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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第2章》 都市が増えました。
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37話.中級ダンジョン16階層

カルは、初めてダンジョンという場所に足を踏み入れます。

3人は、城塞都市アグニⅡを出ると、歩いて30分ほどの場所にある通称”中級ダンジョン”へと向かった。


ダンジョンの入り口には、冒険者ギルドの職員数人が見張りとして立っていたが、冒険者証を見せる必要もなくすんなりと入ることができた。


ダインジョンの1階層は、精霊ホワイトローズさんに見せてもらった盾のダンジョンとは少し違って、石作りの通路が迷路の様に入り組んでいる。


僕とゴーレムのカルロスさんが先へ進もうとすると、メデューサのメリルさんが嫌な顔をして立ち止まった。


「あの、まさかオーガのいる16階層まで歩いていくつもりですか」


「えっ、歩いていく以外に16階層に行く方法なんてあるんですか」


「カル様。もしかしてホワイトローズ様から何か受け取っていませんか」


「えーと、えーと、注文書しか受け取ってないけど」


カルは、昨晩のやり取りの中で精霊ホワイトローズがテーブルに注文書を置いた以外に何かあるのか思い出していたが、時に覚えもない。何か一緒に渡されたものでもあるのかと思い腰にぶら下げた鞄の中を探してみたが何もなかった。


「・・・・・・」


「仕方ないですね。では、私が」


メリルさん。放漫な胸の谷間に手を入れると小さな魔石をひとつ取り出した。


「これは、転移魔石といいましてダンジョンのどの階層にも瞬時に移動できる便利アイテムです」


「精霊ホワイトローズ様は、ダンジョンを運営されておりますし他のダンジョンに魔獣を販売されているので、どのダンジョンでも使える転移魔石を多数お持ちです。これを使って16階層に転移します。私の体につかまってください」


思わすカルがメリルさんの大きな胸の谷間に目を奪わてていると。


「あっ、私の胸、お使いになりますか」


そう言うとメリルさんは、大きな胸を両手で持ち上げながらカルの目の前に差し出した。


「カル様なら、いつでも使って頂いて構わないのですよ」


「えっ、そっ、そうじゃなくて。メリルさんの・・・その胸の谷間ってどうなっているのかなって」


「ああっ、これはですね。カル様がお持ちの鞄と同じアイテムバックになっています。あまり大きなものは入れられません。胸の谷間ですから」


「そっ、そうですよね」


「もしよかったら”手”を入れてみますか」


「いっ、いいです。遠慮しておきます」


その後、他の冒険者が見たら”昼間からいちゃいやしやがって”と言われそうな会話が延々と続いた。






「ここが16階層です」


メリルさんが持っていた転移魔石で3人は、16階層にやってきた。


16階層は、さっきの1階層とは違って大きな木が生えた森林地帯で、所々に巨大な岩が転がっていた。


”コンコンコン”。


「おーい。盾の魔人。いつまで寝てる。さっさと起きろ。カル様が魔獣を集めるんだから協力しろ!」


”・・・・・・”。


”フワー”。


”ショウガナイナー”。


「ごめんなさいね。魔人のくせに怠け癖がついてだめなんですよ。同じ魔人として恥ずかしいです」


”同じ魔人として”か。こうして一緒にいるとメリルさんが魔人メデューサだなんて感じないし怖いと思ったこともない。


でも、さっき冒険者ギルドで見せた石化の術?っていうのかな。魔法の詠唱みたいなのを一切しないで3人の冒険者を瞬時に石化して見せたのは凄かった。僕の周りって変わった人が多い。


カルにしてみたらその程度の認識でしかなかった。


「カル様。そろそろオーガが出ます。準備の方はよろしいですか」


「わっ、分かりました」


カルは、盾から金の糸を出して周囲に張り巡らせた。金の糸は地面だけでなく木の幹を伝って枝先にいたるまで広がっていく。


感覚を研ぎ澄ますと金の糸からいろいろ伝わって来ることがわかる。城塞都市アグニⅡを攻略する前は、もっと曖昧な感じだったけど、今はそれが敏感に感じる。


いた、オーガだ。金の糸の上を歩いてる。それと木の上にもいる。僕も少しは成長していると思っていいのかな。


金の糸をゆっくりと足からオーガの体へと伸ばしていく。オーガは、金の糸に気が付いていない。


金の糸は手の先から頭の上まで来た。ゆっくりと金の糸を締め上げて。


突然、オーガ暴れ出した。カルが盾から出した金の糸がオーガの体を締め上げたことで、体の自由が奪われると感じたのか物凄い力で暴れている。でも大丈夫、金の糸は強い。これくらいの力なら問題ない。


