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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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184話.魔石に群がる者達(3)

城塞都市ラプラスの教会が白昼に襲われた事を知ったカル。


領主の館にて各部署の責任者を集めて会議が開かれていた。


そこで警備隊から街中で発生した事件の報告を受けたカル。


放置された馬や馬車から回収された荷物からマーモ教に繋がる遺留物がいくつも見つかり、警備隊の兵士達も相手がマーモ教と名乗ったと証言した。


被害者は、教会のシスターエトーレ。そして警備隊の兵士達。


「シスターエトーレは、ラピリア酒(薬)によりなんとか命は助かりました。ですが出血が酷く予断を許さない状況です。兵士達も重傷者3名、軽症者10名、こちもラピリア酒(薬)で治療を行っています」


警備隊からの報告を黙って聞いているカル。だが先程から一言も話そうとしない。


そして事件を起こした当事者達は、飛竜に乗り逃走したため警備隊では追跡できなかったと報告された。


「マーモ教は、この大陸で最も信仰を集めている宗教集団で、聖ラムズ王国のラムズ神殿を本拠地としています」


マーモ教の説明を行う者が一拍おいて話を続ける。


「聖ラムズ王国は、この大陸最大の王制国家で実のところマーモ教の教皇が国の実権を握っています」


少しの間の後、だれかがつぶやく。


「マーモ教の神官と神殿騎士が首謀者だとすると今回の件は、マーモ教の司祭か或いは教皇の命令でしょうな」


「つまりマーモ教或いは、聖ラムズ王国そのものが首謀者だと?」


「領主様が教会に置いた魔石にそこまでの価値があるとは思っていませんでしたが、まさか他国にまで来てその様な卑劣な行為に及ぶとは・・・」


その時、会議室の片隅に座る男が手を上げ立ち上がる。その男は、カルの命令で他国の情報収集を行う部署の責任者であった。


「えーとですね。マーモ教なんですが表の顔は、”慈愛に満ちあまたの者に施しを。”なんですが、裏の顔があります。それが”全てを奪いつくせ”です」


思わず会議室にどよめきが走る。


「わが城塞都市ラプラスが仮にですがマーモ教と対峙するとなった場合、聖ラムズ王国並びに周辺諸国とも対峙する事になりかねません」


「だがそれは、魔王国を数百年に渡り攻めて来ている連合王国との戦いと何が違う?」


会議に出席している誰かがそんな言葉を発した。


「たしかに。ここ数年間は、連合王国との小競り合いはあるものの大規模な戦争はなかった。それが繰り返されるというだけの話か」


「つまり以前と何も変わらず、また大規模な戦争が繰り返されるという訳だな」


ここで別な者が手を上げ立ち上がる。


「あえて言わせてもらいます。通常の戦争であれば、わが城塞都市ラプラスなど相手にもされないでしょう。恐らく数千人の死者が出て全ての物を奪われます。ですがこの城塞都市ラプラスには、領主様がいらっしゃいます。浮遊城を持ち、龍を従えておいでです」


「つまり領主様に最前線で戦えと敬は言いたいのだな」


「あえていいます。”そうです”。マーモ教が何のために魔石を奪ったのかは知りません。ですが、今回の件を黙って見過ごせば、同じ事が何度も繰り替し行われると推察します」


この会議に出席している各部署の責任者達は、カルの顔を見据える。


そしていくばくかの時が流れカルが重い口を開いた。


「城塞都市ラプラスへマーモ教の神官及び騎士並びに兵士の入領を禁止します。それと教団の信徒と思われる者については、取り調べを行ってください。入領する者には、複数の監視を必ず付けてください」


