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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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23話.都市ポラリスでの救出劇(2)

少女を助けて逃げるとおもいきや・・・。


カルは、群がる群衆の間を抜け広場の中央に出る。


「魔人さんお願い。あのふたりを助けて」


「マジンツカイガアライナー」


そんな言葉を残すと、盾の表面に魔人の”くち”が現れ、赤く長い舌で柱に縛られているふたりを、柱を根本から折りそのまま”くち”の中へと放り込んだ。


”マズイ・・・”


”ペッ”。


いつもなら身ぐるみ剥がして裸になった人を吐き出すはずが、今はなぜか根本から折った柱だけが”くち”から吐き出された。


「なっ、なんだ今のは!」


「あっ、あのガキだ。大盾を持ったガキを捕まえろ。バルフト伯爵を逃がすな!」


「あのガキは、バルフト伯爵の一派だ。捕まえろ!」


処刑所となっていた場所を囲っていた兵士らしき者達がカルに向かって罵声を浴びせると一斉に向かって来た。


カルは、腰にぶら下げた鞄の中からあるものを取り出した。


それは、城塞都市ラプラスの魔法アイテム屋で買いそろえた各種魔法アイテムだ。


まずは、魔法筒。黄色い魔石の入った魔石筒は、雷撃の魔法が封印されている。これを向かって来る兵士達に投げた。


広場の石畳に魔石筒が落ちると硝子が割れ、衝撃で魔石に封印された雷撃魔法が発動する。


周囲に集まっていた住民もろとも兵士達を巻き込み雷撃がさく裂する。


「「「「「うわー」」」」」


さらに雷撃からスタン効果が発動し、雷撃魔法を受けた者達は体が麻痺して石畳に倒れ込んだ。


今度は、白い魔石の魔石筒を石畳に向かって投げた。魔石筒の硝子が割れると氷魔法が発動し、石畳を氷で覆いつくした。


カルを追って来ようとする兵士達は、凍った石畳に足を取られて身動きができない。


「あのガキ、魔法を使うぞ。魔術師だ。魔術師を呼べ!」


誰かが、叫んでいる。この場を仕切っている兵士達の指揮官なのか。ならば。


カルは、合言葉を叫ぶと四方に向かって煙玉を投げた。


「がんばれ煙玉!」


煙玉は、合言葉が発せられた瞬間に四散し、四方八方に煙をまき散らした。煙は、広場の半分以上に広がると視界の殆どを遮った。


「魔術師ども、あの辺りだ。煙が立ち上っている所へ魔法を撃ち込め!他の者を巻き込んでも構わん。やれ!」


集まった3人の魔術師は、雷撃魔法を煙が立ち上っている場所に向かって雷撃魔法を放った。


すると、放った雷撃魔法が魔術師めがけて戻ってきた。


「まっ、まさかあの煙は、反射魔法・・・」


「「「ぎゃ」」」


3人の魔術師は、言いかけた言葉の半分も言えずに自身が放った雷撃魔法を浴びて石畳へと倒れていく。


カルは、煙が充満する広場で右往左往する住民達の間を潜り抜けると、ルルさんと護衛の3人に合流した。


「お待たせしました。宿に戻りましょう」


カルがそう言いながら路地へと入ると、後ろにルルさんと護衛の3人も続いた。


「カル様。ここまで騒ぎが大きくなってしまっては、宿に泊まるのは不可能です。このまま都市に戻りましょう」


「騒ぎが大きくなりすぎたね。宿に泊まって美味しいご飯を食べてみたかったな」


「カル様。また今度、ご一緒に来れることを楽しみにしてます」


冒険者の姿をした護衛の兵士が、そう言ってくれたので少し気分がほっとしたカルであった。


無事に宿に戻ると、ふたりの事務官は、ベルモンド商会との種類のやりとりを終えて宿に戻っていた。


事務官に今までの経緯を話すと、すぐにこの街を出る方がよいという事になり、すぐに2台の馬車で街を出ることになった。




すでに時刻は、城門が閉じる寸前であった。日が傾き辺りの景色は夕日で赤く染まっていた。


今日、来た馬車が今日にも門を出るというのは少し怪しまれるかと思い、ルルさん達に小芝居をやってもらった。


「今日、入ったばかりでもう帰るのか」


門番が怪訝な顔をしていた。


「はい。商会で商談をしたんですが、資金が足りないと言われて断られてしまいました。商会を説得して待ってもらっているので、早く戻ってお金を工面しないといけなくなりました。どうやってお金を工面するか、頭が痛いです」


