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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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198話.バロックとエスト(4)

ダンデの迷宮で発生したスタンピード。


迷宮から溢れ出た魔獣と戦う4人。


ダンデの迷宮の面前に広がる氷の城壁は、いつの間にか氷の要塞と呼ばれていた。


当初は、2日でダンデの迷宮の入り口へ肉薄し氷で迷宮の入り口を封鎖する作戦であったが、あの作戦会議から既に1週間が経過していた。


そして迷宮もそれを察したのか、飛竜、サイクロプス、ヒヒュドラ、地龍と矢継ぎ早に強力な魔獣を送りだして来た。


飛竜やサイクロプスに至っては、100体を超える個体が氷の要塞に襲い掛かりあちこちの氷で出来た城壁を破壊に躍起になっている。


とはいえアイスの氷魔法で作った氷もそう簡単に破壊されるほどやわではない。


サイクロプスが氷の城壁を破壊しようとする度にレインが水魔法で作った水の塊でサイクロプスを溺れさせ、アイスがそれを凍らせる。


通常の氷魔法であれば、氷を飛ばせてぶつけたり冷たい冷気を吹かせて魔獣の動きを鈍らせるといった魔法となる。


だがレインの水魔法との連携により、魔獣を水の塊の中に水没させ、水を丸ごと凍らせるという普通の氷魔法のではあり得ない方法で魔獣を倒していく。


一瞬で水没し一瞬で凍らせる。呼吸も出来ず身動きも出来ない。そして魔獣は、窒息するか凍死するかだ。


飛竜も同じだ。最初は、空を飛ぶ飛竜に手も足も出なかった。


だがレインが空に水魔法でいくつもの水の塊を出現させた。それは、なぜか空から落ちる事もなく浮遊し続ける。


空に浮く水の塊。そこに空を飛ぶ飛竜達が勝手に飛び込んで来る。水の塊は、飛竜の体に纏わりつくと、落ちる事も無く飛竜の頭から体までをも覆いつくしていく。


それにより飛ぶ事ができなくなり、さらに口の周囲に纏わりついた水により呼吸が出来なくなった飛竜は、呆気なく地上へと落ちていく。


そんな魔獣達の屍を閉じ込めた巨大な氷の塊で築かれた氷の要塞。


だが猛毒を吐くヒュドラや力の強い地龍が出て来たとなるとさすがに水と氷の攻撃で動きを封じる頃ができなかった。


ヒュドラと地龍の周囲を氷の塊で固めて足止めをする事は出来る。そこにバロックとエストの炎の柱と雷撃が何度も放たれる。


いくつもある首を同時に切り落とさなければ倒す事の出来ないヒュドラに向かって何度も何度も炎の柱が放たれ次々とヒュドラの頭を焼き尽くしていく。


そして全てのヒュドラの頭が炭と化した時、ヒュドラが地面へと倒れていく。


さらにその後ろには、巨大な地龍が姿を現した。


強固な肉体を持つ地龍には、バロックが炎の柱をいくら放っても固い皮膚を焦がす程度だった。


エストが放つ雷撃も地龍の固い皮膚に阻まれ効果がない。


「せめて柔らかい手足の付け根に雷撃を放てればいいだが」


エストの言葉にレインが答える。


「だったらこうしましょう」


レインとアイスが何やら相談をすると、レインの水魔法で作られた水の塊が地龍の周囲に囲いを作る。


その囲いの中にレインの水魔法で作り出された水が満たされていく。


その水の中に水没していく地龍。だが地龍は水の中を泳ぐ事が出来る。そもそも地中深くで生活する魔獣達は、水脈などがあるため水に対して耐性がある。


だから地龍も水には慣れていた。とはいえ、この攻撃は別であった。


水で満たされた氷の囲いの中にエストが雷魔法を放つ。それは、水の中を伝わり地龍の体のいたるところを攻撃した。


エストの雷魔法は、何度も地龍を襲いそして動かなくなる地龍。


バロックとエストが使う魔法剣は、地龍の魔石が埋め込まれている。その地龍の魔石によって攻撃され倒される地龍。


ある意味同族殺しとも言える。


さて氷の城壁は、既にダンデの迷宮の入り口と目と鼻の先まで近づいていた。


レインが地面に水を撒き、アイスが氷で水を凍らせる。そしてその凍った道の上をアイスが作った氷の塊が勢いよく走っていく。


それらの氷の塊がダンデの迷宮の入り口に巨大な氷の壁を築いていく。だが、氷の壁の間には隙間があり、地さな魔獣達がその隙間から這い出して来る。


魔獣と人との攻防の終わりは、まだまだ見えなかった。




レインは、水魔法により多くの魔獣を葬った。だがレインは、元々村で治癒魔法を使って村人に簡単な治癒行為を行っていた。


それは、魔法剣を手にした事で今までの数十倍の治癒魔法使いとなり、死にかけた者達を何百人も救う事になった。


レインは、強力な水魔法を操る大魔導師と呼ばれるようになり、さらに別名も与えられた。レインの治癒魔法により命を助けられた者達はレインの事をこう呼んだ。


本当の救生主と。


レインの治癒魔法は、どんな教会の神官よりも強力で殆ど死にかけた者ですら生き返らせる程であった。


氷の城壁は、さらにダンデの迷宮の入り口へと近づいていく。そしてレインの水魔法とアイスの氷魔法の射程内に捕らえた。


レインは、ダンデの迷宮の入り口に並ぶ氷の塊の隙間へ水魔法により大量の水を流し込んでいく。


そこに追い打ちをかける様にアイスの氷魔法が炸裂する。


ダンデの迷宮に流れ込む大量の水の中を這い上がって来る根性のある魔獣も大量にいた。


そんな時は、エストの魔法剣から放たれるの雷撃が役に立つ。雷撃は、水を伝わりダンデの迷宮の中へと入り込んでいき、迷宮の入り口の近くにまでやって来ていた魔獣をも倒していた。


