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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第2章》 都市が増えました。
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47話.精霊の木、そして砂漠を超えて

カルは、戦場で精霊の木に出会います。


話は、少し前に戻ります。


カルが、敵の砦から撤収して双方の国が国境と定めた川を渡った時、この川の両側が最近まで森であったことに気が付いた。


双方というのは、カル達の砦があった側が魔王国。そして、カルが奪い取りムーア伯爵に明け渡した敵の砦があった側が人族の連合王国。


川の両側には、焼け焦げ炭化した木々や切り株がいたるところに散乱していた。この場所は、両陣営が川をまたいで戦場となった場所だ。だから邪魔な木々を切り倒し全て焼き払ったのだ。


カルは、城塞都市の領主になる前は、森の中に住んでいて森の中で生活の糧を得ていた。そんなカルにとって森を焼くという行為は信じられなかった。


カルが河原で炭と化して倒れた木々を見て心を痛めていた時、カルの前を静かに風が吹いた気がした。そしてその風には、カルを呼ぶ声らしきものが乗っていた気がした。


カルは、ふらふらと声が聞こえた様に感じた方角へ向かって歩き始めた。


ラプラスの兵士達は、カルが魔王国の砦とは違う方向に進んでいることに気付かずそのまま歩き去ってしまう。


「カル様、どうされました。砦はあちらですよ」


メリルがカルに声をかけたが、ふらふらと歩くカルの姿に何かを察したのかカルの後を見守る様について行く。


カルの行動に気がついたのはカルロスも同じであった。ふたりは、カルの後ろをゆっくりとついて歩るくことにした。


しばらく焼け焦げた木々と切り株だらけの河原を歩くと、ほんの少しだけ木々が生い茂る林がカルの目の前に現れた。


カルには、相変わらず風に乗って誰かがささやいているかの様な声が聞こえていた。





林の中央には、立ち枯れた木がひとつ立ち、葉もなく枝も折れ見るに耐えない姿をさらしていた。風に乗って聞こえたささやきは、この立ち枯れた木の辺りから聞こえていた。しかし、立ち枯れた木の辺りに人なんて誰ひとりいない。


カルは、立ち枯れた木の周囲を歩いてみる。すると立ち枯れた木の後ろに、芽吹いたばかりの小さな苗木が生えていた。


その苗木の周囲には、何かぼんやりとした光がいくつか飛んでいて、必死に苗木を守っているように見えた。


土は、固く荒れていてとても木々の根から栄養が取れているようには見えない。


カルは、なぜかその苗木が気になりその苗木に話しかけてみた。


当然ながら木が話すとは思えない。そんなことは重々承知の上で。


「僕は、木の専門家じゃないからよく分からないけど、それでもこの土は酷い。もし、違う場所で根付く気があるなら一緒に来る?」


”助けてください。精霊の木を・・・お願い・・・します”。


どこからともなく、そんな声が聞こえた気がした。


カルは、苗木の根を傷つけないように慎重に固くなった土を掘ると、苗木を土ごと抱えて麻布にくるむと盾の中へとしまい込んだ。


カル達がその場を離れると、苗木が根を張っていた近くの木々の葉が落ちだし、やがて河原の周囲に生えていた木々も殆どが立ち枯れていった。この周囲の森の命が尽きたように・・・。






その日、カルはゴーレムのカルロスの肩に乗り砦を後にした。ラプラスの兵士達は、盾の中にあるダンジョンの安全地帯でのんびり過ごしている。


砦に来る時に苦労した山間部の街道は、ゴーレムのカルロスが砦に向かう時に倒木を排除してくれていたおかげで1日早く抜けることができた。


山を抜け砂漠の街道が見えて来たころ、馬に乗ったラプラスの兵士に出くわした。


こんな場所で何をしているのか話を聞いてみると・・・。


「カル様。待っておりました。実は、城塞都市アグニⅡとその周囲の村々が大変なことになっております。砦の方に連絡要員を派遣したのですが山間部の道は、とても進める状態ではありませんでしたので別の道を行ったところです」


