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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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186話.星を渡る舟(1)

今回は、説明回といいますか・・・そんな感じのお話です。


精霊界とカル達の住むふたつの世界は、中級精霊神お猫サマが守る扉が唯一の接点であった。


だが死にかけている精霊界を救うためといい、カルを精霊界に招き入れ精霊界を救った途端、

カルを精霊界の荒地へと放り出した。


一部の精霊は、異世界の原住民が精霊界へ足を踏み入れる事にガマンができず自尊心を傷つけられ、その様な蛮行に及んだのだがそれに腹を立てた精霊神お猫サマは、その報復として扉を閉じてしまった。


現状、精霊界を救う唯一の手段を持っている異世界との往来を閉ざされてしまった精霊界は、何度となく精霊神お猫サマへ扉の再開を懇願した。


精霊神お猫サマは、再発防止策とカルを荒地に放り出した精霊達を拘束する事を扉の再開の条件とした。


ところが、カルを精霊界の荒地へと放り出した者達の行方が全く分からず、ふたつの世界を繋ぐ扉の再開の目途は立たなかった。




精霊界の神獣なめくじ精霊。


それは、別の世界から精霊界にやって来た存在。それにより精霊界に各段の文明がもたらされた。


だが、それも遠い過去の話となり今では衰退の一途をたどる精霊界。


そこに見切りを付け、神獣なめくじ精霊が次の文明の伝承者として選んだのがカル達の住む世界で生存圏を拡大させている妖精達であった。


神獣なめくじ精霊から新たな知恵を授かった妖精達は、精霊界で捨てられたり利用されなくなった過去の遺物に興味を抱き、それらの知識を蓄えていく。


妖精達は、精霊界でも利用者を厳重に制限しているデータベースからあらゆる情報を得ていた。

データーベースには、既に精霊界では失われてしまった遠い過去の遺産を生み出す技術が無数に記録されていた。


その中のひとつに空間を繋ぐ扉の製造技術もあった。


妖精達は、その技術を用いて扉を作りありとあらゆる場所へ進出していた。


だが、万能に見える扉にも欠点はある。一度も行った事のない場所へは行く事はできない。


つまり未知の場所に扉を設置するためには、誰かがその道なる場所こ出向き扉を設置する必要があった。


そして今までは、カルやルルや妖精達が手に入れた浮遊城がその未知なる場所へ到達する手段の一役を担っていた。


しかし、妖精達はそれで満足はしなかった。


もっと遠くへ、もっと別な世界へ。もっと未知なる世界へ。


妖精達は、精霊界のデーターベースを覗き見て、そんな技術を次々と手に入れていく。


そして空間を繋ぐ扉の最高機密を手にした。それは数万光年も離れた星と星とを繋ぐ扉の技術だ。


そう、その扉とは精霊神お猫サマが守るあの扉を生み出す技術である。


そして妖精達は、既にそれを生産する迄になっていた。


ただ、それを設置するためには、何かの移動手段が必要であった。だが、その術を持たない妖精達は、データーベースに新たな興味深い情報を見つけた。


”星を渡る舟”。


精霊達がまだ空間を繋ぐ扉の技術を手にする前の話。


精霊達は、星々の世界へと進出していた。巨大な舟を作りそれに乗りいくつもの星々へ旅をする。


それもあの扉が出来た事により廃れてしまった。今の精霊界に星を渡る舟はひとつも存在しない。


だが、精霊界の荒地に誰も住まなくなった廃墟となった都市を見つけ、そこに捨てられた星を渡る舟の残骸を見つけた妖精達は、目を輝かせた。


そして新し物好きの妖精達は、星を渡る舟を修理する事にした。


彼らは、どこにでも入り込み、どんな事にも興味を抱き、そして多少の問題など全く気にしない。


廃墟となった都市の地下に眠る星を渡る舟の残骸から使えそうな部品を探し、それを修理できる機械やゴーレムを作り駆使した。


星を渡る舟の修理は、来る日も来る日も続けられた。


部品が無ければ隣りに捨てられた舟から部品を外し別の船に取り付ける。システムが古ければ、それを改修した。


そうやってひとつの星を渡る舟が8割方の完成を見た時であった。


廃墟となった都市を訪れる者達がいた。カルを精霊界の荒地へと放り出したあの精霊だ。


精霊女王の命により精霊界で捜索対象とされた精霊達。


彼らが荒地に放り出した異世界の原住民が精霊界を救うために尽力した事を知り、さらに精霊界から元の異世界に帰った事を知った。


それは、彼らにとって屈辱以外の何物でも無かった。


自尊心を傷つけられた彼らは、あらぬ復讐心に燃えた。


あの異世界のガキを殺してやる。そう決めた精霊であったが、そもそも異世界に通じる扉を管理している精霊神が扉を閉ざしているため、異世界に行く事が出来ない。


だが、その異世界に行く術が他にもあったのだ。


それが星を渡る舟だ。


数百年も前に捨てられた星を渡る舟。


それが果たして動くのか。


彼らは、精霊界の高官という立場を利用してデータベースからその情報を探し出し、この捨てられた廃墟の都市へとやって来た。


そして都市の地下に目新しい星を渡る舟を目したのである。


「おおっ、これは凄い。数百年もの間放置されたとは思えないな」


「ただ、データーベースの情報とは、かなり舟の形が異なります」


「形などどうでもいい。要は動けばよいのだ」


「舟のシステムが稼働中である事も確認済みです」


「では、この船は飛べるのだな」


「はい。8割方は問題ありません。ただ、動かない部分もあるようです」