アイスの氷魔法により迷宮に流れ込んでいく大量の水は、徐々に凍っていく。

何度も何度もダンデの迷宮の入り口に魔獣が現れては、迷宮の入り口を閉ざそうとする氷の塊を破壊していく。


そんな魔獣達をバロックとエストの魔法が倒していく。


そして何度目かの攻防によりダンデの迷宮の入り口が氷により閉ざされた。


しばらくの間、皆がかたずを飲んで見守るが迷宮の入り口から魔獣が出て来る気配はない。


そして何処からともなく歓喜の声が沸き上がった。


「やった。やったぞ!迷宮から魔獣が湧いて来ない!」


「これで生きて家に帰れる!」


兵士が、街や村から集められた者達が喜び合う。だが迷宮の入り口を閉ざす事は出来たが、そこからあふれ出た魔獣は未だ沢山いる。


この草原に溢れた魔獣だけでも数万は下らない。さらに草原から山を越えて他の地域へと移動してしまった魔獣も数多く目撃されている。


草原に築かれた氷の城壁は、広がるだけ広がり今では、草原の4割にまでその規模を拡大していた。


だが、魔獣も徐々にではあるが氷の要塞の中へと侵入しており以前よりも魔獣を倒す戦いが難しくなっていた。


そんな時、空にある物が浮いている事に気付き声を上げる者が現れた。


「あれは何だ!」


「空に巨大な石が浮いている!」


そして空に浮く巨大な石から何かが地上へと降りて来る。それは、ふたりの少女であった。


地上に降りた巨大な石からは、甲冑を身に纏った者達が姿を現しその巨大な石の周囲を囲いながら近づく魔獣のことごとくを倒していく。


そして巨大な石の上には、この国の軍旗がいくつも掲げられている。


「ありゃ、何処かの貴族がラプラスの領主に助けを求めたな」


バロックが氷の城壁の上で空から降りて来た巨大な石の塊を見ながらそんな事を呟く。


程なくして草原を闊歩していた魔獣の殆どが金属と硝子の様な塊となっていく。その中には、石像と化している魔獣の姿もあった。


その光景を見てがっかりするバロックとエスト。このダンデの迷宮がある草原に来てはや1週間である。


その間にどれだけの魔獣を倒し、どれだけの兵士が死んだ事か。


ところが、目の前に忽然と現れたラプラスの領主は、たった数時間で草原中で暴れていた魔獣達を倒してしまった。


「俺達の将軍生活も短かかったな」


「まあ、冒険者の俺達が将軍なんて呼ばれる事の方がおかしいんだよ」


「死ぬかと思った事も何度もあったが、今思えば楽しくもあったし大きな夢も見れたさ」


バロックとエストは、そんな事を言いながら笑い合っていた。


アイスとレインもこの草原で戦ったのはほんの数日である。それまで魔獣と戦った事など一度もない。


そんなアイスとレインは、戦いの中でバロックとエストに少なからず好意を持つ様になっていた。


こんな事が無ければ一生村で畑を耕すだけの人生を送っていくはずのアイスとレイン。


村に魔獣狩りに来たという冒険者のバロックとエストに出会ってから目まぐるしい日々が流れ、たった数日間で数百、数千という魔獣を倒す迄になった。


アイスとレインは、このまま村に帰りまた畑を耕す生活に戻るのかと思うと、何か釈然としなかった。




