンの外へと転移していった。


メリルの後を追う様に転移魔石でダンジョンの入り口に転移したカルとカルロス。そして次々とダンジョンの入り口に転移して来る魔獣の軍勢。


メリルの目の前には、ダンジョンマスターが魔石の柱に閉じ込められ身動き出ずに晒されていた。


しばらくすると精霊ホワイトローズがメリルとカルの前に現れ、魔石の柱に封じられたダンジョンマスターに向かって話し始めた。


カルには、魔石の柱に封じられたダンジョンマスターの声は聞こえない。だが精霊ホワイトローズは、魔石の柱に封じられたダンジョンマスターと会話ができるようで、ふたりの会話が進んでいく。


「あなたがこのダンジョンのダンジョンマスターなの。私の顔を知らない精霊なの。まだ若い精霊なの」


「・・・・・・」


「なんで私の眷属であるカルを殺そうとしたの」


「・・・・・・」


「そうなの。ダンジョン同士の戦争?聞いたことがないの」


「・・・・・・」


「他のダンジョンの眷属がダンジョンに入ると戦争になるの」


「・・・・・・」


「封印される300年前にそんな話はなかったの」


「・・・・・・」


「でも、カルを殺そうとした事にかわりはないの。だからあなたには死んでもらうの」


「!」


「命乞いをしても無駄なの」


精霊ホワイトローズは、魔石の柱に手をかざすと水晶に小さな亀裂が無数に入り始める。このまま魔石の柱が割れれば中に封じられたダンジョンマスターは、水晶もろとも砕かれ精霊としての生命が終わるはずであった。




「メリルさん。もしあのダンジョンマスターさんが死んだら、このダンジョンはどうなるの」


「消滅します。消えてなくなるということです」


「ダンジョンが消えたら冒険者も城塞都市も困るよね」


「そうなります。ダンジョンを残そうとするなら誰かがダンジョンマスターになるか、このダンジョンのオーナーになる必要があります。ですがダンジョンマスターは、精霊にしか務まりません」


メリルは、カルの顔を正面に見据え真剣な面持ちで話始める。


「ですが、ダンジョンオーナーは違います。盾のダンジョンのオーナーは、カル様です。ダンジョンジョンのオーナーであれば、誰でも・・・そうカル様でもなれます。そうすれば、カル様がダンジョンマスターになる精霊を選ぶことができます。例えば、あの水晶に封印された精霊でも」


ライラは、なぜかカルが聞きたがっていると思えること話し始めた。カルがこれから何をしようと考えているのかを察したように。


メリルの話を聞いたカルは、直に行動を起こした。




「ホワイトローズさん。その精霊さんを殺さないで!」


カルが精霊ホワイトローズに向かってそんな言葉を発した。


「この精霊は、カルを殺そうとしたの。これは、精霊界の問題なの。カルが口を挟むことはできないの」


「・・・それでも、その精霊さんを殺さないで」


「それはできないの」


「でも、その精霊さんが死んだらこのダンジョンはどうなんるの」


「ダンジョンは、・・・消えるの。それを引き起こしたののは、この精霊なの」


「ダンジョンが消えたら僕が困る。それにこの街の冒険者もラプラスの冒険者も困る」


「それでも・・・無理なの」


「なら、僕がこのダンジョンのオーナーになる。僕がこのダンジョンのオーナーになれば、僕がダンジョンマスターを選べるんだよね」


「カルは、なぜこのダンジョンを残したいの」


「うん。そうすればホワイトローズさんの魔獣捕獲の注文も受けられるし。ホワイトローズさんもその方がいろいろ便利で都合がいいでしょう」


「・・・・・・」


「このダンジョンが無くなったら僕が困る。だからお願い!」


「むぅ・・・」


精霊ホワイトローズは、少し考えるとカルに説得されたかの様に返答する。


「分かったの。この精霊を私の配下に置くの。カルをダンジョンのオーナーにするの」


精霊ホワイトローズは、魔石の柱に封じられたダンジョンマスターを開放すると、ダンジョンマスターの頭の上に白い薔薇の花でできた冠を置く。


白い薔薇の冠は、ダンジョンマスターの頭の上で浮遊しながら薔薇の弦をフロアマスターの頭へと伸ばし、ダンジョンマスターの頭から血を吸い上げ始めた。白い薔薇の花は、徐々に赤い薔薇へと変化していく。


「これでダンジョンマスターは、私の配下に入ったの。私の命令は絶対なの。裏切ることはできないの。このダンジョンは、私の配下となりカルのものになったの」


精霊ホワイトローズは、そう言い残すとメリルとカルの前から姿を消した。


ダンジョンマスターを封じていた水晶の柱も消え、ダンジョンマスターの拘束は解かれた。


だがその頭の上には、浮遊する薔薇の花の冠が残され、赤い薔薇の花が鮮やかに咲き誇っていた。


「私は、あなたを殺そうとしたのに・・・、それなのに・・・」


ダンジョンマスターは、そう言うと涙を流しながらカルの体に抱きついた。


「このダンジョンは、あなたのものです。何なりとお申し付けください」


「なら、今まで通りダンジョンを運営してください。冒険者さん達が今まで通りに生活できるようにしてくれることが僕の望みです」


「それだけでよいのですか」


「僕、ダンジョンの事をよく知らないから、今度、30階層に遊びに行ったらいろいろ教えてください」


「はい、お待ちしています!」


ダンジョンマスターは、カルを抱きしめていた手を離すと一歩下がり、そのままカルの前から姿を消した。


「カル様。よろしかったのですか。カル様を殺そうとした精霊ですよ」


「でも、このダンジョンがなくなると、いろんな人が困るから。それにこの城塞都市には、このダンジョンが必要なんだ」


「カル様がそう言うなら」


メリルは、また無表情の顔となり大声で魔獣の軍勢に命令を下す。


「精霊ホワイトローズ様の軍勢に告げる。全ての戦いは終わった。撤退を開始せよ!」


魔獣の軍勢は、カルが構える大盾の中へと戻っていく。


盾の魔人は、大きなフレアウルフや長い蛇の下半身を持つメデューサを飲み込む度に苦しそうにうめき声を上げる。


「メリルさん。盾の魔人さんが苦しそうだけど、その転移魔石で盾のダンジョンに転移できなんですか」


「できますよ。あれは、わざとやっているんです。そうしないと盾の魔人は、いつも寝てばかりで働かないんです」


”ハア、ハア、クルシイ”。


数百体の魔獣を飲み込んだ盾の魔人は、口から赤く長い舌を出したままこと切れてきた。




カルは、この城塞都市アグニⅡのダンジョンのオーナーであり、この城塞都市アグニⅡの領主である。


カルが持つ大盾は、魔獣を製造できる工場であり、移動できるダンジョンであり、魔獣を世界のあらゆる国に送り込めるダンジョンでもある。


さらに盾の魔人を使役し、書の魔人を使役する。


カルに野心があれば、この世界のどんな国であろうが手中に収めることができる力を持っている。だが、カルの心の中には、そんな野心の欠片もなかった。


カルの願いは、城塞都市の領民が平和に暮らせること。それだけであった。今のところは・・・。


ダンジョンのオーナーになったカル。ですが殆どビルのサブリースに近いです。


カルは、30階層のボス部屋で多数の魔石を拾いました。


普通ならギルドで換金となる訳ですが、そうはせずにあるところに持ち込みます。


そのお話は、もう少しあとになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