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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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30話.城塞都市アグニⅡとの戦い(2)

短剣に封印された”自称神様”から、あるものがカルに送られます。


城塞都市アグニⅡとの戦いの次の日。


剣爺からあるものが贈られた。


目の前に高さ2mほどの金属を磨いた様なキラキラした像が立っていた。


「昨日、捕獲した鋼ゴーレムを元に作ったものじゃ」


「ゴーレム?」


「でっ、でも、昨日見たゴーレムは、四角くてゴツゴツしてたよ」


「ゴーレムはな、造形者の能力をそのまま写す鏡のようなものじゃ。造形者の能力が高ければ、形はいかようにも変わるのじゃ」


「じゃあ、これ剣爺が作り直したの?」


「そうじゃ、わしが作ればこれくらい朝飯前じゃ。今まではな、材料がなかったので作れなかったのじゃ」


剣爺が作ったゴーレムは、体を鍛えぬいた戦士の様な造形で、これで色がついていれば人と思えるほど精密な姿をしている。


「でも、なんで裸なの?」


「カルよ、見てみい、ちゃんと穿いておるぞ」


よくよく見ると、股間にもっこりと膨らんではいるが、小さな布らしきもので隠してある。


「剣爺、これ・・・」


「それはな、ビキニパンツというのじゃ。誰にも負けない肉体美を持っておるからの。なるべく筋肉美を見せるために隠すのは最小限にするためのビキニパンツじゃ」


剣爺の趣味嗜好というかな。性癖って・・・言っていいのかな。よく分からないけど、剣爺なりのこだわりがあるのかな。



「さて、こいつの能力を見て欲しいのじゃ」


剣爺がそういうとゴーレムは、まるで人が動いているよにゆっくりと歩きだした。


「すごい。昨日見たゴーレムとは動きがまるで違う」


ゆっくり歩いていたゴーレムは、やがて走り出すとしだいに速度を上げはじめた。


「剣爺、馬より早く走ってない?」


「まだじゃ、やつの能力は、こんなものではないのじゃ」


今度は、目の前を走るゴーレムが走るのをやめた。


だが、ゴーレムの体は、草原の上をスルスルと滑るように動いている。


足を半歩前に出して少し中腰の姿勢で、それでいて手も足も全く動かさない。


それなのに馬より早い。


今度は、後ろ向きに移動したり、横に右に左へと移動してる。


「剣爺、あれどうやってるの」


「魔法じゃよ。地面から少し浮いとるんじゃ」


「すごい!」


「手から金の糸を出すこともできるぞい」


「えっ、じゃあ、剣とか盾とか鎧も・・・」


「取り放題じゃ」






「これはゴーレムなのか」


草原でひとり騒ぐカルの元へルルとレオがやって来た。


「すごいな、草原の上をすべるように移動できるゴーレムか!」


ルルもリオもゴーレムの滑らかな動き、それに造形の美しさに思わず見とれていた。


最後に大ジャンプを披露した。草原の上を遥か高くまで飛んだゴーレムは、ゆっくりと着地すると、何事もなかった様に草原の上をスルスルと滑っていた。


「あれだけ飛べれば城壁など簡単に飛び越せそうだ」


「あのゴーレムが複数あれば、城など簡単に攻略できるかもな」


ルルの何気ない言葉に、皆、ある事を思いついた。


「ならば、城塞都市アグニⅡの城壁も簡単に飛び越えられるのでは!」


「城壁の中に入ってしまえば、敵は混乱して総崩れになります」


「この戦いの作戦を変えねば!」


ルルとリオは、興奮気味に作戦の変更を考えた。だが、ある欠点があることに気が付いた。それは、カルが新しい作戦に乗ってくれなければ何の意味もないということ。つまり、誰がカルを説得するのか。