ダンデの迷宮の入り口が氷により封鎖されて1ヶ月程が立ったある日。


草原に溢れた魔獣の殆どを倒し以前の様な平穏な日常を取り戻しつつあった。


バロックとエストは、相変わらず将軍と呼ばれこの地で軍を指揮していた。


以前よりも兵の数は減ったとはいえ、未だ8000人の兵が駐留する地で軍を指揮するバロックとエスト。


実際に各部隊を指揮するのは、本職の指揮官達だが彼らはバロックとエストの命令に従う様にと国王から命令を受けていた。


バロックとエストにも王から命令書が届き、そこには軍を指揮せよとの王命が記されていた。


「なあ、俺達って冒険者だろ」


「ああ、それもCランクのうだつの上がらない冒険者様だ」


エストがこの国の王様の署名の入った書類を広げながらうなだれている。


「ここに俺達を将軍として正式に受け入れるってあるぞ」


「それに・・・貴族として爵位も与えられるってさ、どうする?」


「・・・どうするも何も受け入れるしかないよな。そこに書いてあるだろ」


「ああ、これか。”拒否を認めない”と」


「俺達を英雄か何かに仕立て上げたいんだろ。話によると魔獣との戦いでこの国の諸侯の6割が死んだらしい」


「街や村から集めた連中も数万人単位で死んだそうだな」


「こういう時こそ英雄が必要なんだろ」


「俺達が村から連れて来た連中・・・、誰も死ななかったな」


「俺は、自身も含めて全員死ぬと覚悟したんだがな」


そんなふたりの会話を聞いていたアイスとレインが頬を少し赤らめながらふたりの隣りに座る。


いつもなら距離を置いて座るふたりだが…。


「あの。ちょっとよろしいですか」


「おっ、何だ」


アイスとレインは、思いつめた様な表情でバロックとエストを見つめる。


「実は私達、バロック様とエスト様にずっとついて行きたいんです」


「ついて来る?それって冒険者としてって事か」


バロックの言葉に少し動揺するアイス。


「そうではなくて。私達は、もう村で畑を耕すよりもバロック様とエスト様と共にこの国を守っていきたいんです」


バロックとエストは、ふたりが何を言いたいのかいまいち飲み込めずにいた。


そしてアイスとレインもふたりに自分達の思いが伝わっていない事に業を煮やしたのか、アイスとレインは、お互いの顔を見合うとコクリと頷き行動に出る事にした。


アイスは、バロックの隣りに座り、レインは、エストの隣りに座る。バロックとエストは、これから何が起こるのかと少し動揺していた。


そしてレインの唇がバロックの唇と重なり、エストの唇がレインの唇と重なる。


「これでもまだ分かりませんか」


思わず赤面する4人。


「「いいのか。こんな俺で」」


「「はい」」


4人は、お互いの顔を見合いながら何度も唇を重ねる。そして氷の城壁で長い夜が始まる。


事は、大団円に向かって進む・・・と思いきや、そう簡単に進みません。


さて、このまますんなり貴族になんて美味しい話がある訳がありません。


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