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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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211話.創生クリスタル(2)

デルタ鉱山の地下でスノーワームと氷龍が戦っています。


カルの目の前に転がる胴体が半分にちぎれたスノーワームの骸。


その横には、氷龍が巨体を晒しカルの顔をじっと睨みつける。


カルは、慌てて大盾を構え戦闘態勢に入る。既に金の糸を氷龍の足元にまで伸ばしていつでも氷龍を拘束できる構えだ。


ゴーレムのカルロスもカルの横に並び液体金属の手を盾の形に変形させている。


さっきまで取っ組み合いの喧嘩をしていたメリルは、カルの横で魔法杖を構え、精霊エレノアも物理防壁と魔法防壁を展開していた。


そしてレリアとクレアはというと、氷龍の目の前に向かって歩き出でいた。


カルは、レリアとクレアを制止させようと声を出そうとした。だが氷龍への恐怖の余り声が全く出ない。


目の前で睨みつける氷龍は、カルの呑気でお気楽で極楽な感覚でどうにか出来る相手ではない。


そんなカルを後目にレリアとクレアは、氷龍の前へと進み出ると何やら話始めた。カルには、何を話しているのかさえも分からない未知なる言葉。


レリアとクレアは、身振り手振りを交えて何かを訴えている。だが、それで話が通じる相手では無かった。


氷龍は、大きな口を開け鋭い牙を見せるとレリアを一気に丸飲みにした。


”パクッ、ゴックン”。


「あっ・・・」


一瞬であった。氷龍の大きさからすれば、レリアの体などおやつにすらならない。


そんな氷龍に飲み込まれたレリア。だが次の瞬間、氷龍の体が鈍い光沢を放つ金属に変わっていく。


そして氷龍の頭が首のあたりから”ボロッ”ともげて地上に落下し転がり、その首の根本からレリアがひょっこり顔を出した。


「ぷはっ。いきなりレリアを食べるなんて酷い!」


「クレアも氷龍と龍語で説得しようと頑張ったのに!」


目の前で突然に起こった出来事に何も言えずにただ茫然と立ち尽くす面々。


「ク・・・クレア。大丈夫?」


「レリアとクレアは、龍神様の加護で守られているから龍族が相手なら全然平気だよ」


「そう、なら・・・いいけど」


いいと言ってみたものの、やはり心配でならないカル。


「レリアもクレアも龍神様の加護で・・・守られている?っていう事らしいけど、あまり無茶をしないで」


「「分かった。先に行く!」」


そう言ったそばからレリアとクレアが吹雪で殆ど視界も無く、膝よりも高く雪が降り積もるこの場所を走り去って行く。


「あっ、言ったそばから・・・」


「あのふたりは、本当に話を聞きませんね」


カルの後ろに隠れていたライラがひょっこりと顔を出す。


レリアとクレアが走り去った後には、雪を蹴散らした後が残り皆が歩ける道が出来ていた。そを進むカル達。


ときたまミスリルと魔石に化したスノーワームの骸が転がり、その脇には巨大な魔石の塊となった氷龍の骸が佇んでいた。


「本当にレリアとクレアは、氷龍を倒せるんですね」


「僕としては、心強い・・・けど心配」


雪は、さらに降り積もりカル達の身長を越え始めた。そしてレリアとクレアが先に進んだ事で出来た道は、雪洞になっていく。


「あのふたりどうやって雪洞なんて掘ったのかしら」


「そういう事は、考えない方がいいかも。悩んでも仕方ないし」


雪洞を進んで行くと相変わらずミスリルと魔石の塊と化したスノーワームの骸があちこちに散らばっている。


そして雪洞の出口へとさしかかり、そこから顔を出して周囲の様子を伺ってみると、雪が全く無い広場へと出た。


その雪のない広場の中央には、岩の上に小さなクリスタルがいくつも並んでいる。


「何だか何処かで見た光景だね」


「以前に見たスノーワームを生む魔石と吹雪を生む魔石にそっくりです」


「でも、何かが違う様な・・・」


するとカルの肩に乗る剣爺がここぞとばかりに声を張り上げる。


「あれが創生クリスタルじゃ!」


「でも、あれってスノーワームを生み出す魔石じゃないの?」


カルは、今迄にスノーワームを生み出す魔石を2度ほど目撃している。そのうちのひとつは、カルが精霊ホワイトローズにお願いをして自由にスノーワームを生み出せる魔石へと作り替えてもらった。


今は、倉庫を守る魔獣を生み出す魔石として使っている。


「違うのじゃ。あれは、創生クリスタルを改造してスノーワームを生み出せる様にしたものじゃ。目の前のものが本来の創生クリスタルじゃ」


カルには、剣爺が言っている事がさっぱり分からず頭を傾げるばかり。


「むー。お主は、頭が固いのじゃ。分かり易く説明するのじゃ」


剣爺は、カルの肩に乗りカルの頭を手でポンポンと軽く叩きながら説明を続けた。


「よいかカルよ。まず創生クリスタルがあるのじゃ」


「うん」


「それを奴が拝借して改造した魔石じゃ」


「やつ?改造?」


「創生クリスタルを改造してスノーワームを生み出す魔石に改造し、吹雪を生み出す魔石に改造したのじゃ」


「ふ~ん」


「相変わらず淡泊じゃの。まあ良いのじゃ。その改造した魔石を使ってスノーワームの群れを生み出し、吹雪を発生させたのじゃ」


「何となく分かった。でも剣爺。それを生み出した”やつ”って誰?まさか精霊ホワイトローズさん?」


「違うのじゃ。”奴”とは、あれじゃ」


カルの肩に乗る剣爺が指差す先には、黒いドレスを着た少女が宙を舞っていた。


「あれ、精霊ホワイトローズさんが黒いドレスを着ている」


剣爺が指差す先には、精霊ホワイトローズと瓜二つの顔を持つ少女が宙を舞っている。ただし、精霊ホワイトローズと異なるのは、白いドレスではなく黒いドレスを着ている事であった。


