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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
190/218

190話.姉妹、姉弟(1)

盾のダンジョンから地龍の卵を持ち返ったレリアとクレア。


盾のダンジョンから帰ってからは、レリアとクレアが地龍の卵を自室に持ち帰り宝物の様に大切に見守る日々を送っていた。


領主の館は、相変わらず空き部屋が多くカル専属の職員という名目でメリル、ライラ精霊エレノア、レリア、クレアが住んでいる。


メリル、ライラ、精霊エレノアは、ひとり部屋、レリアとクレアはふたり部屋を使っている。


元々領主は、貴族が就任するものでカルの様な平民がなれるものではない。


カルは、前領主であったルルに勝負を挑まれ、カルが持つ大盾に住む魔人の力で勝ってしまった。


それにより領主に就任はしたものの領地を運営する技量も力量もあるはずもなく、大盾に住む魔人の力を利用したいというルル達の思惑によりお飾り領主となった。


それがいつの間にか城塞都市が4つにまで増え、各城塞都市の領主となった鬼人族のルル、リオ、レオは、副領主としてカルを支える事が難しくなり、職員の助けを借りながら領主としての経験?を積む事となったカル。


仕事中に事ある毎に抜け出しては、行方をくらますこと幾度。


それでも地方の城塞都市は、ゆっくりとした時間が流れているせいか何事もなく?回っていた。


レリアとクレアが持ち返った地龍の卵は、ふたりの部屋の机の上に置かれ、麦わらを敷き詰めたバスケットの中で生まれる時を待っていた。


それをじっと見つめるふたり。


「レリア、クレア。そんなに見つめてもすぐに生まれたりしないよ」


カルの言葉など全く聞こえないふたり。


「レリアとクレアも生まれるまで時間がかかったんだよ」


「「・・・そうなの」」


「生まれる前になると卵が動くから、それで生まれる時期が分かると思うよ」


「「・・・へえ、あっ、少し動いた」」


ふたりは、卵が動いたとか動かないとか一喜一憂しながらずっと卵を見つめている。


「生まれて来るのは、弟と妹のどっちかな」


「レリアは、妹がいい」


「クレアは、弟がいい」


そんなふたりを見ていると不意にふたりの姿が消える。


一瞬、何が起きたのかと目を疑ったカルであったが、床に落ちた服の中から2体の小さな地龍が姿を現した。


地龍は、卵へと向かい大切にかかえる様に丸くなっている。


そんな姿を笑顔で見つめるカル。


そして床には、ふたりが脱ぎ捨てた服が散乱している。それを拾い畳んでいくカル。


「ふたりにとって数少ない同族だよね。元気に育ってくれるといいな」


そんな言葉を残して部屋の扉を閉め部屋を出て行くカル。


机の上に置かれたバスケットの上で卵を大切に抱えて丸くなる2体の地龍。はたして生まれて来るのは、妹なのか弟なのか、それとも両方なのか。




城塞都市ラプラスの隣りに広がる精霊の森。


その先には、茫漠が広がりさらにその先には広大な砂漠が広がる。


その砂漠の砂の下には、姿を潜めるサンドワームの群れ。


だれも足を踏み入れない不毛の砂漠。そこに向かって全速力で並んで走り出すふたりの姿があった。


それはレリアとクレア。


砂丘は、歩くだけで砂に足を取られ埋まり進む事すら用意ではない。


そこを全速力で走る、走る、走る。


砂の上を走る時に生まれる振動は、砂の中に伝わりサンドワームに獲物がいる事を教える。


そしてサンドワームは、砂丘の上を走るレリアとクレアの真下へ静かに移動すると、巨大な口を開けてふたりを飲み込む。


だが、サンドワームの大きな口の中にふたりの姿はない。


サンドワームの気配を察したふたりは、一瞬にして方向転換するとサンドワームから遥か先を走り出していた。


ふたりが走る事により発生する振動により、サンドワームが集まり砂丘のあらゆる場所からサンドワームの大きな口が花畑の様に咲き誇る。


数百もの歯が並びまるでのこぎりの様な口を開けるサンドワーム達。


その中を悠然と走るレリアとクレア。


ふたりが走る砂丘がサンドワームで埋め尽くされた頃、ふたりは遠くを走るお互いの顔を見合うと今度は、サンドワームに対して一気に肉薄する。


レリアの手が微かにサンドワームの巨体に触れる。


クレアの手が微かにサンドワームの巨体に触れる。


するとサンドワームの巨体がくすんだ金属のへと変わり、或いは色付いた硝子の様な光沢を発する。


レリアが触れたサンドワームは、ミスリルの塊に。クレアが触れたサンドワームは、魔石の塊に変化していく。


何体かのサンドワームをミスリルと魔石に変化させたふたりは、その亡骸の上に立ち、なおもふたりを襲うサンドワームの群れと対峙する。


ふたりに向かって突進するサンドワーム。それを体を翻し避ける度に、サンドワームの姿をしたミスリルと魔石の塊がひとつ、またひとつと増えていく。


レリアとクレアがミスリルと魔石の塊となったサンドワームに拳の一撃を加える。その瞬間、ミスリルと魔石の塊となったサンドワームが粉々に砕け散っていく。


しばらくすると砂漠の砂丘のいたるところにサンドワームの姿をしたミスリルと魔石が散乱し、砕けたミスリルと魔石が無数に散らばっていた。


