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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
182/218

182話.魔石に群がる者達(1)

妖精達が言っていた”新しい仲間”が気になったカル。


そして魔石をある場所に置く事にします。


突然と砂漠に湧いたスノーワームとの戦いも終わり日々の生活に戻ったカル。


そして吹雪の被害が出た家屋の修繕費用を城塞都市ラプラスで持つと宣言。


理由は、簡単で2回目の大雪を降らせたのがカル自身であり、その罪滅ぼしという意味合いもあった。


さらに城塞都市ラプラスの周辺に広がる村々でも家屋への被害が少なからず出たため、その修繕も城塞都市ラプラスで持つ事にした。


領主の館からは、関連部署の担当官が赴き街や村の修繕箇所の把握と、見積もりを出す作業が行われている。


カルは、特に被害の大きかった場所へ視察に出向くと担当官から説明を受けていた。


そんな日々を数日こなした頃、街のあちこちで家屋の修理が始まる。


すると大工や土木工事の人手が不足したため、領主依頼という形で大工補助や土木工事の仕事を冒険者ギルドに大量に発注した。


城塞都市ラプラスは、思った程の税収がないため殆ど資金は、カルの懐から出る事になる。


その資金はというと、カルの鞄の中に眠るレリアとクレアが魔石とミスリルに変化させたスノーワームの骸である。


これらを売って城塞都市の運営資金に充てているので、今のところ資金不足になる事はない。




とある日。


城塞都市の視察箇所を周り午後は、いつもの事務作業だけとなったカル。


「これからご飯を食べてから領主の館に戻ります。他の方達は、領主の館に戻ってください」


同行した担当官や警備の兵士にそう告げて、皆で食堂へと向かう。


途中、近道をしようと路地裏に入ったカル達。


先頭をカルが歩き、その後ろにゴーレムのカルロスⅡ世、メリル、ライラ、レリア、クレアと続く。


路地を少し歩くと物陰にたむろする冒険者風の男達が3人。少し先の物陰にもにもさらに3人。


カルは、この城塞都市ラプラスで何度も賊に襲われているので、雰囲気から襲われそうな気配を察していた。


「なんだか危ない感じの人達がいますね」


「襲う気満々という感じです」


「僕達の事を知らないのかな」


「私達を知らないという事は、恐らくラプラスの住人ではないという事です」


「そうだよね。だったら盛大にやっちゃいましょう」


カル、メリル、ライラが小声で能天気な会話をしながら男達の脇を通っていく。


すると想像した通りに前方の物陰にたむろする冒険者風の男達3人が路地裏の狭い道に立ち塞がる。


それに呼応する様に後方の物陰にたむろする冒険者風の男達3人も道に立ち塞がった。


カルは、ここで男達が口上を述べると期待していた。


強盗や山賊が述べるいつものやつだ。


だが今回は、状況が少し違っていた。


「おっと動くなよ。ナイフが喉元にあるからな。下手に動くと喉が切れちまう」


振り向くと最後尾にいたレリアとクレアの喉元に男達が持っていたナイフを突き付けている。


「そう来たか・・・」


カルやメリルやライラは、この城塞都市ラプラスでも他の街や村でも、この手の荒事に何度も遭遇しているため、警戒心を緩める様な事はない。


だがレリアとクレアは、地龍の姿で街をうろついた事はいくらでもあるが、龍人族の姿で城塞都市ラプラスを歩いた事は、今回が初めてであった。


そのため警戒心という物を全く持っていないレリアとクレア。


「おっと、剣や魔法杖は捨てな。このナイフは毒付きでな、少しでも傷をつけると致死性の毒であの世行きだ」


するとレリアとクレアは、喉元に突き付けられたナイフを自らの手で掴んで見せた。


「「毒のナイフだ。少しピリピリする」」