「違うのじゃ。”奴”は、精霊ホワイトローズでは無いのじゃ。精霊ホワイトローズは、あっちじゃ」


カルの肩に乗る剣爺が今度は、反対の方向を指差した。


そこには、見慣れた白いドレスを着た精霊ホワイトローズが宙を舞っていた。


「あっ、精霊ホワイトローズさんだ!」


精霊ホワイトローズと黒いドレスを着た顔がそっくりなふたりは、お互いの背後に無数の魔獣を従えお互いの魔獣同士で戦いを繰り広げていた。


黒いドレスを着た少女の背後には、スノーワームの群れ。白いドレスを着た精霊ホワイトローズの背後には、氷龍の群れが連なる。


カル達は、雪洞を通り宙を舞うふたりの少女のちょうど真ん中に位置する創生クリスタルの前に出ていたのだ。


その周囲では、スノーワームの群れと氷龍の群れが戦いを繰り広げている。


体の大きさで言えば氷龍が勝るが氷龍の数が圧倒的に少ない。対して体の大きさで言えば氷龍に劣るスノーワームであるが、その数が桁違いであった。


氷龍のブレスにより凍り付き砕かれるスノーワーム。対して氷龍も無数のスノーワームに食い付かれ体中から体液を垂れ流し雪上をのたうち回る。


その光景に呆気に取られるばかりの面々。


「僕達、あれと戦うの?」


「そうじゃ。戦うのじゃ。戦って世界を救うのじゃ!」


カルの言葉に剣爺が頷く。


「あのカル様。申し上げ難い事があります。私は、精霊ホワイトローズ様の眷属です。精霊ホワイトローズ様に立て付く事は出来ません」


メリルの言葉にカルもある事を思い出していた。


「そう言えば、僕も精霊ホワイトローズさんの眷属だった様な・・・。それだと僕も戦えない気がするけど」


カルの言葉に肩に乗る剣爺がカルの頭をポンポンと軽く叩いて見せる。


「カルよ。儂は、こう見えても神じゃ。精霊如きの”ことわり”なんぞどうにでも出来るのじゃ」


「そうなの。それじゃ何でも有って事?」


「そこまでは、言っておらんのじゃ」


「どっちなの?」


「お主は、いちいちめんどくさいのじゃ。儂も神と言っても出来る事と出来ん事があるのじゃ」


カルは、剣爺の煮え切らないの言葉に少し考え込むと”ポン”と手を叩き剣爺にある事を言い始めた。


「剣爺。今回の件について用件を整理してみようか」


「何じゃ。この切羽詰まった状態でまだ何か腑に落ちん事でもあるのじゃ」


「えーとね。あのふたりは、目の前にある創生クリスタルの奪い合いをしているってことでいいのかな」


「そうじゃ。厳密には、創生クリスタルの破壊を目論んでおるのじゃ」


剣爺がそう言った瞬間、黒いドレスを着た少女が剣爺の言葉に異議を唱えた。


「違うわよ。私は、創生クリスタルを使ってこの世界の再創生を行うのよ」


すると白いドレスを着た精霊ホワイトローズがそれに反論する。


「そんな事させないの。神が創生したこの世界を破壊するの。神の”ことわり”に縛られた世界なんておかしいの。そんなもの無い方がいいの。それが私の望みなの」


お互いがお互いの顔を睨み合いながら、主の背後で群れ成す魔獣達が戦いを繰り広げる。


「カルよ。創生クリスタルを守るのじゃ!」


そして剣爺は、この世界を創生した神の代弁者として創生クリスタルを守れとカルに銘じる。


「つまり黒いドレスを着た少女さんは、創生クリスタルを改造してこの世界を作り直したい。精霊ホワイトローズさんは、創生クリスタルを破壊してこの世界を壊したい。剣爺は、創生クリスタルを守る事でこの世界を守りたい」


カルは、三者の思惑を並べ比較し考える。


そんなカルの前では、黒いドレスを来た少女と精霊ホワイトローズと神である剣爺の三者がお互いの目論見に向かって突き進んでいく。


考え・・・悩み・・・考え・・・悩み・・・頭を傾げるカル。


「なんじゃ。まだ悩む事でもあるのじゃ」


「だって、何か違う気がして・・・それに三者がまるく納まる方法は無いかなって」


「面倒なやつなのじゃ。神である儂の言う事を聞いておればよいのじゃ」


「カルは、私の眷属なの。だから私の言う事を聞いて私と共に戦えばいいの。魔人達もそうなの。カルと戦いたくないからって身を潜めていてはダメなの」


ふと大盾に目線を向けたかる。すると大盾の上で中途半端に姿を隠す小人姿の魔人達がいた。


「ホワイトローズ様。私達も戦わないとダメですか・・・」


「当然なの。そのために作った魔人なの。今ここで戦わないで何処で戦うのなの」


精霊ホワイトローズは、黒いドレス着た少女との戦いの最中にカルに向かってパチンと指を鳴らした。


すると意識が遠のき石造りの床に倒れ込むカル。


この世界の未来を決める戦いの最中、意識を無くしたカル。さてこの先どうなっていくやら。


このお話の原案を考えお話を書き始めてから2年が過ぎたでござる。


後先考えずに書いているでござる。もうどうにでもなれでござる。


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