「ただ、もしやカル様とゴーレムであれば、山間部の道を進んだのではないかとここで待機しておりました」


ラプラスの兵士達の話によると、城塞都市アグニⅡの周囲の村々に盗賊団らしきものが頻繁に出没し、街道を行く馬車が襲われ都市間の物流が完全に止まっているとのこと。ただ、”盗賊団らしき”というのは、かなり統率された一団の様で、リオやオルドアの話では、城塞都市アグニⅠが雇った傭兵団ではないかと。


この場所は、城塞都市アグニⅠとは砂漠を挟んで真反対になる。街道を通って城塞都市アグニⅡに向かうと3日はかかる。


その3日間で事態がさらに悪化することが心配になったカルは、ある決断をした。


ワームの住処となっている目の前に広がる砂漠の海を渡り、城塞都市アグニⅠへ直接乗り込むというのだ。


この状況を盾の中にいるリオさんに説明をしたところ、僕の好きな様にして構わないと言ってくれた。最悪、砂漠を渡っている最中にワームに飲み込まれたら、リオさん達は、盾の中で一生暮らすことになる可能性があると伝えた。


だがリオは、敵の砦を破壊できる力があれば、ワームなど相手にならないと言ってのけた。


ただ、既に日が傾きかけていて夜間に砂漠を渡るのは危険だということでその日は、ここで野宿することになり、この場所で待機していた兵士達も明朝に出立してラプラスとアグニⅡにカルが戻ることを伝えることになった。





翌朝、日が昇るよりも早くカルとゴーレムのカルロスは、砂漠を横断して城塞都市アグニⅠを目指した。


砂漠の砂丘をゴーレムのカルロスが滑る様に進む。その肩の上には、大盾を構えたカルがいる。


しばらく進むと砂丘のあちこちから小さなワームが顔を出し、カルを肩に乗せたカルロスと並行して進む姿を目にするようになった。だが、幸いなことにゴーレムのカルロスの方が小さなワームよりも早く進めるため、なんとかワームを振り切ることができた。


昼を過ぎた頃、砂漠は日差しの照り返しが強くなりカルの体力を奪っていった。だが、砂漠のあちこちに巨大な岩が散乱しているおかげで、その岩の上でワームの襲撃を避けつつ休憩を取ることができた。


腰にぶら下げた鞄から水筒を取り出し喉を潤す。直射日光を遮るものがないもない大岩の上での束の間の休憩は、ただ暑いだけで終わりを迎えた。


そして砂漠の中央付近に差し掛かった頃、休憩に使える大岩もなくなり辺り一面が砂丘だらけとなった。出現するワームも尋常ではないほどの巨大なものばかりが顔を出すようになり、危険も一段と高まっていた。


ゴーレムのカルロスが魔法で砂の上を浮いて走るとはいえ、砂にその振動が伝わるためか、ワーム達はカルロスが進む前方で絶えず待ち構えている。


カルとゴーレムのカルロスは、金の糸を出してワームを輪切りにして倒しながら進んだ。だが出現するワームがさらに巨大化すると、さすがに金の糸で対処するには限界にを迎えていた。