レリアとクレアの喉元にナイフを突きつけた男達がはぎょっとした。人質が毒付きのナイフを自らの手で握ったのだ。


これでは、人質が死んでしまう。焦った男達は、なぜかレリアとクレアに注意を促した。


「おい、ナイフに触るな。そのナイフに触ると毒が回って死んでしまうぞ」


だがレリアとクレアは、きょとんとした顔をしていて体に毒が回った様な素振りを見せない。


「レリア、クレア。大丈夫?」


カルの質問に対してレリアとクレアが答える。


「「毒?龍人族に毒なんて聞かない」」


ふたりが同時にそう言った瞬間、今迄に見た事のない光景が目の前で繰り広げられた。


レリアとクレアの姿が小さくなると2体の小さな地龍へと変わる。そして2体の地龍は、カルの元へと走り寄るとカルの肩へと上って来た。


ふたりが立っていた場所には、脱ぎ捨てられた服が落ちている。


「えっ、えっ、なっ、何が起きた」


目の前で起こった事を理解できずにいる男達。


カルは、地龍の姿に戻り両肩の上でカルの頬にすり寄る2体の小さな地龍の頭を撫でる。


「へえ、レリアとクレアって地龍の姿に戻れるんだね」


カル達を狭い路地の両側から挟み込む形になった男達は、いまいち状況を飲み込めないまま鞘から剣を抜くと例の如く強盗の得意とする口上を述べ始める。


「おまえら、金をよこしな。そうすれば命だけは助けて・・・」


”ガン”。


男達は、後ろから何者かに頭を強打されると狭い路地に倒れていく。


「ご苦労様です」


「領主様。こういった路地裏にが物取りや強盗が出ると何度も言ったではないですか。もう少し気を付けてください」


路地に倒れた男達の後ろには、城塞都市ラプラスの警備隊の兵士がうじゃうじゃと湧いていた。


「おい、こいつらを尋問する。とっとと運べ!」


「「「はっ」」」


隊長の指示のもと、兵士達が気を失った冒険者風の男達を担架に乗せて運んで行く。


「以前からこの辺りで強盗に襲われた者がいたので網を張っていました」


「ご苦労様です。皆さんのおかげて城塞都市ラプラスの治安が守られています。これからも頑張ってください」


カルの言葉に警備隊の兵士が一斉に敬礼をすると、そそくさと撤収していく。


「以外とあっけない幕切れでしたね」


「でも、どんなに警備を厳重にしてもあの手の輩が減る事ってないからね」


「そうですね。警備隊の人達にがんばってもらうしかないです」


カルは、路地裏に脱ぎ捨てられたレリアとクレアの服を回収すると何事も無かったかの様に、皆で行きつけの食堂へと向かった。


ちなみに地龍の姿に戻ったレリアとクレアは、カル達が食事をしている脇で、ミスリルと魔石を美味しそうに頬張っていた。




とある日。


領主の館の自身の執務室で書類と格闘するカル。


ふと浮遊城の制御室で妖精に言われたある言葉を思い出していた。


”新しい仲間”。


それを思い出したカルは、秘書官アリッサの監視も目をくぐり抜けると領主の館の職員用食堂の片隅に置いてある小さな扉をくぐり、妖精の国へと向かった。


妖精の国に足を踏み入れたカルは、妖精達にその事を聞いてみた。


すると畑に行けば分かると言われそこへ足を運ぶ。


城壁の中の林に囲まれた小道を歩きその先に広がる畑へとやって来たカル。


「あれ。ここってマンドラゴラの畑だよね。でも以前よりもかなり広くなっている様な・・・」


するとカルの足をペシペシと蹴る者達がいる。


ふと足元を見てみると、本来なら畑の土の中に植えられているはずのマンドラゴラが畑の土の上を歩ていて、カルの足元には小さなマンドラゴラが集まっていた。


「えっ、なんでマンドラゴラが歩いているの」


すると同行した妖精がカルにメモ書きを見せる。


”僕達が品種改良をした。彼らの叫び声でワームを簡単に倒せる”。


「新しい仲間ってマンドラゴラなんだ」


畑を見渡すカル。


すると畑に植えてあるマンドラゴラと畑の土の上を自由に歩き周るマンドラゴラがいる。