金の糸をどんどん締め上げてさらに絡ませる。これならどんなにオーガが暴れても金の糸から逃れられない。


程なくして身動きできなくなった2体のオーガは、カルの金の糸によって捕縛され盾の前へと運ばれてきた。


「金の糸って凄い。相手が持つ剣や盾や防具の金属を吸収すすだけじゃなく、魔石も吸収できるし強そうな魔獣の自由を奪うこともできる」


カルの目の前には、金の糸で捕縛されて自由を失い動けない2体のオーガが横たわっていた。


盾の魔人さんは、大きな"くち"を開けると赤く長い舌でオーガを飲み込んでいく。


”ゴックン”。


”ウマイ”。


「へえ。オーガって美味しいんだ。力が強いみたいだからかな」


そんな時、突然大きな石がいくつも飛んできた。


石が飛んできた先を見ると、はるか先の木の上でオーガが人の頭ほどもある石を投げていた。


「あの距離だと金の糸は届かないか」


ふと、横にいるゴーレムのカルロスさんを見ると、なぜか手に盾を持っていた。


「あれ、カルロスさん。なんで盾を持っているの。ダンジョンに入る時に盾なんて持ってなかったよね」


ゴーレムのカルロスさん。身振り手振りで金の糸を編んでいくと盾ができるって教えてくれた。


「凄い!金の糸ってそんなこともできるんだ!」


「でも、今は目の前のオーガに集中しないと」


カルは、金の糸を周囲にむらなく広げるのを諦めて、遠くの木の上にいるオーガの足元へ金の糸を伸ばしていく。金の糸が届き、オーガの足から体を上り頭の上まで来たところで金の糸を締め上げる。


オーガは、暴れだしたけどさらに金の糸を締め上げたら身動きしなくなった。


こんなことを何度か繰り返したら10体のオーガはすぐに捕獲できた。


「カル様。これでホワイトローズ様からの依頼は達成です。おめでとうございます」


「ありがとう。でも、メリルさんの転移魔石が無かったらこんな層まで来れなかったかもしれない」


「カル様。ご提案があります。もう少し下層に降りて訓練を続けてみてはいかがですか」


「カル様なら、もう少し強い魔獣でも十分対応できます」


「そうだね。でも、もう少しだけこの階層で練習する。カルロスさん、金の糸で盾を作る方法を詳しく教えて」


金の糸で盾を作るというのは、糸で編み物をする様な感覚だと教えてもらった。でも、やってみると”ばふばふ”した”あやふや”な”なにか”しかできなくて、何度も何度も作り直した。


金の糸は、何も盾だけが作れる訳ではなく、剣や槍も作ろうと思えばできるみたい。ただ、切れ味というのは、作った人の想像力によるらしい。以外と難しい。


ゴーレムのカルロスとカルは、金の糸を出しながらあれやこれやと盾を作ってみては、一喜一憂していた。


その間、メデューサのメリルはというと、近づいてくるオーガに対して石化の術というか目から”怪光線”を出してオーガを石化してカルを守っていた。


でもメリルさんを見ているととても不思議。だって、オーガを石化させる時に、おかしな仕草をしながら”怪光線”って言葉を発してる。まさか、それが魔法の呪文なのかな。


「あっ、この仕草と”怪光線”って言う言葉ですか。ただの”かっこ付け”ですよ。それに呪文なんて言わなくても石化はできます。この言葉も言った方がかっこいいかなって」


メリルさん。よくわからない。けどあの仕草と”怪光線”と言ってから石化光線を出す方が確かにかっこいい。


その後、17階層へと降りた3人だが、そこは16階層と変わらない森林地帯で出て来る魔獣もオーガだった。16階層と比べるとオーガの強さが増していた。それでも、大盾から繰り出す金の糸は、強靭でオーガの腕力をねじ伏せるだけの強さを見せた。


さらに金の糸の面白い使い方も分かった。何も金の糸を地面を這わせる必要などなく、金の糸を矢のように飛ばすこともできた。


試しにやってみると大盾から出た金の糸は、矢の様に基線を描きながら空を飛ばすことができた。さらに、木々の間を縫うように自由に移動もできた。


後は、練習すればもっと自由に操作できるみたい。各階層で魔獣を相手にいろいろ試してみようと思う。


そしてカルは、自身の持つ武具を完全に操れないにも関わらず、強い魔獣のいる階層へと足を踏み入れていった。




補足です。このダンジョンは”中級ダンジョン”と呼ばれていますが、16階層は、上級者向けの階層になるのでこの辺りにいる冒険者は、16階層より手前で引き返します。


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