「レリア。サンドワームって思ったほど強く無かった」


「クレア。スノーワームの方が面白かった」


ふたりは、そんな言葉を砂漠に残し城塞都市ラプラスへと戻っていく。


レリアとクレアにとって砂漠の王者であるサンドワームもほんのお遊びの相手でしかなかった。




とある日。


茫漠の地を歩く冒険者が足元に転がるミスリルと魔石の小さな欠片を見つける。


本当に小さな欠片であったが、辺りを見渡せばそんな欠片が無数に転がっていた。


「おいおい。なんでこんな場所に魔石の欠片があるんだよ」


「確かに鑑定魔法で調べても魔石だぞ」


「こっちの金属の欠片は何だ」


「ミスリルだ!鑑定魔法で調べた。確かにミスリルだ!」


冒険者達は、茫漠に散乱するミスリルと魔石の欠片を両手の平いったぱい分も拾い集めると冒険者ギルドへと走り込んだ。


冒険者ギルドの換金用の窓口に持ち込まれたミスリルと魔石の欠片。


「なかなかの純度のミスリルと魔石です。欠片なのであれですが金貨3枚とさせていただきます。それでよろしければ、領収書に署名をお願いします」


ギルドの職員が差し出した金貨を見て思わず生唾を飲み込む冒険者。


「これじゃダンジョンに入るより見入りがいいじゃねえか」


冒険者達は、お互いの顔を見合う。そして再び茫漠の地に向かって走り出した。


それを誰かが見ていたのか、いつの間にか茫漠の地に集まる無数の冒険者達の姿があった。


まるで砂金でも取れたかの様な賑わいに湧く茫漠の地。


だが、目の前に広がる砂漠の先には、太陽の陽を浴びてキラキラと輝く金属と色硝子の様に輝く塊が無数に横たわっている。


「あの塊ってミスリルだよな」


「あっちは、魔石じゃないのか」


ぱっと見て茫漠から砂漠に入り約1km程のところに、冒険者達が求めるものが広がっていた。


「誰か取りに行けよ」


「バカ言うな。砂漠に一歩でも足を踏み入れたらサンドワームの餌食だぞ」


冒険者達の言葉通り砂漠の砂丘の表面には、何かが砂の中を動いた様な跡が無数に残っている。


稀にサンドワームが砂丘の上に大きな口を開け、獲物が通るのをじっと待ち構える。


「あそこまで行ければ大金持ちだ。一生遊んで暮らせる」


「だが行けば確実にサンドワームの餌食だ」


冒険者達は、ほんの少し進めば届く距離にある宝の山を前にして、ただ喉を鳴らすしかなかった。


ふと冒険者が砂丘を眺めていると、そこを走る人の姿を見つけた。


それは、砂漠を走り周りサンドワームを手玉に取るふたりの少女の姿であった。


「おいおい。砂漠を走り周るガキがいるぞ」


「しかもサンドワームを次々と倒していやがる」


冒険者達は、ある事に気がついた。ふたりの少女が倒したサンドワームがくすんだ金属と色硝子の様な塊に変わっている事に。


「まさか、あのガキがサンドワームをミスリルと魔石の塊に変えているのか」


「冗談だろ。いったいどんな魔法を使えばそんな事ができるって言うんんだよ」


ふたりの少女は、砂漠から走り出ると茫漠の彼方へと姿を消していく。


「なんて早さだ」


「ありゃ下手な魔獣よりも足が早いぞ」


冒険者達の前からあっという間に姿を消したふたりの少女。


「あのふたり・・・どこかで・・・」


ひとりの冒険者がそんな言葉を口にした。


「お前、あのふたりを知っているのか」


「だったら、あのガキを脅してミスリルと魔石を巻き上げるって手があるぞ」


「バカ言え。サンドワームを倒せる奴をどうやって脅すって言うんだ」


考え込んでいた冒険者が、目の前を走り去ったふたりの少女の姿を記憶から必死に探し出す。


「思い出した。ありゃ領主のところにいるガキだ」


「領主って、城塞都市ラプラスの領主か」


「なんだよ。それじゃ手も足も出ねえじゃねえか」


冒険者達の表情が一瞬にして落胆へと変わっていく。


「諦めろ。空飛ぶ城を持つガキを相手に脅しなんざ通用しねえ」


「領主のところには、睨まれると石にされちまうメデューサがいるんだぞ」


「下手に手出しすると城塞都市ラプラスの警備隊と戦争になっちまう」


「しかしよ。目の前にお宝があるのに・・・」


「あれだけあれば、金貨が何十万と手に入るのにな」


砂漠の砂丘の至る所にミスリルと魔石の塊となったサンドワームの亡骸が転がる。そして手が届きそうな宝の山の周囲には、サンドワームが群れており誰も近寄る事ができない。


夜になるとそんな砂漠に密かに冒険者が姿を現す。


だが、その冒険者がミスリルや魔石の塊を持って戻って来たという話を聞いた者は、誰もいない。


今日も砂漠に熱気を帯びた乾いた風が吹く。


その風に乗ってミスリルと魔石の屑が茫漠の地に流れ着き、それをせっせと拾う無数の冒険者の姿があった。


運がよければ大きな欠片を拾い金貨を手にする者がいる。


そんな話を耳にすると冒険者達は、また夜な夜な砂漠へと赴き砂漠に足を踏み入れる。


それを大きな口を開けて待ち構えるサンドワームの群れ。


一攫千金の夢を追い求め、夢と散った冒険者達の武具と剣が転がる砂漠に今日も冒険者達が足を踏み入れる。


レリアとクレアの行動により冒険者の命が散っていきます。


ですが、転んでもただでは起きない冒険者達は、ある事を考えつきます。


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