「でも植えてあるマンドラゴラと自由に歩き回るマンドラゴラの違いは?」


”畑に植えてあるマンドラゴラは、品種改良していないもので、自由に歩いているマンドラゴラは、品種改良したものだよ”。


妖精の国の畑にマンドラゴラを植えたのはカルであった。それを短時間のうちに品種改良した妖精達に、ただただ脱帽するカルであった。




城塞都市ラプラスには、もともと教会というものが存在しなかった。


国の長が魔王ということもあり、人族や他種族の神を信仰するという習慣が無かったのだ。


城塞都市ラプラスの領主となったカルは、意図せずに城塞都市のすぐ隣りに精霊の森を作る事になり、諸々の事情から精霊神お猫サマと出会う事になった。


その後、精霊神お猫サマを慕う獣人達により城塞都市に小さな教会が建てられた。


それとは別にカルが持つ短剣に宿る神”剣爺”は、石や金属を統べる神である。


だが剣爺は、神としての力を殆ど持ち合わせてはいない。


カルは、ドワーフのバレルに武具の生産依頼をする事で知り合う。


それにより石や金属を統べる神の存在を知ったドワーフのバレルは、カルと折半で城塞都市ラプラスの郊外に教会を建てた。


このふたつの教会には、ある共通点がある。


それは、信仰信を得るために必要な教えや神器が存在しないのだ。


人という存在は、目に見えない神という存在を信仰する時に、目に見える何かを求める事で信仰がより深まる。


それは、神の姿を模した像であったり、神の言葉を言葉に書き記した書であったり、神が残した聖遺物であったり。


城塞都市ラプラスに存在するふたつの教会には、そういったものが無かった。


いや、あるにはある。


精霊神お猫サマの教会には、お猫サマの姿を模した木像。剣爺の教会には、剣爺の姿を模した木像があった。


だが、所詮は人が作った木像にすぎない。


それを敬ったところで奇跡が起こるはずもいない。


そんなこんなで、信者が集まらないふたつの教会に人々が集まる様な仕掛けを作りたいとカルは、以前から考えていた。


そんな時に手に入ったものがあった。


カルは、それをふたつの教会に置く事にした。




路地裏の小さな店の扉を開けると、雑多な魔法具が置かれている。


その店の小さなカウンタに座りなにゃら作業をしている店主に声をかける。


「注文した物はできていますか」


「おうカル。出来てるぞ」


カルが注文したのは、魔石を入れておく硝子ケースだ。


「この硝子ケースには、強化魔法をかけてあるからな。剣で叩き割ろうとしても割れたりしないぞ」


店主は、カウンターの奥に置いてある剣を鞘から抜くと、カウンターの上に置いた硝子ケースに向かって剣を振りおろす。


”カン”。


乾いた音が店の中に響き渡るも、硝子ケースにはひとつのひびも入っていない。


「これなら盗まれる事もないだろう」


カルが硝子ケースの強度に関心しながら覗き込む。


「しかし聖属性の魔石なんてどうやって見つけたんだ」


「ははは。実は、見つけたんではなくて出来てしまったと言った方が正しいです」


「聖属性の魔石が出来てしまったか、なんだかお前さんらしいな」


硝子ケースを覗き込むカルを見てにんまりする店主。


「そう言えば、ご結婚されたとか」


「ははは。俺みたいなうだつの上がらない男が結婚出来るなんて夢にも思わなかったよ」


「相手の方は、どんな方なんですか」


「実はな、カルが大量発注した魔石筒に魔法を込める作業を頼んだ冒険者なんだよ」


「そうなんですか」


「それでな、一緒に魔石塔を作っているうちに・・・そのなんだ」


店主は、思わず頬を赤らめる。


「へえ、出会いってどこにあるか分からないですね」


「今日は、魔石塔の納品に行ってるよ」


「お店の方は順調ですか」


「ああ、忙しいくらいさ。こんな俺でも従業員を3人も雇う事業主になっちまったよ。カルには、感謝以外の言葉がない」