馬車の後ろでは、ルルと同行者が誰から金を借りるかでもめていた。かなり険悪な雰囲気で、今にでも喧嘩が始まりそうな勢いになっていた。


ルルさんの白熱した演技に思わず門番がいやな顔をした。


「分かった。金の工面ができるといいな」


「申し訳ありません。お見苦しいところをお見せしました」


門番は、あっさりと門を通してくれた。


馬車の中を確認されたが、馬車の中には、2人の御者、3人の護衛、それとカルとルル。


後ろの馬車は、ふたりの事務官が乗ってきたもので、知らないふりをして城門を無事通過することができた。


馬車に乗っている人の数は、来た時と同じだ。荷物も積んでいないので怪しまれる事もなかった。


連れ去られた伯爵家の領主夫婦と娘は馬車には乗っていない。


街の城壁は、閉じられる寸前だったがなんとか通してもらえた。その後、程なくして城門はゆっくりと閉じられていくのが見える。


城門が遥か彼方に見え隠れする頃に、盾の魔人さんが飲み込んだ3人が馬車の中に吐き出された。


今回は、なぜか裸ではなく着ていた服はそのままだった。


しばらくして気が付いた3人は、当初は怯えていたがこちらの話をなんとか理解してくれようでほっとした。


「我々を助けてくださってありがとうございます」


「でもなぜ我々を助けてくださったのですか。私達は、あなた方を知りません」


「はい。私達もあなた方を知りません。バルフト伯爵夫妻と娘さんですよね。それを知ったのは先ほどの処刑前です」


「ではなぜ?」


「あなた方が何一つ悪い事をしていないからです」


「それをどうやって知りえたのかは今は言えません」


「そうですか・・・。でも、助けていただいたことにか変わりありません。この御恩は必ず返します」


「では、いきなりの申し出で申し訳ありませんが、僕達の街で働きませんか」


「僕は、城塞都市ラプラスで領主をしているカルと言います。こちらはルルさん。副領主をしています」


「恐らく、バルフト伯爵夫妻があの街に戻っても処刑されるだけです。ならば、助けた恩を返すと思って城塞都市ラプラスで働いてみませんか。それなりの待遇でお迎えいたします」


「城塞都市ラプラス。魔王国の城塞都市ですね。ベルモンド商会から穀物を大量に購入されている?」


「はい。実は最近、城塞都市ラプラスは、前任の領主からルルさんに変わりました。そこからさらに僕に変わったんですが、都市の運営を行った実績のある者がだれひとりとしていないんです。さらに前任の領主がお金を持って逃げてしまったので、都市の運営資金が底をつきそうだったんです」


「ただ、お金はなんとかできそうなのですが、やはり都市運営にたけた者から助言をいただけると助かるんです。さすがに以前の様な伯爵待遇とはいきませんが、小さいながらも住む家も用意します。どうでしょうか」


「・・・・・・」


バルフト伯爵、いや元バルフト伯爵は、少し考えた後にこう答えた。


「分かりました。お引き受けいたします。我らは領地を追われた身、住む家もなく一文無しですからわがままを言える身ではりません。こちらからお願いしたいところです」


「ありがとうございます。こちらも助かります」


城塞都市ラプラスには、リオ以外に都市運営に詳しい者はいない。それにリオは、知識は豊富だが実績がない。


以前から働いている各部門の官僚や職員はいるが、都市の運営を決定するのは、やはり領主であり副領主である。それらの者に適正な助言を行ってくれる者がいれば百人力である。




バルフト伯爵が今回の事件の経緯を話してくれた。


王直属の審問委員から話があるので王都へ来るようにとの手紙を受け、夫婦で王都に向かった。


ところが、その手紙を出した審問委員の屋敷に出向いてみるとその様な通達は出した覚えがないと言う。


不思議に思いながらも領地に戻ったところ、ルーデンベルグ伯爵が審問官として我々の不正を明らかにしたと言い出し、我々を逮捕したという。


こちらは不正を行ったことなどないのだが、不正蓄財、領民への一方的な逮捕並びに虐殺、さらには王への謀反の疑いと、言われなき事柄を並べられ、問答無用で処刑目前となっていた。


「それは、ルーデンベルグ伯爵がバルフト伯爵を陥れるために行った悪しき行いじゃ」


「そうなの」


「言ったであろう。わしはまがりなりにも神じゃ。”悪しき行い”をした者は分かると」


「そうなんだ。じゃあバルフト伯爵は、ルーデンベルグ伯爵にはめられたの?」


「そういうことじゃな」


「剣爺ってすごいね」


「そうじゃろ。そうじゃろ。もっと褒めるのじゃ」


「すごい。すごい」


「ほっほっほっ」


カルと剣爺の話はいつまでも続いた。いつもの事だが剣爺の言葉あは、カルにしか聞こえないためカルは独り言を延々と話しているようにしか見えない。


「・・・・・・」


「あの、カル殿は、何か独り言を話されているようですが」


「ああ、気にしないでほしい。いつものことです」


「はあ」


バルフト伯爵は、少し心配になっていた。本当に信用してよいのかと。


これ以後、ベルモンド商会から穀物の輸入が再開されることとなり、食料調達の問題は解消されていった。さらに肥料の買い付けもでき、山間部から土の運搬も順調に進められた。


だが、それは表面上のほんの一時の出来事であった。戦乱は、すぐそこまで迫っていた。


親子ともども助けたカルですが、商会の会頭は裏でとんでもないことを始めます。


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