そんなカルは、相変わらずゴーレムを見つめて目をキラキラさせていた。


今回の戦いは、このカラブ村の手前で敵の軍勢を倒し、その後、敵の後続が現れたらこの地で防戦するという作戦だった。


だが、城塞都市アグニⅡへの侵入方法を得てしまった今となっては、それを使わない手はない・・・のだが、それは全てカルの手に委ねられている。


ただ、本人にその気があるとは到底思えなかった。






草原を滑る様に移動していたゴーレムが戻って来た。


カルの目がキラキラと輝いている。


「カルよ。乗ってみるのじゃ」


「えっ、ゴーレムに乗れるの?」


剣爺の”乗ってみるか”の言葉にカルの目はさらに輝きが増していく。


すると、ゴーレムがカルの前で膝を付き手を差し出した。


恐る恐るゴーレムの手に足を乗せ肩に座る。


ゴーレムは、ゆっくりと立ち上がりカルを肩に乗せたまま草原を馬よりも早く滑り出した。


「すごい!」


「「乗ってみたい・・・」」


カルを肩に乗せて滑るように進むゴーレムを見ていたルルとレオが思わず口走った。


その後、ルルとレオも交代でゴーレムに乗って草原を走り、悲鳴と笑い声が草原に響き渡るとになった。




ルルは、ゴーレムを見て目がキラキラと輝いているカルの後ろ姿を見つめていた。


魔人を封じた大盾を持つ人族の少年。大盾の中には、ダンジョンすら存在する。


魔人を作ったという精霊が作りし魔法スライム、その数100体。魔法スライムは、時間さえあればもっと用意できるとも言っていた。


100人の魔術師を揃える国家など数えるほどしか存在しない。ましてそれ以上の魔術師となると・・・。


さらに短剣に封印された”神”とやらが作ったゴーレム。それは、魔術師が作り操るゴーレムよりも美しく滑らかな動きを見せた。


これほどの精工なゴーレムを所有する国家など聞いたことがない。


カルという少年は、既にどの国をも超える力を持っているのではないのか。”神”と”魔人”を従えた時点で、この地上にそれらを超える存在などいようはずがない。


そういえば、カルのジョブは”神官”だった。”神官”が”神”と”魔人”を従えて何をする。何が成しえるのか。


昔読んだ本にこんな話があった。


「魔人の力で世界を滅ぼし、神の力で世界を創造する」


ははは。考えすぎだな。


カルは、冒険者でも最下位のランクだ。世界をどうこうできる器ではない。


疑心暗鬼に駆られたルルだったが、ゴーレムと無邪気にはしゃぐカルの姿を見て、要らぬ考えだったと頭の片隅に追いやった。


「決めた」


「僕の街と鉱山を奪おうとした城塞都市アグニⅡを逆に奪ってやる。僕の街に手を出したやつに思い知らせてやる!」


「へっ?」


ルルは、カルのいきなりな言動に思わず変な声を出してしまった。


「どっ、どうしたのだカルよ」


「だって僕達の街を奪うつもりで1000人の兵を送ってきたんだよ」


「僕は、あの街が好きだ。まだ街に来て間もないし痛い思いもしたけど、でも、あの街が好きなんだ」


「僕には、盾の魔人と神のゴーレムがある。やれば出来るのにやらないのは変だよ」


「僕の街でみんなに平和に暮らしてほしいんだ」


「カル。まさか、また魔人に精神を乗っ取られようとしているのか」


「違うよ。その逆だよ。剣爺のゴーレムを見てそう思ったんだ」


「僕は、みんなを守る!」


目をキラキラさせ、キラキラと輝くゴーレムを見てはしゃぐカルの姿を見ながらルルの思いは複雑に絡んでいく。


「以前、”魔人”に精神を乗っ取られる寸前になんとか正気に戻すことができたが、今度は”神”か・・・」


ルルの頭の片隅に追いやった”魔人の力で世界を滅ぼし、神の力で世界を作る”という言葉が大々的に復活した。


ああっ、どうしたらいいのだ。世界を滅ぼすとか、世界の創造とか面倒なことだけは勘弁してほしい。ルルの頭の中にある頭痛の種から今にも勢いよく芽が吹き出そうな勢いであった。


でも、なぜこのタイミングなのか。カルが皆を守ると言い出したのか。ルルは、考えた。そしてあることを思い出した。


カルのジョブは神官だ。神の声に敏感なのだ。つまりこのタイミングで短剣に封印された”神”がゴーレムを作るという行為そのものに神の意志が働いているのか。


だとすれば、この先の戦いにも何か意味があるのか・・・そんな大きな出来事に巻き込まれるとは、本当に頭が痛い。


剣爺が作ったゴーレムとはしゃぐカルを見ながら途方に暮れるルルであった。



カルは、剣爺が作ったビキニパンツの似合うゴーレムを手に入れました。


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