会議に参加している者達は、それで話が終わるとは思ってはいない。彼らは、カルの次の言葉を待っていた。


「僕が聖ラムズ王国に行って話を聞いてきます。返答によっては、戦いになるかもしれませんが他国の領民を殺そうとし、泥棒まで働く国と教団を許す訳にはいきません」


「よろしいのですか。大国との戦争になりますが」


「あえていいます。僕にはその”力”があります。妖精の国にも協力をお願いしようと思います。それは、僕でなければ出来ない事です」


最後にカルはこう締めくくった。


「本来なら魔王国の王である魔王様にお伺いを立てるのが筋だけど、そんな事など知った事か。城塞都市ラプラスとその領主の力を見せてやる」


そう宣言したカルの表情は、今までに見た事もない形相をしていた。




領主の館の裏手にたたずむ浮遊城。その階段を上り制御室へと向かうカル。


扉を開けると制御室のあちこちに設置してある硝子板には、飛竜の姿が映し出されいた。


さらには、お猫サマの教会に押し入ったマーモ教の者達の顔も映し出されている。


それらをじっと見つめるカル。


そして制御室の窓から外を眺める精霊神お猫サマの姿がそこにあった。




水や食料の搬入も終わり飛び立つのを待つだけとなった浮遊城。


メリル、ライラ、精霊エレノアが浮遊城に乗り込む。


レリアとクレアは、龍人族の姿に戻り浮遊城の中を楽しそうに走り周っている。


カルのすぐ横には、ゴーレムのカルロスが立つ。


そして制御室の窓から相変わらず外を見つめる精霊神お猫サマ。


浮遊城は、ゆっくりと地面から離れると徐々に空へと舞いがっていく。


”探査機でずっと追ってる。飛竜のあとを追うよ”。


浮遊城の制御室に籠っていた妖精が差し出したメモ書きにはそう書かれていた。




陽が落ちかけた頃、妖精がカルにメモ書きを見せる。


”飛竜がブラグスタンという街の郊外に降りた。そこに向かう”。


浮遊城の制御室にぶら下がるいくつもの硝子板には、ブラグスタンという街の地図と浮遊城の現在位置が映し出されている。


さらに飛竜が降り立った場所の建物の配置や人の配置すらも把握できた。


「凄い。こんな事まで分かるんだ」


カルと妖精が制御室の硝子板に映し出される地図を見ながらこれからの算段を相談していると、先程からずっと制御室の窓から外を眺める精霊神お猫サマの姿が目に入った。


「お猫サマ。エトーレさんに酷い事をしたマーモ教の連中に思い知らせてやりましょう」


「・・・・・・」


カルの言葉に返答しないお猫サマ。


お猫サマの横に立ちその顔を覗き込むカル。


きっと教会のシスターであるエトーレを傷つけた者への怒りで我を忘れていると思ったのだが・・・。


”グーーーーー”。


「あれ、お猫サマ寝てる・・・」


お猫サマは、立ったまま寝息を立てていた。


その姿を見て思わずガックリと項垂れるカル。


「はっ。おっ、お猫サマは、寝てないにゃ。少し考え事をしていたにゃ。そっ、そうにゃ。精霊界の精霊達ともめてるにゃ。心労が溜まってるにゃ」


お猫サマは、精霊界でカルを精霊界の辺境へと放り出した者達について、精霊女王と毎日の様に話し合いを行っていた。


精霊女王の話では、カル達を精霊界の辺境へ放り出した者達の所在が不明であり、捜索に手間取っているという。


結局、精霊神であるお猫サマが出向いたところで精霊界の状況は、何も変わる事はなかった。




ブラグスタンという街の郊外にある教会の上空へとやって来た浮遊城。


辺りは、既に陽も落ち夕闇の中である。真下に見える教会とその周辺に立ち並ぶ建物の窓からは、魔法ランタンの灯りが漏れている。


そして建物の周囲には、腰に剣をぶら下げた男達が警戒する様に立っていた。


制御室に接しされている硝子板には、そんな光景が映し出されていた。


それを見ながらカルは、浮遊城を制御する魔石に魔力を送るライラの耳元で静かにささやく。


「浮遊城を教会の上に落として」


「えっ、いいんですか」


「これは、彼らが犯した罪に対する僕からの罰だから」


「わかりました」


するとなぜか笑顔になるライラ。


「では皆さん。少し揺れるかもしれません。何かにつかまってください」


そう言った瞬間。足元が宙に浮く感覚を覚えた。そして強い衝撃が浮遊城を襲い立っていられない程の衝撃が走る。


”ドーン”。


そんな衝撃音と共に、土煙が沸き上がると浮遊城の下敷きとなった教会の建物が音を立てて崩れていく。


教会の警備を行っていた者達が突然の衝撃により地面に倒れ込み立つ事すらできない。


やがて土煙がおさまり視界を遮るものがなくなると彼らの目の前には、教会を圧し潰す巨大な岩がそそり立っていた。


「なっ、何だこれは」


魔法ランタンを掲げ、その灯りに照らされる巨大な岩。


「誰でもいい。この状況を説明せよ!」


甲冑を身に纏った男が教会を警備していた者達に声を張り上げる。


「それはですね。こういう事ですよ」


甲冑を身に纏った男の背後でそんな声がする。男がその声に反応して剣を鞘から抜こうとする。


だがそこにあったはずの剣がどこにもなく思わず腰の辺りを弄る。


さらに男は、自身が先ほどまで纏っていたはずの甲冑が無くなっている事に気が付く。


その時、目の前に赤くて長い何かが現れると男の体に纏わりついた。


「なっ、何だこれは!」


纏わりついた赤い何かに体の自由を奪われたまま、少年が構える大盾へ徐々に引き寄せられる男。


そして大盾の表面には、大きな口がぱっくりと開き男を飲み込もうとする。


「ひっ。やっ、やめて・・・」


”ごっくん”。


戦う間もなくあっけなく盾に飲み込まれた男。その光景を見ていた男達が構えていた剣は、ブルブルと震えている。


大きな口を開けた大盾を構える少年が教会を警備していた男達に目線を送る。その少年の目は、どろりとした油の様にまとわりつき実に気味の悪いものであった。


いきなり教会を浮遊城で圧し潰したカル。


面倒な駆け引きなど不要と言わんばかりです。


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