「カルロスさん。金の糸じゃあの巨大なワーム達を倒すのはもう無理そうだね」


ゴーレムのカルロスがカルを肩に乗せたまま首を縦にふる。


金の糸がダメなら盾の魔人さんの出番となるのだが、流石に小山ほどもある巨大なワームを飲み込めるとも思えない。


となれば・・・。


「こうなったら書の魔人さんに頑張ってもらおう」


カルは、そう言うと盾の裏側に書箱を作って納まっている書の魔人に話しかけた。


「書の魔人さん、砦で覚えた魔導砲で巨大なワームを倒せないかな」


すると魔導書が開かれ、書の魔人が小人の姿で現れた。


「やっと出番ね。あれから魔導砲の魔法陣を手直しして新しい魔導砲を撃てる様にしたからいつでも行けるわよ」


「新しい魔導砲は、カル様が敵と判断した相手に対して魔導砲を誘導できるの。その代わりに威力は落ちてるけどワーム程度なら問題はないわよ」


「誘導って?」


「魔導砲が魔獣を追っていくのよ」


「へえ、ちょっと試してみる」


先ほどからカルを肩に乗せたゴーレムのカルロスの両脇を2体の巨大なワームが並走していた。


巨大なワームは、体の大きさに似合わず俊敏で砂の中に隠れたかと思うと砂の中から飛び出し大きな口を開けてカル達に襲いかかって来る。それをゴーレムのカルロスが俊敏にかわしていた。


ワームが口を開けると、そこには無数の歯が並んでいてそれを見るだけでも恐怖を感じてしまうほどだ。


カルは、左側を並走する巨大なワームに向かって魔導書から魔導砲(誘導)を放つ。


すると、魔導書から小さな青い光が放たれると巨大なワームの体めがけて弧を描く様に飛びワームの体に当たった瞬間、大きな爆炎とワームの肉片ををまき散らした。


巨大なワームは、カルの後でのたうち周りながら小さなワーム達に食い付かれ共食いを始めた。


「凄い。これならどんな魔獣でも倒せる!」


「おほん。カル様、それは違います。誘導するのは、あくまでカル様が敵と認識したものだけです」


「カル様がもし敵と認識できないほど俊敏な敵が現れたら、いくら魔導砲(誘導)を放っても当たりません」


「えっ、そうなの」


「はい。やはり練習をして敵を認識する力を養わないといけません。練習あるのみです」


「うん。がんばる」


カルは、右側を並走する大型のワームに向かって魔導書から魔導砲(誘導)を放った。


魔導書から小さな青い光が放たれると大型のワームの体にめがけて弧を描く様に飛びワームが爆炎と肉片をまき散らしながら砂の中へと消えていった。


並走していた2体の巨大なワームを魔導砲(誘導)で倒したカルは、並走するワームがいなくなったことでこれ以上の戦いはないと安堵していた。


だが、カル達が進む前方に今までよりも遥かに巨大なワームが出現した。


ワームは、山程もある大きさで体をもたげてカル達を飲み込もうと大きな口を開けて待ち構えている。


「わっ、なんであんなに大きいの。あんなの反則だよ」


「カル様。さすがにあの大きさは、魔導砲(誘導)では、倒せません。やはり要塞を破壊した魔導砲を使いましょう」


「うん」


カルは、書の魔人の言った様に魔導砲を山程の大きさのワームに向かって放った。


ワームは、あまりにも巨大すぎて他のワームの様に俊敏には動けないのか、カル達の前に立ちはだかり巨大な口を開けたまま動こうとはしなかった。


魔導書から放たれた小さな青い光は、巨大なワームの口の中へと吸い込まれると、巨大な爆炎と共にワームの体を吹き飛ばしワームの肉片と体液を周囲にまき散らした。


カル達は、飛んでくる肉片と体液を大盾で避けながらワームの横をすり抜けて行く。


その後、ワームは姿を見せることはなくやがて砂漠の砂丘が終わると周囲は、瓦礫の茫漠へと変わっていた。


カル達は、砂漠を横断することに成功した。だが既に日は傾き景色は、赤く色づくほどの時が過ぎていた。


そして遥か先には、城塞都市アグニⅠの城壁の目に飛び込んで来た。


砂漠を超えたカル達の目の前に城塞都市アグニⅠが迫ります。


今後、毎週水曜日の22:00以降と土曜日の18:00以降に更新を行う予定でおります。


仕事で帰宅が遅くなり、それに合わせて投稿時間も遅くなりますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。

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