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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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03話.初めての戦い(2)

なろうの管理ツールが分からずアタフタしました。

そんな時だった。誰かがカルに向かって話しかけてきた。


「おいガキ、いい大盾を持っているじゃねえか。そいつをよこしな」


「ありゃ、かなりの名品でずぜ」


「ああ、戦いに出遅れたが、いい武具に出会えたぜ」


いつの間にか、カルは敵の兵士達に囲まれていた。剣を集めることに集中しすぎて、辺りを見ていなかったのだ。


見れば、剣も盾も鎧もバラバラで、カル達の様にどこからか集められた”にわか兵士”達のようだ。


カルの盾がいつしか大盾になったことで、見た目も豪華になり”高価な盾”に見えてしまったのが災いして、”にわか兵士”達というか”追いはぎ”に目を付けられていた。


「剣爺、まずいよ。敵に囲まれた」


カルの足は急にガクガクと震えだし、カルを囲んでいる敵の兵士が持つ剣が急に恐ろしく見えた。


「カルよ。慌てるでない。足元を見るのじゃ」


カルは大きくなった盾に隠れながら、剣爺が言ったとおりに足元に目線を移す。


何も見えない?でも何かが見える。もう一度目をこらす。すると金色の細い糸の様なものが無数にちらばっていた。


その金色の細い糸の先に目線を移すと、カルを囲っている敵の兵士の足元にまで伸びている。


「カルよ。敵の兵士を”絡めとる”と心で念じてみい」


「うん」


敵の兵士を絡めとる、絡めとる?、グルグル巻きにする感じかな。グルグル巻き、グルグル巻き。カルは、目を閉じると一生懸命にそう念じた。


「うわっ。なんだ、手も足も動かないぞ」


「かっ、体も動かない」


「このガキ、魔法を使えるのか」


”にわか兵士”達は、次々に地面へと倒れていく。


「ガキ、今すぐ魔法をとけ。でなければ殺すぞ!」


地面に倒れた兵士達は、身動きがとれないにもかかわらず、言葉だけは威勢がよかった。


だが、誰一人として立ち上がれる者はいない。


「剣爺、これって・・・・・・」


「わしの能力じゃ」


「この金色の糸は、カルにしか見えん。カルが念じれば自由に動かすことができるのじゃ。便利じゃろう」


「すごい、剣爺ってやっぱり神様なんだね」


「そうじゃろ、そうじゃろ、もっと褒めるのじゃ」


カルもだんだんと剣爺の扱い方を理解してきた。剣爺は、褒めれば伸びるタイプのようだと。


「剣爺、あの金色の糸ってずっとあのままなの?」


「いや、時間が経てば消えてしまうぞ。ほう、おぬしは敵の兵士の事を気にしておるのか」


「うん、僕はまだ人を殺したことはないから。あのままだと誰かに殺されるのかと思うとちょっと怖い」


「安心せい。カルは人を殺したことはなくても、あやつらは何人もの人を殺しておる。自業自得というものじゃ」


カルは、身動きが取れずに地面に倒れたままの敵の兵士達の剣や鎧を次々と盾に吸い込ませた。


剣爺がいれば、戦える。しかも誰も傷つけずに。


これは、カルの心に勢いをつけた。いくら戦いだと言っても魔獣さえ狩ったことのないカルにいきなり人を殺せるほどの精神など持ち合わている訳がなかった。


そして覚悟を決めたカルは、草原の遠くに見える敵の一団に向かって進みはじめた。






大盾の後ろに隠れながらゆっくりと前進するカル。


目の前に現れた敵の集団は、今までとは違い剣も盾も鎧も同じ装備で、いかにも騎士といった装備をしていた。


そんな兵士達は、ひとり向かって来た大盾を持った子供に対して剣を振るう。


だが、次々と大盾に剣を奪われ盾を奪われ鎧を兜を奪われた兵士達は、殆ど丸裸同然の姿となり、自身に何が起きたかさえも理解できずにただ茫然と立ち尽くすだけだった。


そして大盾が50人目の兵士の武具を奪い吸収した時に異変は起きた。いや、起きてしまった。


大盾が生き物の様に脈動し、カルが大盾を持つ両手に生き物でなければ発しない心臓の脈動の様なものが伝わってきたのだ。


「なっ?なに?剣爺、大盾がおかしいよ」


「そういえば、何か忘れておった気もするがの、はて?なんじゃったかの」


カルが足を止めて大盾の上から目線をほんの少し先に向けてみると。


赤い大きな蛇の様なものが敵の兵士に向かって伸びていき、それが敵兵士の体に巻き付きつくと、今度は大盾に向かって引きずられていた。


「やっ、やめろ!はなっ、離せ!」


その言葉を最後に敵の兵士が大盾の中へと引きずられて見えなくなった。


カルは同様した。自分の大盾でいったい何が起こっているのかと。


遠巻きにカルの様子をうかがっていた数十人の敵兵士が、一歩、また一歩と後ずさりを始めた。


「ひい、なんだありゃ」


「きっ、気持ち悪い」


「いやだ、あんな気味の悪いものに食われるのいやだ」


カルを遠巻きに囲っていた敵の兵士達が一斉に剣を盾を放り投げ一目散に逃げ出した。


あまりの異様な光景に恐怖を覚えるカルであったが、手に持つ大盾に何かが起こっている事だけは確かだ。


カルは、恐る恐る大盾の表を除いてみた。


すると、大盾の表面には大きな”くち”があった。さらに何かを食べているかの様に”くちゅくちゅ”と音を立てながら大きな”くち”が上下に左右に揺れている。


突然、その大きな”くち”が”ぺっ”と何かを吐き出す。それは、大盾から弧を描く様に10メートルほど空を飛ぶと地面へと転がった。


”マズイ・・・・・・”


大盾にできた大きな”くち”は、確かにそう言ったように聞こえた。


地面にころがったのは、先ほど大盾に飲み込まれた敵の兵士だった。しかも服も着ておらず裸。


丸裸にされた敵の兵士の体には、粘液がべったりと張り付いて身動きができなくなっていた。


カルは、目の前に広がる得体の知れない光景に思わず叫んでしまった。


「剣爺!、剣爺!、剣爺!、盾が、盾がへんだよ!」


「・・・・・・」


「いや、すまぬ。そやつはわしの大盾に封印した魔人じゃ」


「魔人?」


「そうじゃ、そやつは、あらゆるものを食べて体の中に蓄えるのじゃ」


「そしてダンジョンを腹のなかに作るのじゃ」


「えっ、えっとダンジョンってあのダンジョン?」


「そうじゃ、そのダンジョンの出入り口は、その大盾の”くち”じゃ」


「ええっ!」


カルは、剣爺から貰った盾を気に入っていた。でもそれは、魔人が封印されていたとんでもない代物だった。


普通魔人って言ったら大きくて怖くて力持ちで・・・・・・。


でも、カルの大盾の魔人は”くち”だけ。まるで冗談の様な魔人を見て家に帰りたくなったカルであった。



カルの盾に封印されていた”魔人”。それは”くち”だけの魔人。


人にも”くち”だけって人いますよね。でも、”くちが達者”な人はすごいと思います。あれは特殊スキルです。

明日も3話投稿予定です。


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