「問題ない。あのガキが住む異世界を滅ぼす事ができればよいのだ」


「では、補給物資を運び込み稼働準備に入ります」


「どれくらいで飛べる?」


「10日程お待ちくだされば、舟のシステムを把握して御覧に入れます」


「そうか。では、ゆっくりと待つとするか」


精霊達は、廃墟となった都市の地下に横たわる巨大な星を渡る舟を眺める。


それを修理する妖精の存在など知る由も無く。




ある日、誰もいないはずの廃墟となった都市に忽然とやって来た精霊達。


その者達に存在を悟られない様にこっそりとしかし大胆に星を渡る舟を修理する妖精達。


隣りの舟から部品を外し、隣りの舟に部品をとりつける。


にこいち。にこいち。にこいち・・・。


妖精達は、とにかく精霊にみつかない様にと姿を隠した。


だが。作業を行う機械やゴーレム達は、絶えず動き続ける。


精霊達が星を渡る舟に乗り込み、舟を制御するシステムを把握する作業が続く間も、作業機械やゴーレムは精霊達の前で動き続けた。


精霊達は、疑問に思っていた。


いったい誰があの機械やゴーレムに指示を出しているのかと。


星を渡る舟からは、舟自体を修理せよといった命令が機械やゴーレムには、出されていない。


なのに、機械が勝手に動き勝手に部品を交換していく。


少し気味の悪い話だが、徐々に舟の修理は進み全体の9割が完了した頃、精霊達も舟のシステムの掌握に乗り出した。


精霊界で使いなれたシステムに改修された舟のシステム。各モジュールの更新日付もごく最近のものになっている。


だが、不思議な事に精霊界ですら誰も更新する事の無くなったシステムよりも、舟のシステムの方が最新のものに改修されていた。


頭を傾げる精霊であった。昨日は動かなかった部分が今日は動く。そんな事が毎日の様に繰り返される。


精霊は、自信が掌握していない別のシステムがあり、それが舟を自動修復していると信じていた。


妖精達が陰で必死に修理を行っているとも知らずに・・・。


「どんな感じだ」


「はい。問題ないです。あとは実際に動かしてみるだけですが、今のところ試験稼働でも問題は見つかっていません」


「では、我らの祖先が作りし星を渡る舟を動かすとしよう」


舟は、廃墟の都市の地下からゆっくりと動き出す。


”ギギギ・・・”。


さすがに数百年も前の舟である。あちこちから何かがきしむ音がする。


だが舟の制御システムは、問題がないと告げていた。


廃墟から出た舟は、数百年ぶりに巨体を空へと浮き上がらせ、小さな街をも凌駕する程の大きさを晒し空高く舞い上がる。


「この船の武装を試したい」


「では、この船の主兵装を起動します」


精霊は、制御システムから武装システムへと切り替え、遥か彼方の山に向かってそれを起動させた。


星を渡る舟の主武装の威力も知らない精霊は、武装システムに命令を下す。


「発射」


星を渡る舟の先端から見た事の無い光源が発されると、それは遥か彼方の山に向かって飛び、凄まじい閃光を放った。


遥か彼方の山が爆散し山体崩壊を起こす。


「おおっ、凄いものだな」


「イオン砲というものらしいです。数百年も前のものがよく動くものだと・・・、やはり我らの祖先は凄かった様です」


「では、この精霊界を周回したのちに、あのガキがいる異世界へ向かう」


精霊は、意気揚々と宣言すると星を渡る舟を空の彼方へと浮上させる。


だが、そこで大変な思いをしていたのは、舟を修理している妖精達であった。


いきなり舟を動かし始めた精霊に感ずかれない様にと姿を隠しながらの修理。さらに舟の制御システムのデバックとテストを繰り返す。


どんなにシステムが発達しようとも最初に動く様にするための労力の大変さを身を以って実感した妖精達。


精霊が座る舟の制御室には、何の問題もないと制御システムは答えた。


だが、妖精達が改修中のシステムの制御卓には、異常を知らせる真っ赤に染まった文字で埋め尽くされていた。


元々修理に使った部品も数百年も前のもの。さらに部品が無いものは、他の部品を代用した。


規格が異なる物を繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせ、なんとか動く形にしているだけのおんぼろ舟。


実際に動くだけでも奇跡であった。


そんな妖精達は、ある決断をしていた。


もし、この星を渡る舟が壊れた場合、舟を放棄して扉を使って精霊界に逃げる事を。


廃墟の都市の地下には、まだ多くの壊れた舟が残されている。それをもう一度修理すればよいだけだ。この船と命を共にする必要などない。


妖精達が舟を修理できなければ、次の妖精達が修理を引き継ぐ。何年かかろうとも何百年かかろうとも興味が続く限り妖精達にとって時間など有って無いようなものであった。


「どうだ。あの異世界の座標は分かるか」


「はい。この舟だとだいたい10日程で到着できそうです」


「頼むぞ」


妖精達の苦労など知る由もない精霊は、星を渡る舟の基幹システムを起動させる。


「ハイパージャンプ始動!」


一瞬にして空間転移する星を渡る舟。


そしてその陰で泣きながら徹夜でシステムの修復に明け暮れる妖精達。


数百年ぶりに動き出した精霊界の星を渡る舟。


向かうは、カル達の住む星。その距離約1万光年。


何事もなくカルの住む星へたどりつけるのだろうか。


頑張れ妖精達。


興味本位で妖精達が始めた舟の修理。


それを知らずに勝手に動かしてしまった精霊。


カーク船長やスポック副長もいない舟が1万光年の彼方へと旅立ちました。


ボーグやクリンゴンが行く手を・・・なんでもないです。


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