「いえいえ、僕もこの店と魔石筒に出会えてよかったです」


カルは、注文した硝子ケースを持って見えを後にする。


カルが魔石筒の製造を依頼している路地裏の小さな魔法具店の店主のゼクトは、今日も忙しいと言って笑いながらカルを送り出した。




カルは、その足で街中にある精霊神お猫サマの教会へと向かった。


協会の前には、副業?いや半ば本業とも言うべき極楽芋のパイを売る売店があり、周辺の住民や近くの飲食店から買いに来る客で賑わっている。


協会の隣りには、以前は馬小屋があったのだが、極楽芋のパイの売れ行きが好調なため、馬小屋をその隣りへと移転し、今では極楽芋のパイを作る厨房となっていた。



カルは、精霊神お猫サマの教会でシスターをしている獣人族のエトーレに、持ってきたあるものを見せた。


「これは何でしょうか?」


「聖属性の魔石です」


シスターのエトーレは、聖属性の魔石と言われてもそれが何であるかあるか理解できず、頭の上に疑問符が浮かんでいる様である。


「聖属性の魔石というのは、凄く珍しいものだそうです。まあ、僕もよくは知らないんですけどね」


カルは、持参した硝子ケースの中に台座を置き、その上に魔石を置く。


「教会であれ何であれそれを維持運営するためにはお金は必要だと思います。教会であれば、お金を集めるために何か人々の信仰信をくすぐる象徴的な物が必要だと考えました」


「象徴ですか・・・」


「神官でもない僕がこんな事を言うのも変ですが人は、食物を得なければ生きていけません。教会の維持運営費を全てを寄付で賄うなんてできませんよね」


この教会の運営費用は、教会の前で販売している極楽芋のパイの販売や馬車による物資の運搬で上げた利益で賄っていた。


だが、それだけでは足りず数少ない信徒からの寄付や施しにより運営されている。


寄付の一部は、カルの懐からも出ていたが、信徒の数は思ったほど増えず教会の運営という面では苦労が絶えない様である。


「この聖属性の魔石を置いたからと言って教会の信徒が増えるとも思えませんが、何も無いよりも有った方がよいと考えています」


「ひとつだけよろしいでしょうか。この教会にお金の余裕はありません。なのでカル様の魔石を買う事はできません」


「それは承知しています。とりあえずですがこの魔石は、私がこの教会に貸した事にします。後々何かあると面倒なので魔石の借用については書面で取り交わす事にしたいと思います」


「はあ・・・」


「魔石の借用に関してのお金の授受は発生しません。城塞都市ラプラスの領主である僕が、教会にお貸して置いていただける事を了承していただければと。あと、この件に関しては、精霊神お猫サマにも了承済みです」


「そうですか。分かりました」


シスターのエトーレは、カルが差し出した借用書にサインをする。それを見届けたカルは、教会の祭壇の端に小さな硝子ケースを置き、ケースの中に魔石を置いた。


シスターのエトーレは、硝子ケースの中に置かれた聖属性の魔石を不思議そうに見つめる。


「たまに顔を出しますので、何かあればその時に言ってください」


カルは、少しばかりの金貨の入った小さな袋を寄付だと言ってシスターのエトーレに手渡すと教会を後にした。




その後カル達は、いつもの荷馬車に乗り城塞都市ラプラスの郊外にある酒蔵へと向かう。


この酒蔵では、カルがドワーフのバレルに依頼してラピリア酒が作られている。


その酒蔵の隣りにカルが持つ短剣に宿る神である剣爺を神とする教会が建っている。


この教会に訪れる者の殆どは、近隣に住む村の住民であった。そこに聖属性の魔石を置くためにやって来たカル。


この魔石により当然の如く問題が発生するのだが、それは次回のお楽しみという事で。


さてふたつの教会に置かれた聖属性の魔石。


当然の様に泥棒やら他国の教会が狙って来ます。お約束ですね。


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